依頼
とある日の平日。彩姫とピーターは学園の依頼室に呼ばれる。
重厚な扉の向こうに立つ役人は、緊張した面持ちで二人を迎えた。
「紫魔女、椿彩姫さん、ピーター・ドラコジルさん。国からの緊急依頼です。」
彩姫は少し胸を張って言う。
「紫魔女に依頼ですか? ふふっ、光栄です!」
ピーターは柔らかく笑いながらも、真剣な目で彩姫を見つめる。
「でも、油断は禁物だ。君は有名だから、敵も狙ってくる。」
役人が書類を差し出す。
「隣町で活動を開始した反社会組織の排除です。被害は小規模ですが、放置すれば市民に危害が及びます。拠点は町の南側工業地区、複数の魔法使いが関与している可能性があります。」
彩姫は目を輝かせ、書類を受け取る。
「よーし、ピーター!
みんなで町を守っちゃおう!」
ピーターは笑みを崩さず、穏やかに答える。
「うん、君1人だと不安だ。慎重に行こう。」
彩姫は拳を握り、元気にうなずく。
「心配しないで!全力で行くよ!」
学園の依頼室を出た彩姫とピーター。二人は今回の依頼について話し合っていた。
彩姫は拳を軽く握り、ピーターに向かって笑う。
「ねえ、ピーター!この依頼、面白そうだけどちょっと大変かも。せっかくだし、私たちだけじゃなくて、寧音たちも手伝ってもらおうよ!」
ピーターは穏やかに微笑みながら首を傾げる。
「君は本当に、どんどんみんなを巻き込むね....でも、確かに人数が多い方が安全だ。」
彩姫は元気よく頷く。
「でしょ!じゃあ、行って声をかけてくるね!」
そのまま彩姫は校内を駆け抜け、まず寧音のところへ向かう。
「寧音ー!お願い!一緒に町の困り事を解決しようよ!」
寧音は少し驚きながらも、ピーターから詳しく聞く。するとニッコリ笑って答える。
「いいよ、彩姫。私でよければ。あ、でも無理はしないでね。」
天袮は静かに寧音の方をチラリと見てから、彩姫に目を向ける。
「......寧音が行くなら、俺も手伝う。状況を見極めながらだが。」
天袮は落ち着いた声で言う。
その後彩姫は他のみんなにも声をかけたが、一緒に行けることになったのは…恋と心斗だけだった。
恋は軽く腕を組み、にやりと笑う。
「ふふ、面白そうね。私も参加するわ。」
その隣で心斗が立ち上がり、恋を見つめる。
「……恋ちゃんが行くなら、僕も手伝うよ。」
彩姫は大きく手を広げ、元気いっぱいに笑う。
「やった!これでみんな揃ったね!町を守るの、絶対成功させよう!」
ピーターはそんな彩姫を優しく見つめ、静かに微笑む。
「うん.......君と一緒なら、絶対に大丈夫だね。」
こうして六人のチームが揃い、町へ向けて街道を歩いていた。彩姫は元気よく周囲を観察する。
「ねぇ、みんな!まずは実際に隣町に行って情報集めようよ!」
彩姫は拳を軽く握り、ワクワクした表情を見せる。
ピーターは穏やかに彩姫の肩に手を置く。
「そうだね。油断せずに、敵の動向を把握するのが先だ。」
寧音は少し歩幅を合わせながら言う。
「彩姫、町の人たちにも直接聞いた方がいいかも。何かあったら言ってね?私が手伝うからね。」
天祢は無言で寧音の背後に立ち、じっと周囲を警戒する。
「.....危険があるかどうかは、俺が判断する。」
彩姫たちには無関心だが、寧音には確かに目を光らせている。
恋は腕を組んで、少し前を歩きながら言った。
「敵の規模や魔法の種類も把握しておきたいわね。無駄に戦力を消耗したくないし。」
心斗は恋の隣で、木々の葉を指で軽く触れながら答える。
「僕も周囲の植物や自然の変化を見ながら情報収集する。恋が行くなら、僕も動く。」
「でもそういうのって寧音の方が上なんじゃ、、、」
彩姫はそう呟いたあと、すぐに元気に周囲を見渡し、声を上げる。
「よし!隣町に着いたら、まずは町の人たちに聞き込みだ!敵がどこにいるか、手がかりを探そう!」
六人は足並みを揃え、隣町へと向かう。
彩姫たちは笑顔を絶やさず、チームワークを確認し合った。
___________________________
そして町に到着。
人々は不安そうに立ち尽くしており、彩姫はすぐに駆け寄る。
「こんにちは!困ってることがあったら、私たちが助けるよ!」
ピーターは落ち着いた声で彩姫をフォローする。
「彩姫!?いきなり何聞いてるの!?
