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境界を歩く者たち  作者: 星渚歌唄
第4章 重ねた約束

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背中に重ねるもの

湯気の立ち込める浴室。屋上での戦闘の疲れはまだ体に残っているが、傷はもう大きな痛みはなく、二人はゆっくりと湯船に浸かっていた。

湯気の向こう、二人は肩まで湯に浸かり、戦いの疲れを癒していた。

湯船の中、二人の間にしばしの沈黙が漂う。

銀と晋祐は肩まで湯に浸かり、少し顔を赤らめながらも、先程の戦闘のことを思い返していた。

晋祐がふと口を開く。


「......お前さ、あんなに大口叩いてたのに、矢食らっちまうなんて大したことなかったな」


銀はむっとして湯を軽く蹴る。


「なんだよ、まだ俺は生きてるだろ!...お前こそ…心配させんなよ」


晋祐はにやりと笑い、肩越しに銀を見つめる。


「させてねぇよ。…まぁでも次はもう少し大人しくしてろよ、銀」


銀は悔しそうに湯面を叩く。


「......くそっ、あいつらが来なけりゃもっと好きに斬れたのに」


軽い冗談と小さな苛立ちに、二人の間の緊張は少し和らぐ。

しかし湯の温もりと静かな夜の空気の中で、銀の表情は次第に遠くを見るようになる。

湯気の立ち込める浴室で、二人は肩まで湯に浸かり、静かな時間が流れていた。

晋祐はふと横の銀を見つめ、声を低くして尋ねる。


「.......聞いていいのか?」


銀は肩越しにちらりと晋祐を見て、納得したように頷く。


「.....聞きたきゃ聞けよ。俺も聞く」


その声は少し軽く、でもどこか寂しげで、適当にあしらうように聞こえた。

晋祐は静かに息をつき、銀の後ろに体を沈めた。晋祐が少し口元を緩め、銀に尋ねる。


「......なあ、銀。離れてた間、何してたんだ?」


銀は肩越しにちらりと晋祐を見て、少し照れくさそうに笑う。


「......そりゃあ、生きるために刀振って、飯食って、寝て.......って感じだ。お前もだろ?」


晋祐は苦笑いしながらうなずく。


「まぁな。俺もほぼ同じだ。夜叉隊として、表でも裏でも色々やってた」


銀は湯面を小さく叩きながら、ふと思い出すように呟く。


「......でも、俺は朱雀として過ごしてた時期もあった。強くならなきゃ、って、ただそれだけで.......」


晋祐は黙って頷き、少し間を置いて答える。


「俺は、母親が操られた。その母親に頼まれて世界を壊すために動いてた。でも.......その中でも、お前を探してたんだ。ずっと」


銀は目を伏せ、湯面に映る自分の銀髪を見つめる。


「......そうか。俺も、あの頃は誰にも頼れねぇと思ってたけど、心のどこかで.......お前に会える日を待ってたんだな」


晋祐は軽く肩を叩き、微笑む。


「......お前、相変わらずしょーもねぇことで照れるよな」


銀は悔しそうに湯を跳ねさせる。


「うるせえ.....!

でも......俺たちは巡り会うべき…いやそういう運命だったんだな」


二人は湯の温もりに包まれながら、互いの離れていた時間を語り合い、戦いの疲れを癒しつつ、絆を再確認していた。

___________________________

湯に浸かったまま、晋祐はふと後ろを向き、銀の背中に体重をかけた。


「.....重えよ」


銀は肩を少し揺らし、湯面を見つめながら答える。


「うるせえ、重くて当たり前だ。.....爺さんが言ってたろ。大事なモンは重え......ってよ」


その言葉に、銀の口元がふっと緩む。胸の奥の重みを少しだけ下ろす。


「......重すぎんだよ」


小さく呟いたその声には、苦さと温かさが混ざり合っていた。晋祐は少しだけ笑みを浮かべ、背中越しに銀を見つめ、更に背中に体重をかけ、目を閉じてフッと笑う。


「......重いくらいが丁度いいんだよ」


湯の温もりに包まれ、互いの距離と存在の重みを感じながら、二人の間には戦闘の疲れ以上の安心感が広がっていた。

___________________________

湯の温もりと静かな夜の空気に包まれ、過去も、戦いも、そして互いの絆も、ここで少しずつ静まっていく。

二人の間には、言葉にしなくても伝わる約束一一ずっと、互いを守るという誓いーーがあった。

湯面に映る銀髪と、月光の反射。

小さな笑みが、戦いの夜に降り注ぐ光となった。

数日後、ある高等部の教室。

制服に袖を通した銀は、窓際に座る普祐の隣に腰を下ろす。


「.....晋。お前、まだ字汚いな」


「うるせえ。お前、なんでそんな堂々としてんだよ転校生のくせに」


「"転校生”って言うな。俺はお前の隣が指定席なんですー」


陽が差し込む窓から、銀色の髪がふわりと風に舞う。

ふと真剣な場面になると、銀はぽつりと呟く。


「......晋祐。何があっても、俺はお前の隣にいる。

俺が“俺”に戻れたのは、お前がいたからだ」


晋祐は銀のいきなりの言葉に目を開いたあと、フッと鼻で笑う。


「俺もだよ」

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