97_"ギュッ"と"ビッ"
琥太郎が美澪の肩を持ってグラグラ揺らしてみる。
「うん、呼吸も止めずに、しばらくはリラックスした状態を続けてみてね。」
そう言って、琥太郎は時折美澪の肩をゆっくりと揺らしながら、美澪がリラックスした状態に慣れるのを待つ。
「じゃあさ、今度はその状態で、片足を軽く上げてみて。」
「はい。」
美澪が右足を少し地面から浮かせた。
「次に、今上げた足を、力を抜いて地面に落っことしてみて。」
タンッ
美澪が浮かせた足を地面に落とした。
「足を落とす時も、力を入れないでね。もう1回やってみようか。」
美澪が再度右足を少し地面から浮かせる。
「また落として。」
タンッ
「そしたら、今度はもうちょっと足を高く上げてみて。」
美澪が先ほどよりも少し高めに足を上げる。
「落として。」
タンッ
「これをあと5回位繰り返してみようか。」
タンッ
タンッ
タンッ……
「じゃあ次は、今足を地面に落とした時に、足の裏に地面から衝撃があったでしょ。その衝撃を逃がさずに地面の中に抑え込むような感じで、足が地面に着地した瞬間だけ力をちょっと入れてみてもらえる? 足を上げて落とす時には、今やってたのと同じで力を入れちゃだめだからね。力を入れるのは、あくまでも足が地面に着地した瞬間だけね。」
タンッ
「「……おっ?!…」」
タンッ
タンッ
タンッ……
「美澪凄い!なんか出てきた!! まだ十兵衛爺ちゃん程じゃないけど、さっきリラックスを意識して突きを放った時よりも多めに「気」みたいのが出てきたよ。」
まだ十兵衛爺ちゃんのように爆発するような感じではない。しかし、先ほどはうっすらとしか見えなかった「気」のようなエネルギーが、今ははっきりと足の裏に発生するのが見える。
「美澪、足が着地した瞬間の踏ん張りを、今よりももっと強く出来る?足を落とす時は絶対に力んじゃだめだよ。」
ダンッ
ダンッ
ダンッ
「凄い凄い! 更にいっぱい出てきたよ!」
先程までは足の裏が明るくなるような見え方だったものが、今度は光って見えるくらいに強くなってきた。
「美澪、今は連続でやってるでしょ。今度はさ、落ち着いて1回だけに集中してやってみて。とにかくリラックスして落として、着地の瞬間だけしっかり強くね。」
「ふぅ~……」
ダンッ!
その瞬間、美澪の足の裏で爆発が起きたかのようにエネルギーが発生した。まさに、十兵衛爺ちゃんが突きを放つ時と同じ感じのやつだ。
「美澪! それだそれ! 今のはいっぱい出てた!」
琥太郎の言葉を聞いて美澪が一瞬表情を緩めたが、すぐにまた集中した表情に戻った。そして、再び深呼吸をしてから先ほどの動作を繰り返す。
「ふぅ~……」
ダンッ!
「ふぅ~……」
ダンッ!……
美澪が何度か同じ動作を繰り返すが、その都度美澪の足の裏からは「気」のようなエネルギーが発生していた。
「美澪、じゃあさ、今は足を上げて落としてたでしょ。今度は足を上げずに、地面に着けたままでやってみよう。」
「ふぅ~……」
ダンッ!
美澪が足を地面に着けたまま、深呼吸した後に足を踏ん張ると、先ほどまでと同じように足の裏に「気」のようなエネルギーが発生した。その後も何度か同じ事を繰り返したが、全て上手く出来ていた。どうやら、足の脱力から瞬間的に力を発する事に慣れてきたようだ。
「これも問題無さそうだね。」
「うん、凄くなんとなくだけど、琥太郎が今のは出来てたって言ってくれる時の感覚というか感触みたいなのが、ほんのちょっとだけ判ってきたような気がする。」
「よし、それじゃあ今度は、今までは地面に向かって真下に力を入れてたのを、突きを打つ時と同じように斜め後ろに力を入れてみよう。」
「うん。 ふぅ~……」
美澪が息を大きく吐きながら、足だけでなく上半身も力を抜くように軽く揺すっている。そこから一瞬動きを止めると、直後に美澪の足に力が入ったのがわかった。
ダンッ!
「よし! これも出来た!!」
真下に力を入れていた時と同じように、美澪の足の裏から爆発しているかのような勢いでエネルギーが発生するのが見えた。美澪が先ほど言っていたとおり、どうやらこの「気」のようなエネルギーを発生させる際の感覚を掴んできたようだ。更に何度かこの動作を繰り返すが、やはり全てうまく出来ている。
「美澪、これで十兵衛爺ちゃんと同じように足を踏ん張った時に足の裏に「気」みたいなエネルギーが発生するようになったんだけさ、なんか違いってわかるの?」
「うん。琥太郎が出来てないって言ってた時のは、力の入れ方がギュッって感じだったんだけど、上手く出来てる時のはビッって感じ。」
聞いては見たものの、なんだかよく判らない。しかし、美澪の中では"ギュッ"の時と"ビッ"という時の感覚が明確に違っているようだ。言葉で聞いてもよくわからないが、本人がその感覚を掴めているのであれば問題ないだろう。




