88_代々木公園
9月は3連休が2週続くので、今週も先週に続いて3連休だ。
連休中日の日曜日、朝から稽古と称して美澪を誘ってみると、喜んで行くと言ってきた。
休日の昼間という事で、人出の多さは気になるものの、代々木公園に行ってみる事にした。
代々木公園は、原宿駅や代々木体育館側は特に人が多いものの、参宮橋駅側の入り口から入って奥の方へ行く分には比較的空いている。こちら側の入り口までであれば、琥太郎の部屋から自転車で15分程度だ。
例によって琥太郎が漕ぐロードバイクの横を、美澪が飛ぶように(ほとんど飛んで)走ってついてくる。結局美澪は全く息も切らさずに公園まで到着してしまった。
「美澪って、どの位の距離を走れるの?」
「走った事はないけど、アクアラインを通っちゃえば君津くらいまでなら大丈夫だと思う。いっぺんに往復はちょっときつい。」
琥太郎の住む初台から君津までは60km位あるだろうか。美澪の場合は長距離選手というよりは瞬発力勝負のスピード型だと思うのだが、それでもマラソンのオリンピック選手など比較にならない程走れてしまうという事のようだ。
琥太郎達は、公園内のドッグランから少し離れた、なるべく人気の少ない場所を選び自転車を止めた。
「美澪の必殺技の事なんだけど、まだはっきりとこうすればいいみたいな事は思いついてないんだ。だけど、いくつか試してみてもらいたい事があるから、それを1つづつやってみてもらおうかと思ってるんだけどいいかな。」
「もちろん。琥太郎の言うとおりにすればうまくいくと思うからなんでもやるよ。」
相変わらずの凄い信頼感だ。本当に上手くいくかもわからないので、結構なプレッシャーを感じる。
「それじゃあまず、空に向かって妖気弾を何発か撃ってみてもらってもいい?」
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
美澪が上空に手を向けて妖気弾を発射した。
以前に品川埠頭で模擬戦をした時などにも既に感じていたのだが、美澪が妖気を打ち出す際、風音さんが丹田を中心に霊気を練って圧縮するのと違い、美澪の場合には打ち出す手の平で妖気が圧縮されて発射されていた。あらためてじっくり観察してみるが、風音さんが霊気を圧縮する時のように特に妖気を回転させたりはしていないようだ。それでも、撃ち出される瞬間に美澪の霊気がかなりの強さで圧縮されているのがわかる。
「ありがとう。今度は、続けて撃つんじゃなくて、撃つ準備だけしてもらって、俺が合図したら打ち出してもらってもいいかな。」
美澪が再び上空に手を向ける。今度は妖気弾を発射せずに、手を向けた姿勢のまま止まっている。琥太郎がその手を見ると、美澪の妖気が手の平に集まっているのがわかる。しかし、先ほど連続で発射してもらった時ほど圧縮されている感じはしない。
「じゃあ、1発撃ってみて。」
ドッ
美澪が妖気弾を撃ち出す瞬間、手に集まっていた妖気が瞬間的に圧縮されて発射された。
琥太郎はその様子をじっくり観察しながら、更に3発程撃ってもらった。
「ありがとう。美澪が妖気弾を撃ち出す時って、構えてる時には既に手の平に妖気が集まっているんだけど、その時点ではそれほど妖気が圧縮されてないんだ。妖気弾を発射する瞬間に、瞬間的に一気に妖気が手の平で圧縮されて発射されてるんだけど、自分でそれってわかる?」
「わかんない。」
「やっぱりそうだよね。じゃあさ、今度は手を構えてる時点で手の平に集まってる妖気を圧縮してみてもらえる?妖気弾はまだ撃たないで圧縮するだけね。」
美澪が再び手を上空に向けて構えた。先程同様に手の平に妖気が集まってはいるが、それほど圧縮はされていない。琥太郎がよく見ると手の平部分で、なんだか不安定に妖気が動いてはいるので、美澪がそれを圧縮しようと思考錯誤している感じはわかる。
「琥太郎、出来てる?」
「ううん、出来てないね。」




