90_丹田
念のため、なるべく後方に何もない方向を選んで、再び琥太郎が美澪の正面に立った。
「違いを比べたいから、最初は今まで通りの普通の妖気弾を俺に撃ってみてもらえる?」
「うん。」
ドッ
琥太郎が「気」の防御を働かせながら、美澪の妖気弾を正面で受け止めた。
「じゃあ次、さっきの圧縮させたやつを撃ってみて。」
「ふんんっ」
ドォッ
「おぉ、さっきのとは威力が段違いだね。やっぱり圧縮して、込める妖気を増やした方は威力がかなり大きくなってる。」
「ふふふっ」
美澪も自身の打ち出した妖気弾の威力が上がっていると聞いて嬉しそうに表情を緩める。
「まあ、いつものに比べると、連射とか即時の対応とかには難がありそうだから一概にいいことばかりとは言えないけど、取り合えずは攻撃のバリエーションが増えた事にはなるのかな。」
「うん。もっと練習して、今までの妖気弾に近い速さで撃てるようにする。」
「そうだね。だけど、その前にもうちょっと美澪には試してもらいたい事があるんだよね。」
「ん?」
美澪から頼まれているのはあくまでも必殺技だ。今美澪が撃ち出した妖気弾は、今までの妖気弾よりも威力が上がっているとはいえ、まだまだ必殺技と呼ぶには物足りないだろう。
「今度は、こないだ風音さんがやってたのと同じように、お臍の下に妖気を集めて圧縮してみてもらえる?多分だけど、さっきみたいに妖気を回転させた方がうまくいくと思う。」
「この辺かな…、ふんっ、ふんんんっ…」
美澪が時々体をよじりながら、妖気を丹田のあたりに集めようとしている。しかしこれまで、ここに意識して妖気を集めるといった事をした事が無いのか、先ほどまでのようには上手くいかないようだ。
美澪が小さく声を発して踏ん張るたびに、美澪の身体からは妖気が溢れ出ている。しかし、その妖気を丹田に集める事が出来ていない。
「美澪、ちょっとお腹を触るよ。」
そう言って、琥太郎が美澪の丹田のあたりに軽く手を触れる。
「このあたりに妖気を集めて回転させてみるから、美澪は今みたいに妖気を出してみて。」
「ふんんんっ…」
美澪が軽く踏ん張って発した妖気を、琥太郎が美澪の丹田のあたりに集中させて回転させる。
「わうっ、わわわわわっ」
美澪が風音さんの時と同じように変な声をあげ始めた。
「どう、今美澪の丹田に妖気を集めて回してみてるんだけど、手の平に集めて回した時みたいに妖気を感じる事は出来る?」
「ふわわわわっ、こっ、琥太郎、ちょっと待って、ストップ!」
美澪が珍しく余裕をなくしているので、琥太郎は美澪のお腹から手をはなして妖気を回すのを止めた。同時に美澪の丹田に集まっていた妖気は拡散して散っていった。
「はあはあ…、なんか凄い。風音が悶えてたのがわかった。なんか、妖気を回してるっていうよりも、内臓をグルグル回されてるみたいな、なんか凄い感じがする。」
「そっか、耐えられなそう?」
「ううん、慣れれば大丈夫なはず。風音も出来てたし、大丈夫…、だと思う。」
風音さんも霊気を琥太郎が回した時にはかなり苦しそうにしていたし、やはり外部から体内で妖気を回す行為はかなり大変なようだ。
「美澪もあんまり無理しすぎないでね。痛かったりしたらちゃんと言ってね。」
「大丈夫。痛くはない。」
「じゃあもう1回やってみるね。もう場所はわかっただろうから、お腹は触らずに妖気をまわしていくよ。」
「ふんんんっ…」
再び美澪が発した妖気を琥太郎が美澪の丹田に集めて、時計周りに回していく。
「ふわっ、ふんんんんんっ、はうっ、うううっ…」
美澪がやはり変な声を発しながら、体をクネクネさせている。琥太郎が回す妖気に耐えているのか、自身で妖気をまわそうとしているのか、もはやよくわからない。
「いったん回すのをやめてみるよ。」
琥太郎がそう言って美澪の妖気を外部から回すのをやめるも、美澪は引き続き回転を維持しようと体を捩らせながら頑張っている。しかし、すぐに妖気は拡散して散ってしまった。
「どう、まだ平気そう?」
「大丈夫。まだまだいける。」




