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85_心当たり

 キャビネットの素材を既に1/3ほど燃やされてしまった祟さんは狼狽して、今にも泣きだしてしまいそうになっている。

 琥太郎が更に詳細を聞くべきかどうかを考えながら、風音さんの方を見た。風音さんは、先ほどからの琥太郎の強硬策にいささか戸惑っているようだ。


「わかりました。では、一応今日はこれ以上聞かないでおきます。ただ、滝井さんに確認して、先ほどの情報だけで相手がわからないようであれば、あらためてご質問に伺うかもしれないです。祟さんの事は把握しましたから、逃げたり隠れたりしないでくださいね。祟さんがもしも逃げても、祟さんの「気」を追う位なら出来ますからね。それともちろん、これ以上滝井さんや俺達に危害を加えるような事もやめてください。一応お伝えしておきますけど、燃やせるのは何も素材だけではないですからね。」


 琥太郎がそう言うと、祟さんの右手から炎があがった。


「うわぁっ!」

「もちろん、全身も問題ないですよ。」

「わぁぁぁっ!」


 更に祟さんの全身からうっすらと炎があがる。3秒ほど全身から炎を出したところで琥太郎がその炎を消した。


「今のは祟さんの精気を軽く燃やしてみました。ちょっと疲れた感じになったかもしれないですけど、休めば元気になるはずですから安心してください。ただ、祟さんがまた滝井さんや俺達に変な事をしてくるようであれば、その時は燃やしつくします。精気が燃え尽きたらどうなるかは解りますよね。」

「もう、何もしませんよ。絶対にもうしませんてば。」

「それじゃあ、これで俺達は失礼しますね。」


 一応、祟さんと別れる前に、琥太郎の連絡先だけは伝えておく。

 祟さんの部屋から退出するために琥太郎達がソファから立ち上がり玄関に向かうと、祟さんは心底疲れ切ったように大きくため息を吐いていた。

 祟さんの部屋を出ると、50m程離れた場所で待機していた美澪と滝井さんも琥太郎達に合流した。

 滝井さんへの報告もいろいろあるので、取り合えず車で少し移動して、ファミレスに入る事にした。もう霊気を追う必要はないので、帰りは琥太郎が運転を変わる。ダディは座るスペースが無いので、風音さんは悲しそうにしていたが、いったん術を解いて消えてもらった。


「というわけで、呪いの発信源はプロの呪い屋さんで、取り合えずは滝井さんへの呪いも止めてもらいました。結構強く言っておきましたし、嘘もついていないようでしたので、あの呪い屋さんに再度呪われる事はもうないはずです。」


 ファミレスの席について注文を済ませ、早速滝井さんへ詳細を報告する。


「結構強くですか…、琥太郎先輩、あれは完全に脅迫でしたよ。琥太郎先輩って会社では凄く穏やかで優しくて、怒らない人って感じのイメージだったんですけど、あんなに怖い事をする人だと思いませんでした。」

「いやいや風音さん、それは誤解?じゃない?? 俺だって、友人を傷つけられたらそれは怒るってば。」

「琥太郎さんも風音さんも、美澪さんも、本当にどうもありがとうございました。」


 琥太郎が風音さんに弁明していると、滝井さんが深々と頭を下げてお礼を言ってきた。


「今日会った呪い屋の祟さんはあくまでも依頼を受けて滝井さんの事を呪ってました。それで、依頼主の事も聞いたんですけど、守秘義務があるからって事で詳しくは教えてもらえなかったんですよね。ヒントだけもらってきたんですけど、依頼主は滝井さんのお客さんだった人で、滝井さんにフラれちゃったらしいんですけど、心当たりはあります?」

「えぇっ?! え~っと、う~ん、そうですね、該当する人は1人しかいないです。」


 祟さんのヒントだけで判らなかったらどうしようかと思っていたものの、その心配は無さそうだ。


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