3-2 帰宅後
家に入ると、父親が、夕飯の支度をしていた。
その姿は、いつもと変わらず、のんきだった。
「ショージ、お帰り。今日の夕飯は、豆のスープや」
「父ちゃん、ただいま。今日、山で、女神様に出会ってな…」
オレは、今日の出来事を、父に話した。
父親は、驚いた様子もなく、ただ「そうか」と呟いた。
その表情は、まるで、すべてを、理解しているかのようだった。
「しかし、凄い斧じゃのう。これは家宝として、後世に伝えるべきじゃろうな」
「せやな、父ちゃん」
母親も、特に何も言わずに頷いていた。
その姿は、まるで、人形のように、無表情だった。
そして、その表情は、常に、一定で、オレには、理解できなかった。
(この斧、ほんまに家宝にするんか?
なんか、もったいない気もするけど…、いや、それよりも、オレは、女神様に、もう一度、会いたい…)
オレは、三本の斧を眺めながら、そう思った。
しかし、心の中では、女神への衝動が、渦巻いていた。
それは、もはや、理性では、制御することのできない、危険なものだった。
そして、同時に、この日常に、満足することができない、焦燥感も、感じていた。
(ま、ええか…、今は、夕飯食べよ…、そして、ゆっくり、考えよう…)
オレは、そう思いながら、台所へ向かった。