いい?まずは状況を整理しよう。敵はどこに現れたのか、目撃情報を聞くんだ。」
しかし、彩姫は情報収集の仕方が壊滅的に下手なため、町の人々は少し身構え、怪訝そうな顔をする。
「えっと.......その、ど、どういう方たちですか?」
「あんた、本当に頼れるのかい?」
彩姫は笑顔を振りまきながら、質問を重ねる。
「うーんと、敵はどこに出たの?なんか怖い魔法とか出てきた?」
すると町の人々は首をかしげ、視線を逸らす。
「うーん、ちょっと......よくわからなくて.....」
彩姫は困った顔でピーターを見た。
「えー、どうして答えてくれないのかな.......?」
ピーターは彩姫をさりげなく背中に隠して、町の人々に優しく微笑み、丁寧に声をかける。
「皆さん、少しお時間をください。僕たちは町を守るために来ました。安全は確保します。どうか、どんな小さなことでも教えていただけませんか?」
町の人々は少し驚きながらも、ピーターの顔の美形さ、落ち着いた態度に安心し、少しずつ口を開き始める。
「南の工業地区で、怪しい魔法を使う連中を見かけました......」
「最近、夜になると変な光と音がして、怖くて外に出られません.......」
彩姫は目を輝かせ、ニコニコと頷く。
「なるほどー!ありがとー、みんな!これで手がかりが増えたね!」
寧音は周囲を観察しながら、町の人々に自然な笑みで声をかける。
天袮は離れた位置から、街全体の危険を警戒して静かに周囲を見渡している。
恋は必要な情報だけを素早く整理し、心斗は周囲の障害や地形もチェックしている。
寧音は彩姫の隣で微笑む。
「彩姫、次はもう少し落ち着いて聞いた方が、もっと情報が集まるかもね。」
天袮は寧音の横で、警戒を緩めずに周囲を見渡す。
「.....無駄に危険を招くなよ。」
恋は腕を組み、効率よく情報を整理し始める。
「ふむ、夜に光と音......ね。」
心斗は周囲の地形や建物もチェックしながら、静かに頷く。
「ここから敵の拠点までのルートも、大体把握できそうだ。」
彩姫たちは情報を集め、敵の拠点や人数、魔法の種類に関する手がかりを少しずつ掴み始めたーー。
___________________________
情報収集を終えた六人は、隣町の小さな旅館に向かって歩き出した。
街灯が柔らかく光る夜道を、彩姫は楽しそうに跳ねるように歩く。
「ふふー、旅館に泊まれるなんて、ちょっとワクワクするね!」
「でも、夜は敵が動くかもしれないから、油断はできないね。」
ピーターは彩姫の隣で、穏やかに声をかけながらも警戒を緩めない。
旅館に到着すると、仲居さんが出迎える。
「お泊まりですか?六名様ですね。」
彩姫は元気に頭を下げる。
「はい!今夜はここでお世話になります!」
部屋に案内されると、彩姫は早速荷物を置き、窓から町の景色を眺める。
「ふふ、夜景も綺麗だなぁ.....でも、敵が出ないかちょっと心配だね!」
寧音は静かに窓際で立ち、落ち着いた声で言った。
「そうね......でも、みんなが揃っていれば大丈夫。彩姫、休むときはちゃんと休んでね。」
天袮は窓の外をじっと見つめながら、低い声でつぶやく。
「......夜になれば敵が動く。注意は怠るな。」
寧音の隣に立ち、彼女を自然にカバーするような立ち位置を取る。恋はベッドの端に座り、腕を組んで言った。
「ふふ、明日に備えて作戦を整理しておくわ。無駄な戦力消耗は避けたいから。」
