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境界を歩く者たち  作者: 星渚歌唄
第4章 重ねた約束

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朱雀

昼の校舎はいつも通りの喧騒に包まれていた。

だが、晋祐の耳に飛び込んできた言葉は、雑音の向こうで異様に響いた。


「ねえ、聞いた?朱雀がまた街の外で暴れてたって」


「え......あの四天王の朱雀?マジかよ......」


その瞬間、晋祐の胸の奥で何かが跳ねた。

朱雀......名前だけが広く知れ渡る、剣士の四天王。

その存在を追い求める自分の衝動が、止められない。

昼間の喧騒を抜け、晋祐は校門を飛び出した。

風を切る足音、握りしめた刀の感触。

夜の街を駆け抜け、彼は噂の現場へと向かう。

闇に沈む建物の影、ひび割れた路面、吹き荒れる風ーー

朱雀の気配を探すその目は、獲物を逃さぬ獣のように光っていた

昼の喧騒の中で耳にした噂が、晋祐の胸に火をつけた。

朱雀一一剣士の四天王の一角。

名前だけが伝わるその存在を、今、自分の目で確かめる時が来たのだ。

夜の街を駆け抜け、校門を抜け、山道を越える。

風が顔を切るように吹き付け、握りしめた刀の感触が手に伝わる。

胸の奥の焦燥と緊張が、足を止めることを許さなかった。

やがて視界が開け、廃墟と化した建物の屋上が現れる。

月明かりに照らされた瓦礫の上、誰かが立っているーー

朱雀の影。

高く掲げた剣先が、静かに夜空を切り裂いていた。

晋祐は息を整え、刀を構える。


「朱雀.....今夜こそ必ず見つけてやる」


その声は、闇に溶けることなく、はっきりと届いた。

___________________________

夜の闇に沈む廃墟の屋上。

瓦礫の影に、ひときわ異彩を放つ影が立っていた。

朱雀一ー

その名の通り、深紅の髪が夜風にたなびく。

虚ろな瞳が冷たく光り、口元には仮面がわずかに浮かんでいた。

腰には刀を携え、手には長い錫杖を握る。

その佇まいは、まるで夜そのものが人の形を取ったかのようだった。

晋祐の視線は一瞬で釘付けになる。


「......朱雀」


言葉は低く、しかし力強く闇に溶けずに響いた。

瓦礫の上に立つ朱雀の影は、冷たい月光を浴び、より一層異様な気配を放つ。

晋祐は息を整え、刀を握り直す。

その存在そのものが、挑発のように晋祐を迎えた。

深紅の髪が月光に揺れ、虚ろな片目だけが冷たく光る。

口元の仮面が微かに揺れ、腰の刀と手の錫杖が不穏な存在感を放っていた。

晋祐は息を整え、刀を握り直す。

その瞬間、朱雀が晋祐に気づいたーーかに見えた。

しかし、朱雀は種を返すように無視し、黙って歩を進める。


「......お前......その髪......」


思わず口をつく。

晋祐の胸に、昔の記憶と衝撃が同時に押し寄せる。

朱雀は振り返らず、ただ屋上の奥へと歩みを進める。

それだけで、二人の間には言葉よりも重い緊張が流れた。

晋祐は刀を軽く握り直し、静かな声で呼びかけた。


「......お前.......んなとこで何してんだ......何になる気だ」


まるで朱雀を知っているかのように語りかける晋佑。

朱雀は振り向きもしない。

月光に揺れる深紅の髪、片目だけが虚ろに光るその姿。

その声は低く、冷たく、夜風に溶けるようだった。


「......何にもなる気はねえよ。俺の中身は......

