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第95話 おいでよ エルフの村

 その後は様々な料理を食べつつ、ディニエルを含めた皆と、あれがおいしかった、この味は初めて食べた、みたいな感じの会話をしつつ、食事を進めていった。


 リューナも、初めて食べた料理が多くあったみたいで、後でレシピを聞いてみたいです、なんて言っていた。

 

それに対して、


「気になる。食べたい」


 なんてディニエルが反応し、リューナも、


「その時は、ぜひとも招待しますね」


 といった感じのやり取りをしていた。


 ディニエルは、リューナが魔族とかは全然気にしていないみたいだな。


 それにしても、この短時間で二人はかなり仲良くなれたみたいだな。

 こういう光景を見ると、リューナを雇うことにして正解だった、なんて思えるな。



 ある程度お腹が膨れてきたところで、パティオさんたちがケーキを運んできた。

 あの色は、チョコレートを使ったケーキかな?


 前に、パティオさんにポロっと言ったことが切っ掛けで、色々と聞かれてしまったからな。

 とはいえ、作り方を知っているわけでもないので、知っているだけでも複数種類がある、それぞれこんな感じの見た目と味だった、ってくらいしか説明できなかったけど。


 そんな俺の適当な説明で本当に作れたのかと気になり、さっそくいただくことにした。


 断面から見るにチョコを使ったスポンジとクリーム、上に乗せたチョコチップで構成された比較的シンプルなチョコレートケーキに見える。

 一口食べてみると、スポンジがビターな感じに、クリームが少し甘めに作ってあった。

 また、チョコチップかと思っていた部分はクッキーになっており、ザクザクとした食感と相まってとってもおいしかった。


 ……パティオさん、やっぱりすごいな。


 ちなみにそのパティオさんは、午後も予定があるみたいだった。

 なんでも、魔道具の泡立て器(ハンドミキサー)を発売するにあたって、それを利用したレシピ集を作成することになったそうだ。

 今井商会側から提案したらしく、王家御用達、宮廷料理人が監修したレシピ付き! という形で売り込みたいみたいだ。

 確かに、今までなかった魔道具だから、どんな用途に使えるかが分かるといいのかもしれない。


 それにしても、そういったことにもこの国は協力してくれるだな。


 というわけで、俺に色々と聞きたそうにしていたパティオさんは、名残惜しそうにしながらも去っていった。

  去り際に、料理に関して何かあれば、いくらでも相談に乗るよ! って言ってくれたし、もしも困ったことがあれば頼らせてもらおう。

 その時は、お礼用に良さそうなレシピを考えておこうかな。


 ……あ、魔界の料理について、話すのを忘れていたな。

 まあ、クレアとかメアリさん経由で伝わるかな?



