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境界を歩く者たち  作者: 星渚歌唄
第3章 暴走と赦しの狭間

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32/47

誓い

晋祐の刀が弾かれ、彼の体が地面に叩きつけられた。


「ぐっ......!」


口から血を吐きながらも、すぐに刀を握る晋祐。

その目の前に、寧音がゆっくりと歩み寄ってきた。

狂気に満ちた瞳、悪魔のような笑み。

振り下ろされるはずの刃は一一彼の首を狙っていた。

「…殺る気か?…」


目を細めて笑ったその瞬間。


バキィッ!!


寧音の体が、木の根や草花の蔦に絡みつかれるようにして止まった。

否。止めているのは他ならぬ寧音自身ーー自然の力を無意識に呼び出し、自分の四肢を拘束していたのだ。


「っ......あ......あああああ!!」


暴走した体はなおも刃を振り下ろそうと暴れる。

だが、寧音の心は必死に抗う。


「私は......もう.....誰も殺さないって….....!!」


涙が頬を伝い、声が震える。


「自分を......強く持つって......決めたの!!!」


刀を握る腕が震え、拘束する蔦が食い込み、血がにじむ。

暴走した魔力はなお荒れ狂い、周囲を吹き飛ばすがーー寧音の意志だけは折れなかった。

その姿に、晋祐は床に伏したまま思わず目を見開いた。


「.....暴走を......自分で.....止めてやがる......?

バケモノが......?…それとも......」


彼の声は恐怖か、敬意か、判別のつかない震えを帯びていた。

寧音の全身を縛りつけるように蔦がきしみ、なおも暴走を押さえ込んでいた。

震える腕、止まらない涙ーーその雫が一滴、晋祐の頬に落ちる。

冷たいはずの涙が、なぜか熱い。

晋祐は息を呑んだ。


「(......こんな少女が......ここまでして......自分を止めてる......?)」


脳裏に蘇るのは、これまで切り捨ててきた(モノ)

命令だからと疑わず従い、刃を振るってきた日々。

だが今一一目の前の少女は、自らを傷つけてでも「誰も殺さない」と叫んでいる。


「.............」


晋祐は静かに目を伏せ、長く息を吐いた。

手に握っていた刀が、力を失って地に落ちる。

___________________________

神代寧音との激しい戦いの末、風が止む。

息を整える寧音の前で、一条晋祐はまだ立っていた。

だが一一刀を、鞘に戻していた。

静かに、ゆっくりと。

晋祐は静かに目を伏せ、長く息を吐いた。

手に握っていた刀が、力を失って地に落ちる。

カラン......と乾いた音が森に響いた。


「......俺の負けだ」


そう呟いた声は、これまでの薄ら笑いも、皮肉もなく。

ただ静かで、重たく、諦めにも似た響きを帯びていた。

晋祐は俯いたまま、動かない。

その肩が、かすかに震えていた。


その言葉は、敗北ではなく一選んだ降参。

自らの意思で、刀を手放した瞬間だった。


晋祐の刀が地に落ちる音と同時に、寧音は無意識に拘束していた蔦を解いた。

その瞬間、糸が切れたように全身の力が抜け、瞳から光が消える。


「.....つ」


後ろへと倒れ込む寧音。

しかし地面に触れる直前、しっかりと支える腕があった。


「......お疲れ様。頑張ったな」


声の主は天袮だった。

彼は静かに彼女の肩を抱き、己の上着を脱いでその身体にそっとかける。

寧音はその存在に気づくことなく、穏やかな寝顔のまま気を失っている。

天袮は一度だけ俯き、唇を結んで小さく息を吐いた。

「......本当に、よく耐えたな」


夜の森に、彼の低い声が微かに溶けていった。

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