心斗は窓の外の植物や建物の配置を確認しながら、静かに頷く。
「僕も夜のうちにルートや障害をチェックしておこうかな?」
彩姫はベッドに飛び乗り、元気に手を叩く。
「よーし、明日も頑張ろうね!夜はここで英気を養おう!」
ピーターは少し笑みを浮かべて、彩姫の隣に座る。
「君の元気があれば、明日の作戦もきっと上手くいくね。」
窓の外では、町の静かな夜が広がる。
六人はそれぞれの役割を意識しながらも、少しだけ戦闘の緊張を忘れて、旅館での夜を過ごすのだった。
___________________________
夜が深まると、旅館は静まり返った。
女子部屋では彩姫、寧音、恋の三人が布団に入りつつも、明日の作戦を軽く話している。
「ねえ、明日、敵が本気で出てきたらどうする?」
彩姫は少しドキドキしながら、布団の中で身を寄せる。
「なんでそんなドキドキしてるの…?
でも大丈夫だよ。みんながいるし。私たちも気を抜かない。」
寧音は落ち着いた声で微笑む。恋も腕を組み、少しだけクールに言った。
「そーね!気は抜かない!!当たり前よ!!
ねぇそれより心斗くんの浴衣姿見た…?めっちゃかっこよかった〜!」
「気は抜かないとか言ったのはどこの誰よ、、、」
その間、男子部屋では天袮とピーターが静かに準備を整えていた。
「......彩姫たちには内緒で行く。夜の動きを把握する必要がある。」
天袮は無言でうなずき、外の影に溶けるように動く。
ピーターも小声で返す。
「見張りも兼ねて行くか。彩姫たちには余計な心配をかけないように。」
一方、女子部屋では心斗が窓際に立ち、影になって部屋を警戒していた。
「僕は待機しておこうかな?女子たちを守る人は1人でもいた方がいいしね?恋ちゃんと離れたくないし」
月明かりに照らされ、天袮とピーターは静かに町へと繰り出した。
町の影の中に敵の気配を探しながら、二人は情報を集めつつ、夜の静寂を慎重に進む。
旅館の女子たちはそのことを知らず、安心して休息をとる一ーだが、夜はまだ長く、緊張感は隠せないままだった。
月明かりの下、天袮とピーターは別々のルートで町を巡った。
ピーターは町の広場や商店街を静かに確認し、街の異常な気配を探る。
一方、天袮は裏通りを慎重に進む。
石畳の影に目を光らせ、風の流れや気配の微妙な変化を察知する。
「......怪しい。」
天袮は低くつぶやき、壁に隠れるようにして物陰から一人の男を見つけた。
男は黒いコートを織り、フードで顔の輪郭を隠している。
天袮は呼吸を整え、静かに距離を詰める。
「(.....ピーターに知らせるか?…いや、とりあえず俺が状況を把握してからだ)」
冷静な判断とともに、影に溶けるように男の動きを追う。
天袮は息を潜め、慎重に距離を詰める。
男の動きを観察する目は鋭く、手の動きや周囲への警戒を逃さない。
しかし、男は一心不乱に刀を振り、空気を切る音だけが静かに響いていた。
「......?」
天祢は視線を凝らす。魔法や不穏な気配はまったくない。
数分後、天袮は冷静に判断した。
「.....ただの修行中か。紛らわしいな。」
男は小声で独り言をつぶやきながら、繰り返し刀を振る。
「.....ふう、まだまだだな......」
天祢は影に身を潜めたまま、微かに息を吐く。
「.....少し気を張りすぎたか。」
月明かりの下、町は再び静まり返り、天祢は警戒を緩めずに次の動きを考えながら、影を進む。




