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境界を歩く者たち  作者: 星渚歌唄
第4章 重ねた約束

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古縁

仮面が砕け、朱雀の片目と深紅の髪が月光に鮮明に映る。

晋祐は息を整え、刀を握り直した。

「何故その姿を選んだ......銀」


低く、しかし力強く紡ぐ声に、長い夜の焦燥と、探し求め続けた想いが込められていた。

しかし銀は答えず、静かに足を踏み出す。

その動きに合わせ、刀が月光を切り裂く一閃。


「ーーくつ!」


晋祐はぎりぎりで交わし、瓦礫を蹴散らしながら反撃。

刀と刀が火花を散らし、互いの力をぶつけ合う。

銀は錫杖を振り、横薙ぎの連撃。晋祐は身を翻し、背後の壁に飛びついて受け流す。

続けざまに斬り込む銀の連撃を、晋祐は刀を縦横に振り回して受け止める。

刃が交わるたび、金属の衝撃音が屋上に鳴り響き、瓦礫が飛び散る。


「お前.....変わりすぎた......!」


叫ぶ晋祐に、銀は低く吐き捨てるように答える。


「.....俺は.....俺の道を進むだけだ」


刀が斜めに振られ、錫杖が弧を描く。

晋祐は刀を合わせて受け止め、跳ね返す。

続けざまに踏み込んで斬りかかるが、銀は身を低く屈め、跳躍して背後に回り込む。

瓦礫の上を飛び跳ねる二人。

刃と刃、錫杖と刀、互いの影が月光の中で入り乱れる。

風が吹き抜け、火花と瓦礫が渦を巻く。

銀が手び刀を振るう瞬間、晋祐は体を翻し、ぎりぎりで交わす。


「俺は......お前を......止める!」


刀と刀がぶつかり合い、衝撃波が屋上を揺らす。

そして二人は互いの呼吸を読み合い、攻防の応酬を止めることなく、夜の廃墟に激烈な戦いの軌跡を刻んでいった。

___________________________

刀と刀が激しくぶつかり合い、瓦礫が屋上を飛び交う。

朱雀の刃が跳ね返され、わずかな間、二人の間に静寂が訪れた。

その瞬間、晋祐の意識は過去へと引きずられていくーー

月明かりに照らされた貧しい家の中、幼い晋祐は静かに床に座っていた。

母親はもうこの世におらず、父親は外で女遊びをしている様子ばかり。

表面的には自分を大事にしているようでも、心の奥まで信じられない父の姿に、幼い晋祐は人間を疑うしかなかった。

ある日、父親の本当の姿を目の当たりにし、「もうあの頃の父親はいない」と悟った晋祐は、父の墓を作り村を出る決意をする。

その道すがら、銀髪の子ども一一後の銀と出会った。二人は同い年で、すぐに打ち解けた。


「お前名前ねえのかよ。んじゃ今日からてめえは銀だ」


「はあ?なんだよそんな変な名前」


「…てめぇと出会った時の月が......銀色だったからだよ。悪いか」


「...とか言って?本当は俺の髪が銀色だから適当につけたんだろ?」


「殺すぞ、てめぇ!!」


その後、銀が唯一借用している人の元で共に過ごす日々。

しかし、その人も亡くなり、銀と二人で生活することになる。

だがある日、何者かに銀をさらわれ、晋祐自身も首に深い傷を負って重症を負う。

奇跡的に村の人々に助けられたものの、胸に残る痛みと喪失感は消えることがなかった。

___________________________

瓦礫と月光の中、晋祐の意識は過去へと引きずられていた。

銀との日々、名付けたときの笑い声、共に過ごした日常一一

そして、銀を奪われ、首に深い傷を負ったあの日の絶望。


「......俺は、あの時.....」


心の奥でくすぶる感情が、刀を握る手にカを注ぐ。

過去の痛みが、今、目の前の銀一一朱雀へとつながる。

はっと現実に引き戻される。

朱雀の刃が再び振り下ろされる瞬間、晋祐は全身で反応した。


「......お前を、逃がすわけにはいかねぇ!」


刀がき、朱雀の一撃を受け止める。

火花が散り、瓦礫が飛び散る。

回想の中で感じた孤独、怒り、守れなかった後悔一一

それらすべてが、晋祐の戦意となり、刃となる。

朱雀もまた、虚ろな片目に冷たい光を宿し、反撃の姿勢を崩さない。

二人の力が手びぶつかり合う。

瓦礫を蹴散らし、跳ね上がる火花、荒れ狂う風ーー

屋上の空間全体が、二人の戦いの舞台となった。


「.....お前は......変わったかもしれない。でも、俺は......」


刀を握る手に全ての想いを込め、晋祐は再び斬りかかる。

銀一一朱雀もまた、その刃を避けず、正面から迎え撃つ。

過去と現在、怒りと孤独、友情と憎しみーーすべてが交錯する中で、二人の戦いは止まることなく続いていった。

刀と力が激しくぶつかり、火花と瓦礫の音が夜の廃墟に響く。

晋祐の心には、銀一一今目の前にいる朱雀一一への想いと、過去の痛みが渦巻いていた。

___________________________

その時、朱雀の片目と深紅の髪に映る月光を見つめながら、銀の意識は自然に昔の記憶へと引き寄せられた。


孤児だった銀一一まだ名も知らず、戦いに巻き込まれた子どもは、四天王にさせようとする父親から逃げる途中、避けられぬ戦闘に巻き込まれた。

母親に守られ、辛うじて生き延びたものの、自分の名前すら知らずに育った。

後に分かることだが、母親とも父親とも血は繋がっておらず、戦争の混乱で孤児となった銀。

その後、拾ってくれた後の母親によって、逃がされ、生き延びる術として錆びついたボロボロの刀を握り続けた。

幼いながら、剣術の腕は大人顔負けで、その力は周囲から恐れられ「バケモノ」と呼ばれた。

そんな時、ある大人が現れた。偶に心配そうに銀の顔を見て、


「家に来ないか?」


と声をかけるその人物に、最初は響戒して断り続けたものの、少しずつ心を許していく。

バケモノと恐れられた孤独な子どもが、少しずつ人間らしさを取り戻していく瞬間だった。

やがて、ひとりになった晋祐と出会う。


「お前名前ねぇのかよ。んじゃ今日からてめぇは銀だ」


その瞬間、銀は初めて名前を持ち、少しだけ幸せを感じた。

しかし、幸せは長く続かない。

自分をいつも心配してくれていたあの人物は、晋祐を家に住まわせたあと、病に倒れ、亡くなってしまう。

その数年後、父親に見つかり捕まる銀。

助けようとした晋祐が父とその部下に殺されそうになった瞬間、咄嗟に庇った銀は左目に深い傷を負った。

もう、左目に光は戻らない。

最後にその左目に映ったのは、必死に手を伸ばす晋祐の姿だった。

その後、銀は父親に四天王として育てられ、再び生き延びるためだけに刀を握り続ける人生へと戻る。

朱雀としての名にふさわしい深紅の髪色に染められ、やがて父親を己の手で倒し、朱雀の名を歴史に刻むこととなった。


銀の過去一一孤児としての孤独、母に守られた日々、晋祐との出会い、左目を失った瞬間一一

その記憶が、朱雀の心に鮮明に蘇る。

痛み、怒り、守れなかった後悔一すべてが、冷たく硬い決意へと変わっていった。

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