村を整備発展していこう③
5/30まで、平日(土日祝は休み)に投稿していきます。
今週の投稿時間は不定期(夕or夜?)になります。
広場に再びどよめきと、今度は熱気を帯びた感嘆の声が上がる。ミア自身も、自分の頭の上で温かな光を放つルルナに驚きと、そして少しばかりの安堵が入り混じったような複雑な表情で固まっている。
(ルルナめ。また、こういう味な演出を・・・。だが、効果は絶大、か)
アルドは内心で苦笑しつつも、ミアに向かって力強く頷いた。
「聖霊様ご自身が、こうしてお認めになっているのだ。ミア、もっと自信を持つといい。君ならきっと、立派な巫女に、そして村の長ーーー調停者になれる」
「は、はいっ」
今度は耳まで真っ赤にしたミアが、それでも嬉しさと決意の入り混じった表情で、しっかりと顔を上げた。その小さな手をユキナがそっと両手で包み込む。
「胸を張ってくださいませ、ミア様。あなたは決して一人ではありません。私たちも、そして村の皆も、いつでもあなたの傍におりますから」
その言葉は本心だろうか、それとも・・・アルドには判断がつかないがーーー、
「はいっ! ありがとうございます、ユキナお姉さまっ!」
ミアはユキナの手をぎゅっと握り返した。どうやら、短い間にすっかり「ユキナお姉さま」と慕うようになったらしい。その様子を、アルドは少しだけ羨ましいような気持ちで見守った。
よしっと、アルドは片膝を叩いた。
村の人々の顔に少し活気が戻ってきており、空気も温まっている。そろそろ動くべき時だ。アルドはココミに目くばせを送った。
ココミも頷いて、ぱん、と軽く手を叩いて立ち上がりながら皆に声をかける。ココミの声は、広場によく通った。
「さて、皆さん! 食事も終わりましたし、今日から本格的に村の復興作業を始めましょう! アルドさん、私はまず村の拡張計画の具体的な設計図を作りますね。ユキナちゃんは、東の森へ木材の調査と調達をお願いできますか? タンスイ君は、南の山岳地帯へ鉱石の調査と採掘をお願いします!」
「おう、任せとけ! 力仕事なら得意中の得意だぜ」
タンスイが自信満々に胸を叩き、早くも体を動かしたくてうずうずしているようだ。
それぞれが食後の片付けを始め、資材調達組は準備に取り掛かろうと動き出した。活気が戻り始めた広場。その、まさにその瞬間だった。
ーーぴりっ。
アルドの全身の皮膚が、予期せぬ静電気に触れたかのように粟立った。今まで感じたことのない、鋭く、そして不穏な空間そのものを震わせているような、強烈な違和感。
思わずアルドが立ち止まった。
ほぼ同時に、ココミが「えっ!?」と短い悲鳴のような声を上げて、険しい表情で西の空を睨んだ。彼女の両目には、複雑な幾何学模様――鑑定眼の制御式が淡い光を放ち、高速で明滅している。
そのただならぬ変化を敏感に察知したユキナとタンスイが、一瞬で臨戦態勢をとった。ユキナは手に弓矢を現し、タンスイは背中の大剣の柄を、先ほどとは打って変わって殺気を込めて握りしめていた。
広場に満ちていたはずの温かい空気が嘘のように消え去り、凍てつくような緊張が支配する。
(・・・なんだ? この、胸騒ぎは)
アルドも反射的に刀の柄に手を置き、全身の神経を研ぎ澄ます。肌で感じた違和感と、ココミが見つめる西の方角。距離はおよそ、5キロメートルほど。
――そこで間違いなく、激しく、そして絶望的な戦闘が始まっている。
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