98_目に見えないもの
「よし。それじゃあまた突きの練習に戻ろうか。今足の裏で発生するようになったエネルギーを、拳に移動させて拳と一緒に撃ち出す感じだね。」
「うん、やってみる。 ふぅ~…… ふんっ」
美澪が右手で突きを繰り出した。美澪が後ろ側に置いている右足を意識しているのが琥太郎にもわかった。
「あれっ、後ろ側の足の裏から何も出なくなっちゃった。」
「う~ん、難しい。」
「もう1回、足だけでやってみようか。足は上げずに、斜め後ろに力を入れるやつ。」
「うん。 ふぅ~……」
ダンッ!
やはり、これだと美澪の足の裏に「気」のようなエネルギーがしっかり発生する。
この足だけの動作を更にあと3回繰り返してから、もう一度突きの動きに戻る。しかし、突きの動作になると、足の裏からは何も発生しなくなってしまう。
「う~ん、やっぱり難しい。」
「仕方ないよ。今はとにかく、これを繰り返しながら、突きの動作の時にも足だけの時みたいに、しっかりと足の裏にエネルギーが発生するように練習を続けよう。」
その後も琥太郎が美澪の足の裏を観察して、都度「気」のようなエネルギーの発生の有無を美澪に伝えながら、ひたすら足だけの動作と突きの動作を繰り返していく。すると、20分位続けたところで、突きの時にも足の裏に一瞬モヤっと薄く光るように「気」のようなエネルギーが見えた。
「あっ、美澪、今ちょっと出たっぽい!」
「あっ、また出た! 美澪、ちょっとづつ出来始めてるから、今度はまた突きだけを続けてみよう。」
ふぅ~…… ふんっ
ふぅ~…… ふんっ…
琥太郎の言葉を聞きつつも、美澪が集中を切らさずに、1突きごとに時間を取りながら突きの動作を続ける。
琥太郎が観察していると、数回に1回にといった割合で足の裏に「気」のようなエネルギーが発生している。更に、時間が経つごとに発生する確率も上がってきた。
「美澪、ちょっと休もうか。ちょっと休憩を挟みながら、しっかりと集中力を上げて練習しようよ。」
「わかった。そうする。」
美澪の額には結構な汗がにじんでいた。
琥太郎が、すぐ横を走る十二社通りを渡ったところにある自販機にジュースを買いに行った。公園に戻ってみると、美澪はまだ1人で突きの練習を続けていた。
「はい、美澪、ジュース買ってきたよ。一回ベンチに座ろう。」
「ありがとう。」
ジュースを一口のんだ美澪が、しばらく考え事をしているようだったが、ふと琥太郎の方を見て口を開いた。
「琥太郎、ありがとう。私1人じゃ、今の突きの練習も、さっきの妖気を練る練習も、出来てるかどうかすらわからない状態になってたと思う。やっぱり琥太郎は凄い。
「確かに、妖気を練るみたいな、「気」を動かす練習とか、今の突きの練習のは徑だと思うんだけど、これに関しても、普通は目に見えないものだから難しいよね。まだ、この練習がこの先どういう結果につながるかもわからないけど、美澪の新しい技が出来るように出来るだけ協力するよ。」
「琥太郎がいれば、絶対に強くなれる。」
妖気や徑の操作や鍛錬となると、琥太郎のようにそれらを見たり感じたり出来る者でなければかなり大変だろう。美澪が言うように、こうした鍛錬において、琥太郎がアドバイスをくれるというのは非常に有益だ。
「琥太郎、またお願い。」
ジュースを飲んで一息ついたところで、美澪が立ち上がり再び突きの練習を始めた。
琥太郎が見ていると、既に突きの動作の中でも、後側の足の裏には毎回確実に「気」のようなエネルギーが発生させられるようになっている。更に、発生する量も増えて、今では足を上げて落とすだけの練習の時と変わらない量になっていた。ただ、その発生したエネルギーが足の裏から移動せずに、せいぜいくるぶしあたりで止まってしまっている。
「美澪、後ろ側の足に関してはいい感じだからさ、美澪は足の裏で生まれるエネルギーを体の中を通して拳に持っていくイメージで続けてみて。それと、俺が今から美澪の足の裏で発生したエネルギーを、突きに合わせて拳の方に移動してみるから、何か感じても驚かないでね。」




