背中に重ねるもの
湯気の立ち込める浴室。屋上での戦闘の疲れはまだ体に残っているが、傷はもう大きな痛みはなく、二人はゆっくりと湯船に浸かっていた。
湯気の向こう、二人は肩まで湯に浸かり、戦いの疲れを癒していた。
湯船の中、二人の間にしばしの沈黙が漂う。
銀と晋祐は肩まで湯に浸かり、少し顔を赤らめながらも、先程の戦闘のことを思い返していた。
晋祐がふと口を開く。
「......お前さ、あんなに大口叩いてたのに、矢食らっちまうなんて大したことなかったな」
銀はむっとして湯を軽く蹴る。
「なんだよ、まだ俺は生きてるだろ!...お前こそ…心配させんなよ」
晋祐はにやりと笑い、肩越しに銀を見つめる。
「させてねぇよ。…まぁでも次はもう少し大人しくしてろよ、銀」
銀は悔しそうに湯面を叩く。
「......くそっ、あいつらが来なけりゃもっと好きに斬れたのに」
軽い冗談と小さな苛立ちに、二人の間の緊張は少し和らぐ。
しかし湯の温もりと静かな夜の空気の中で、銀の表情は次第に遠くを見るようになる。
湯気の立ち込める浴室で、二人は肩まで湯に浸かり、静かな時間が流れていた。
晋祐はふと横の銀を見つめ、声を低くして尋ねる。
「.......聞いていいのか?」
銀は肩越しにちらりと晋祐を見て、納得したように頷く。
「.....聞きたきゃ聞けよ。俺も聞く」
その声は少し軽く、でもどこか寂しげで、適当にあしらうように聞こえた。
晋祐は静かに息をつき、銀の後ろに体を沈めた。晋祐が少し口元を緩め、銀に尋ねる。
「......なあ、銀。離れてた間、何してたんだ?」
銀は肩越しにちらりと晋祐を見て、少し照れくさそうに笑う。
「......そりゃあ、生きるために刀振って、飯食って、寝て.......って感じだ。お前もだろ?」
晋祐は苦笑いしながらうなずく。
「まぁな。俺もほぼ同じだ。夜叉隊として、表でも裏でも色々やってた」
銀は湯面を小さく叩きながら、ふと思い出すように呟く。
「......でも、俺は朱雀として過ごしてた時期もあった。強くならなきゃ、って、ただそれだけで.......」
晋祐は黙って頷き、少し間を置いて答える。
「俺は、母親が操られた。その母親に頼まれて世界を壊すために動いてた。でも.......その中でも、お前を探してたんだ。ずっと」
銀は目を伏せ、湯面に映る自分の銀髪を見つめる。
「......そうか。俺も、あの頃は誰にも頼れねぇと思ってたけど、心のどこかで.......お前に会える日を待ってたんだな」
晋祐は軽く肩を叩き、微笑む。
「......お前、相変わらずしょーもねぇことで照れるよな」
銀は悔しそうに湯を跳ねさせる。
「うるせえ.....!
でも......俺たちは巡り会うべき…いやそういう運命だったんだな」
二人は湯の温もりに包まれながら、互いの離れていた時間を語り合い、戦いの疲れを癒しつつ、絆を再確認していた。
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湯に浸かったまま、晋祐はふと後ろを向き、銀の背中に体重をかけた。
「.....重えよ」
銀は肩を少し揺らし、湯面を見つめながら答える。
「うるせえ、重くて当たり前だ。.....爺さんが言ってたろ。大事なモンは重え......ってよ」
その言葉に、銀の口元がふっと緩む。胸の奥の重みを少しだけ下ろす。
「......重すぎんだよ」
小さく呟いたその声には、苦さと温かさが混ざり合っていた。晋祐は少しだけ笑みを浮かべ、背中越しに銀を見つめ、更に背中に体重をかけ、目を閉じてフッと笑う。
「......重いくらいが丁度いいんだよ」
湯の温もりに包まれ、互いの距離と存在の重みを感じながら、二人の間には戦闘の疲れ以上の安心感が広がっていた。
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湯の温もりと静かな夜の空気に包まれ、過去も、戦いも、そして互いの絆も、ここで少しずつ静まっていく。
二人の間には、言葉にしなくても伝わる約束一一ずっと、互いを守るという誓いーーがあった。
湯面に映る銀髪と、月光の反射。
小さな笑みが、戦いの夜に降り注ぐ光となった。
数日後、ある高等部の教室。
制服に袖を通した銀は、窓際に座る普祐の隣に腰を下ろす。
「.....晋。お前、まだ字汚いな」
「うるせえ。お前、なんでそんな堂々としてんだよ転校生のくせに」
「"転校生”って言うな。俺はお前の隣が指定席なんですー」
陽が差し込む窓から、銀色の髪がふわりと風に舞う。
ふと真剣な場面になると、銀はぽつりと呟く。
「......晋祐。何があっても、俺はお前の隣にいる。
俺が“俺”に戻れたのは、お前がいたからだ」
晋祐は銀のいきなりの言葉に目を開いたあと、フッと鼻で笑う。
「俺もだよ」