空っぽだ」


晋祐の胸に、言葉が重く刺さる。

かっての姿も、笑顔も、すべてが遠く霞んでいくようだった。

それでも刀を握る手を緩めることはできないーー

朱雀の背中に、ただ答えを求めるように視線を注ぎ続けた。

晋祐は息を荒げ、静かな怒りを込めて声を絞り出した。


「テメェ…ふざけんのもいい加減にしろ.......どれだけ探したと思ってんだ」


刀の柄を握り直し、朱雀の腕に手を伸ばすーー

だが、朱雀はすばやく身をかわす。

その動きはまるで影のようで、晋祐の目でも完全に捕らえることはできなかった。


「.....俺は......もうお前の知ってる俺じゃない。

壊すためだけに生まれた男に......用はねえ。

だろ?」


朱雀の声に冷たい刃のような響きが混じる。

そして次の瞬間、腰の刀を引き、晋祐に向かって振り下ろした。

晋祐はその刃の軌道を瞬時に読み、反応する。

月光に反射する刀身、瓦礫を蹴散らす衝撃一

廃墟の屋上に二人の緊張が、鋭く張り詰めた。

___________________________

朱雀の力が振り下ろされる瞬間、晋佑は一瞬の躊躇もなく刀を構えた。

金属がぶつかる衝撃が手元に伝わり、衝撃波が瓦礫を震わせる。


「俺が......どんだけてめぇを探したと思って

んだ!」


晋祐の叫びは、怒りと焦燥、そして抑えきれない想いの混ざった声だった。

だが朱雀は冷たく、声を張り上げることもなく答えた。


「......お前の言ってる男は俺じゃねえよ」


刀が再びぶつかり、火花が散る。

互いの息が荒く、視線は鋭く絡み合う。

言葉の奥にあるもの一一後悔、憎しみ、孤独。

すべてが、廃墟の屋上に静かに満ちていた。

晋祐の胸に、朱雀の言葉が突き刺さる。


「......それでも、俺はお前を見つけ出した。こんなとこで逃がさねえ」


互いに刀を構えたまま、二人の時間が一瞬止まったかのように感じられた。

廃墟の屋上、月光の下で交わされる刃と刃ーー

そして言葉のぶつかり合いが、戦いの序章を告げていた。

朱雀の刀が鋭く閃く。

晋祐は咄嗟に刀を構え、振り下ろされる刃を受け止めた。

金属同士の衝撃が屋上の瓦礫を震わせ、火花が飛び散る。


「くっ......!」


焦る晋祐の腕にも力が入り、朱雀の力強い一撃をかろうじて押し返す。

朱雀は仮面の奥の虚ろな瞳で冷たく晋祐を見据え、次の一関を放つ。

跳躍し、屋上の端から軽やかに回転しながら刀を振るうその動きは、まるで空間を切り裂くようだ。

晋祐も負けじと刀を振るう。


「お前を......逃がさねぇ!」


刃が交わるたびに金属音が響き、瓦礫が崩れ、二人の周囲の空気さえ震える。

朱雀の錫杖が次の攻撃を誘う。

跳び上がり、錫で横薙ぎを仕掛ける朱雀に、晋祐は反応速度の限界まで腕を振るい、ぎりぎりで交わす。

二人の呼吸が荒く、刀と刀のぶつかり合いが夜の静寂を引き裂く。

虚空を斬るたびに、過去の記憶や互いへの想いが、言葉なくしてぶつかり合う。


「まだ.......俺はお前を諦めねえ!」


「.....お前には、もう何も通じねぇよ」


刀と刀が再びぶつかり、互いの力がぶつかる。

屋上の瓦礫は飛び散り、風が二人の間を渦巻くーー

そして、二人の戦いは、ただの斬り合いではなく、心のぶつかり合いとなっていった。

朱雀のが鋭く振り下ろされる。

晋祐は刀を受け止め、反動を利用して横に跳ぶ。瓦礫が足元で崩れ、月光に光る刃が二人の影を歪める。


「ちっ......速い!」


朱雀の動きは滑らかで、空中で一回転して再び刀を振る。

同時に錫杖が横薙ぎを襲い、晋祐は素早く腰を落として交わす。

瓦礫が跳ね、砂埃が舞い上がる中で、二人の呼吸が荒く重なる。

普祐は前に踏み込み、縦斬りを放つ。

朱雀は瞬時に仰け反りながら仮面越しに低く視線を返すーー


「.....お前は相変わらずだな」


刀と刀が再び交わる。火花が飛び散り、衝撃で瓦礫が飛ぶ。

朱雀は杖を素早く前に振り、跳ね返した晋祐の刀をかわす。

その瞬間、晋祐は反動を利用して踏み込み、渾身の一撃を朱雀の仮面めがけて放った。

刀が仮面に直撃。パキリ、と嫌な音が響き、仮面が砕け飛ぶ。

朱雀は一瞬怯むが、虚ろな片目だけが光り、冷たい笑みを浮かべる。


「.....へぇ?......まだそんな力が残ってたか」


晋祐の胸に怒りと安堵が入り混じる。

仮面の破片が月光に散り、朱雀の片目と深紅の髪がより鮮明に浮かび上がった。

廃墟の屋上、瓦礫と火花に囲まれた二人。

刃と刃だけでなく、心の奥に潜む想いもまた、ぶつかり合い続けていた。

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