 食事が終わり、午後は皆から魔界や魔族の印象、どんなところに興味があるかについて聞いてみた。


 まず、魔界に行った事があるのはクレア、付き添いのメアリさん、アキナ、ソフィアみたいだ。

 クレアは公務で何度も、アキナは家族と一緒に一度行ったみたいだ。


 彼女たちからは、まだ行った事の無い場所、出会ったことのない種族などが気になるようだ。

 それとアキナは、商売につながる何かがないか、というのも気になっているみたいだ。


 ユズたち行った事がない組からは、暗そう、とか、混沌としていそう、みたいなイメージがあるみたいだった。


 リューナから、特殊な場所は確かにありますが、人間界とそこまで変わらない場所も多いです、という説明を聞いたときは驚いていたな。

 特にユズは、リューナに色々と質問しては、ハヤテちゃんに騙されたー! なんて言っていた。


 ディニエルはやっぱり、かっこいい魔族がいるか、が気になるみたいだ。

 それと、魔族の服飾についても気にしていたな。


 ……それにしても、人間界には魔界に関しての情報が全然広まっていないんだな、なんて改めて思った。

 というか、魔界側が積極的に広めようとはしていない、って感じに思えるな。


 少し前に魔皇の城で聞いた、まずは魔界の状況を改善して、その光景を人間族に見てもらう、って計画があるからだろうか。

 だから、現状の魔界については、そんなに積極的に広めない、みたいな。


 ……もしそうだとしたら、なんだかもったいない気もするな。



 そんな感じで話をしていたら、俺は人間界でどこかに観光に行ったことがあるのか、なんて話になった。

 ……行こうという気持ちはあるけど、まだ行っていないです。


「とりあえず、試練の方がある程度落ち付いたら行ってみようかな。俺の生まれた国、日本と似ているっぽい、この国の東方にも行ってみたいしな。他にも、この国で有名な観光スポットとか、可能なら他の国にも行ってみたいかも」


 日本と似ている地方は、アキナが生まれたっていう場所だな。

 他にも、せっかくの異世界なんだし、異世界ならではの観光スポットみたいな場所にも行ってみたい。


 ……とはいえ、いつでも行けるようになるし、急いでいかなくてもいいかな、って気持ちにもなっているけど。

 なんだかんだで毎日が楽しいしな。


 そんなことを思っていると、


「エルフの村。リューナも一緒」


 なんてディニエルが言い出した。


「えっと、俺とリューナをエルフの村に招待したい、ってこと? というか、魔族が行っても大丈夫なのか?」


「リューナさんであれば、そちらは問題ないのですわ! けれど、どうして急にエルフの村なのですわ?」


「有名な観光地。エルフと魔族。少し似てる」


 ……魔族と似てる?

 どういうことだろう?


「……言われてみれば、そうなのですわ」


「えっと、俺は全然わからないんだけど、よかったら説明してもらえるか?」


「もちろんですわ! まずは……」


 と、時にメアリさんに補足や訂正を入れられながらも、クレアが説明してくれた。


 それによると、かなり昔、エルフは深い森の中でのみ生活をしていたようだ。

 エルフの里には結界が張られ、他種族には排他的であったらしい。


 国としても、そこをわざわざ侵略して自国の領土にするメリットが薄く、基本的には放置されていたという。


 とはいえ、時にはその森に、エルフ以外の種族が近づくこともあったらしいが、そういった存在はすぐに追い払われたり、結界に阻まれて。エルフの生活圏までは近づくことができなかったようだ。


 そういった存在であるため、今の魔族と同じように、当時のエルフはほとんどが謎に包まれていたらしい。


 しかし、森に生活するエルフの人口が増え、また、外に興味を抱いたエルフたちが森から出ていくようになり、少しずつ交流が進んでいったようだ。


 今では、わずかなエルフが昔の生活をするのみで、多くのエルフは外部との交流をしている、とのことだ。

 そういったわずかなエルフが住む場所は立ち入り禁止となっており、たまに交流役のエルフが様子を伺いに行くのみだそうだ。

 

「……なるほどな。確かに、魔族と似ている部分もあるし、何か参考になるかもしれないな。それに、この世界で旅行はしたことがなかったし、まずは観光地とかで慣れておくのもいいかも」


「よい考えなのですわ! 観光用のエルフの村であれば、外部と交流しつつも、昔の生活を行っているエルフが多くいるのですわ」


 ……なんか、元居た世界でもそういった部族を聞いたことがある気がするな。

 観光用に、そういった生活をしている人たちもいるとかなんとか。


「いつ行く? 明日?」


「……えっと、準備とかもあるし、明日すぐっていうのはちょっと難しいかな。リューナの予定もあるだろうし」


 ディニエルは、すぐにでも俺たちを招待したいみたいだ。


 とはいえ、明日すぐっていうのはなぁ。

 直近で予定はないけど、すぐに旅行だ! っていうのは、なんというか思考の切替ができないというか。


「私はいつでも大丈夫です。ハクト様の準備も、言われればすぐにでも行います」


 ……そうだったな。


「あー。えっと。……せっかく観光するなら、一度気持ちを作ってから行きたいかな」


「なら明後日?」


「……じゃあ、それで」


 ということで、明後日はエルフの村に行くことになった。

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