92_食材の買い出し
先日帰省した後、筋肉痛で動けなくなった事もあり、なんだか美澪は琥太郎の体力に対して厳しくなってしまった。
「「……いやいや、これでも同世代と比べれば、体力に関しては結構ある方だと思うんだけどなぁ。まあ、美澪には同世代と比べたところで納得はしてくれないか…」」
なんとか山手通りまでの坂を上りきり、部屋へは流伽のメールからちょうど20分位で到着する事が出来た。
部屋の前まで来た時点で、既に換気扇を通してすごく良い匂いがしている。
「流伽ただいま!」
「うわぁ、ちょうどぴったしだよ。グッドタイミング!」
部屋に入ると、流伽が3人分のチャーハンをお皿によそっている所だった。
テーブルには既に3人分のスープと、その他にもハムとニンジンとブロッコリーのサラダが用意されていた。
3人分とはいっても、チャーハンとスープは1人分だけ物凄く少量だ。
「あれっ、この物凄く少ないのって誰の分?」
「それは私のだよ。私は霊だから本当は別に食べなくても問題ないんだけど、せっかくだから一緒に食べる雰囲気だけでもと思って用意しちゃった。」
「うん、せっかくなんだから絶対一緒がいいよ。」
流伽もすぐにチャーハンをよそい終わり、フライパンを洗って席についた。
人、妖、霊
まあ、別に誰が見ているというわけではないが、今更ながら不思議な食卓だと思う。とはいっても、それはけっして琥太郎にとって嫌なわけでなく、なんだかとても素敵な空間に思えた。
「いただきます! 美味しい!!」
「ありがとう。」
「うん、美味しい。」
美澪も珍しく口に出して流伽の料理を褒めた。出会った頃は最悪といった感じの関係だったが、日に日にこの2人も仲良くなってきているようだ。
それにしても流伽は料理が上手いし、何より手際がよい。食事を食べ始めるこのタイミングで、台所に洗い物は残っておらず綺麗に片付いている。献立も冷蔵庫の残り物をうまく使ってくれて無駄がない。本当に良い奥さんになりそうなのに、いかんせん既にお亡くなりになっているのが惜しまれる。
残さず全て食べ終わった後には、やはりすぐに流伽が洗い物まで全て片付けてくれた。
「流伽、ご飯を用意してくれたのに、片づけまで全部やってくれてありがとう。なんか全然手伝わずに終わっちゃってごめん。」
「はははは、今日は品数も少なかったし、これ位問題ないよ。」
「本当にありがとう。」
「流伽、ありがと。」
その後、琥太郎が一休みしようとリビングで横になると、美澪はすぐにまた練習に出かけてくると言いだした。はやく自分で妖気を回して練れるようになりたいようだ。琥太郎は休んでいて良いと言っている。
「じゃあ、ごめん、俺はお言葉に甘えて一休みしとくね。」
「休んでていいけど、あとでまた稽古を見てね。」
「うん、また夕方に一緒に出掛けようか。」
「それまでに1人で出来るようになっておく。」
そう言って美澪は早速出かけていった。美澪の上達速度なら、美澪が言うように夕方までに1人で妖気を回して圧縮出来るようになっていてもおかしくない。それにしても、幼い頃から活発で模擬戦好きだったりした美澪だが、強くなる事に対しては本当に貪欲だ。
「流伽はこのあとどうするの。」
「う~ん…、ねえ琥太郎、もしも琥太郎が良ければ、一緒に食材の買い出しに行きたい。」
「もちろんそれくらい構わないよ。夜になって日が落ちたら出かける?」
「別にすぐにでも大丈夫だよ。」
「えっ、霊って日の光に当たっても大丈夫なの?」
「うん、もちろん好きではないけど、別に日にあたった位じゃ成仏しちゃったりしないから大丈夫だよ。だけど、玄関にある傘くらいは使ってもらおうかな。」
「そっか、なんか霊ってすごく日の光に弱いイメージがあったけど、案外大丈夫なんだね。じゃあ、今ご飯を食べたばかりだし、30分位休んだら出発しようか。」
「ありがとう! なんか琥太郎とお買い物に出かけるの嬉しいな。」




