夜叉隊 結城凪
霧はますます濃くなり、六人の視界を容赦なく奪っていく。霧の揺らぎが仲間の輪郭を歪ませ、距離感を狂わせる。
「ちょ、ちょっと待って!」
彩姫の声は霧に吸い込まれ、思ったよりも遠くまで届かない。
天袮は前方に進もうとするが、霧に足元を隠され、彩姫やピーターとの距離が一瞬で開く。
「.....やつら、こちらの動きを読んでる.....のか?」
冷静に判断しつつも、無意識に視線が散る。
ピーターは彩姫の位置を確認しようと声をかけるが、霧のせいで声がかき消され、彩姫の姿が一瞬見えなくなる。
「彩姫!」
恋はピーターの隣で声を震わせる。
「......心斗くん......どこ......?」
霧の中で、六人は少しずつバラバラになり、それぞれが孤立していく。
視界の片隅で、黒コートの男や三人の敵の影が、霧の中を静かに滑るように動いている気配がした。
戦いはすぐそこーーしかし、六人の連携はすでに、霧に引き裂かれようとしていた。
霧が濃く立ち込める森の中、六人は完全にバラバラになっていた。
ピーターは足音を止め、周囲の気配を探る。
すると、霧の奥からゆっくりと姿を現す影一一口元を布で覆った男が、冷ややかな視線を向けてきた。
「......見つかったか。」
ピーターは身構え、手を光にかざしながら距離を取る。男の動きは静かだが、戦いの意思が滲み出ていた。
一方、彩姫は紫色の髪を揺らしながら進むが、突然視界の端に小さな黒い影がち
らつく。
その影が形を成すと、バイオリンを抱えた女が立っていた。
「ふふ.....あなたが紫魔女ね?」
彩姫は魔法の光を召喚しようと手を伸ばすが、霧で距離感が掴めず、慎重に構えるしかなかった。
恋は霧の中で、足元に潜む気配に気づき、身を低く構えた。
そして銃を構築魔法で手にした女が姿を現す。
恋は霧の中で、足元に潜む気配に気づき、身を低く講えた。
そして構築魔法で作ったであろう銃を手にした女が姿を現す。
「......さあ、終わりっすよ。」
恋は握った拳を固め、戦う覚悟を胸に秘める。
森の霧は静かだが、四方八方に不安と危険を孕んでいる。
それぞれが孤立し、目の前の敵だけに集中せざるを得ないーー。
戦いの幕は、静かに、しかし確実に上がったのだった。
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霧の中、ピーターは驚戒を解かず、足を止めて凪を見据えた。
その瞳は冷静で、敵の魔法の動き一つ一つを読もうとしている。
すると、ゆっくりと一歩前に出た。
「.....初めまして、ですね?紫魔女の守り人ピーターさん?」
穏やかな声に、森の霧もかすかに揺れるような静けさがあった。彼はにこやかに頭を下げ、敬語で続ける。
「初めまして。僕は夜叉隊が1人。結城凪と言います。少しだけ、僕の魔法のことを......」
ピーターは少し眉をひそめる。敵が自己紹介をするのは珍しい。
凪はにこにこ笑いながら、手元の糸をくるくると弄る。
「空間中の"繊維”を、僕は自由に扱うことができます。服でも布でも、空中の微細な糸や塵でも。束ねる、伸ばす、切る、編む......使い方は色々です」
「......なるほど?
素直に自分の手の内を明かしてくれるとは…なんとも親切な敵だね?」
ピーターは小さく息を吐き、警戒を解かずに返す。
「君の魔法......かなり厄介そうだな」
凪はにこやかに軽く笑った。
「力はあまりないんですけどね。でも、このくらいなら......失礼しますね」
糸が霧の中に静かに伸び、次の瞬間、森の地面や木々を伝って、巧妙な罠を作り始めたー。
結城凪の言葉と同時に、空気の中に無数の細い糸が伸びた。地面を這い、木々に絡まり、まるで森そのものが凪の操る網のように変化していく。
ピーターは反射的に後ろに飛び、太陽の光を手に集めて盾のように構える。
「くっ......拘束魔法か」
糸は静かに、だが確実に彼の動きを封じようと迫ってくる。凪はにこやかに微笑む。
「ほら......逃げられませんよ、ピーターさん」
穏やかな声の裏に、計算された冷静さが隠れている。
ピーターは光の刃を繰り出し、霧ごと糸を切断。
だが凪は慌てず、即座に新たな糸を編み、地面から天井まで張り巡らせる。
「これでも......まだ逃げられません」
一瞬の隙を見せた瞬間、糸が手首や足元に絡みつき、巧妙に動きを封じる。
ピーターは光を集中させて糸を焼き切りつつ、一歩ずつ前に進む。
「君の魔法......侮れないな」
凪はさらに手を動かし、霧の中で糸を束ねて鋭い切断線を作る。
「僕は前には出ません、後ろからのサポートですから」
にこやかに笑いながら、冷静にピーターの動きを縛る一ーまるで影がもう一人、そこにいるかのように。
森の霧と繊維が交錯し、光と糸の駆け引きが続く。
二人の戦いは、静かな森を舞台に、しかし絶対に逃げられない戦場となったー。
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糸が森の霧に絡み、ピーターの動きを阻む。
だが、彼の瞳には焦りはなく、冷静そのものだ。
「なるほど......こういう動きか」
ピーターは一瞬の間合いを見極め、光を手のひらに集める。
焼き切ってもすぐに再生する凪の糸を前に、普通なら翻弄されるはずだ。
しかし、ピーターは動きを読み、光で霧ごと糸を炙り、攻撃の流れを崩していく。
凪はにこやかなまま、手元の糸を操る。
「これでもう逃げられませんよ......」
糸が東になり、ピーターの足元や腕に絡もうとする。
ピーターは瞬時に太陽の光を刃状に変え、絡む糸を斬り裂いた。
「そう簡単にはいかないよ」
次の瞬間、光の衝撃が霧を裂き、凪の足元を襲う。
凪は慌てずに新たな糸を作るが、ピーターの速度は圧倒的だ。
糸が空間を移ろう前に切り裂かれ、結界もあっという間に破られる。
「......くっ......!」
凪の笑顔にわずかな焦りが滲む。
「僕は......まだまだ......」
ピーターは光を纏い、迫る糸を斬り払いながら一歩ずつ凪に接近する。
凪が後方支援に徹しても、ピーターの速度と判断力には太刀打ちできない。
そして、光の渦が凪を包み込み、糸の操作も封じられる。
「もう、これで終わりだ」
ピーターの瞳が冷たく光り、凪は完全に制圧されたーー
霧の森に、勝者の静けさだけが残る。ピーターは深く息を吐き…
「早く彩姫のとこに行かないと」
次の仲間のもとへと駆け出した。




