これから先へ
注)11/22:ルルナの解像度を上げた。しかし、アバターの真実(伏線)は削除。
平日(土日祝は休み)に投稿していきます。
6月は不定期投稿となります。
上目遣いに見つめてくる瞳。そこには、悠久の時をかけた献身と、拒絶されることへの微かな怯えが滲んでいた。アルドは息を呑んだ。迷惑などという言葉で片付けられるはずがない。千年だ。気が遠くなるような時間を、彼女はこの姿になることを夢見て、俺のためだけに費やしてくれたのだ。その愛の重さと深さに、アルドの胸が締め付けられる。
「迷惑なものか‥‥‥」
アルドは、頬に添えられた彼女の手に、自分の手を重ねた。
「ありがとう、ルルナ。千年も待たせてすまなかった。‥‥‥俺にはもったいないくらい、美しいよ」
『っ! あ、ありがとうございます、マスター‥‥‥!』
ルルナは顔をくしゃりと歪め、嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑った。その仕草は、AIでも、聖霊でもなく、ただ恋する一人の女性そのものであり、アルドは自然と彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
(ああ、俺はこの娘に生かされたんだな)
アルドは改めて、己の命の重さと、それを支えてくれた彼女への感謝を噛みしめる。
ルルナが抱える秘密や事情はあるだろう。だが、この千年の想いだけは真実だ。それだけで、俺が彼女を信頼し、守り抜く理由には十分すぎた。
「さてと、そろそろ村に戻るとしようか。‥‥‥これからも頼むぞ、相棒」
『はい! 私の全てを懸けて、マスターをお支えします!』
ルルナは涙を拭い、ふわりと再び蒼綿毛の姿に戻る。その光は、以前よりもどこか温かく、力強く輝いているように見えた。
『避難民――いえ、新しい住人の方々から伺った、亜獣襲撃や国境都市の状況に関する報告ですね。午後までには最終的なまとめが終わるとのことでした』
「おお、助かる。そういえば、話は変わるが、ルルナは村の記録書も読んだと言っていたような?」
『はい。ミア様にお許しをいただき、全て内容を把握いたしました。ですので、マスターがお望みであれば、この世界の歴史や地理についての授業もできますよ?』
「っ! それはありがたい! もしかして、分かっていたのか?」
アルドは驚いたように尋ねた。
『ええ。マスターがご自身の不勉強を気にされているようでしたので』
悪戯っぽく、蒼綿毛が揺れる。
「はは、さすがルルナだ。本当に頼りになる。ぜひ、お願いしたいよ」
南の山岳地帯から吹き下ろしてくる風が木々を揺らし、ざわざわと音を立てた。アルドはその風が来た方向――ドワッフ王国のある方角へ、目を細めて見つめる。
(村の復興も、ここ数日の皆の頑張りで、一定の基盤は出来つつある。避難民の受け入れも順調だ。次は、やはりドワッフ王国か)
出稼ぎに行っている村人たちの救出。それは急務だ。
(午後の報告を聞いて、状況を判断し、人選を考えることになる。‥‥‥いや、待てよ。俺自身が、情報を取りに行ってもいいのかもしれないな)
ふと脳裏に浮かんだ発想に、アルドは小さく頷いた。そして、再び険しい南の山々を、決意を込めた目で睨んだのだった。
◇
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