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84_お詫びにすら

「まず、一つ目に関しては問題ありません。そのようにさせていただきます。もう、完全に皆さんには降参しました。お手上げといった状態ですからね。一応確認なのですが、呪いの対象の方はマッサージ師の方でお間違いないですよね。」

「はい、それで間違いありません。」

「これも、間違いがあるといけませんので確認なのですが、対象の方のお名前だけでも仰っていただけませんか。」

滝井真理湖たきい まりこさんです。」

「ありがとうございます。ご指摘されていたとおり、一番右側の壺のターゲットで間違いありません。依頼主へは依頼の失敗を報告するとともに、今後は今回の依頼主からの再依頼だけでなく、滝井様を対象にした依頼を私が受ける事はありません。」


 琥太郎が見る限り、祟さんが嘘をついている様子は無さそうだ。


「では、今は既に呪いの発動は止まっているみたいですけど、一応壺の中身は完全に燃やさせてもらっちゃいますよ。」


ボーッ!


 琥太郎が観察した感じでは、既に呪いを発動する程の霊気は壺の中に残っていなそうだったが、念のため僅かに残っていた霊気と、それを纏っていた壺の中の内容物を全て燃やしてしまった。祟さんも、この壺の中身に関しては既に価値が無くなっていたのか、特に何か言う事も無かった。


「依頼主への失敗の報告というのは問題ないんですか。」


 ここで風音さんが祟さんへ尋ねた。


「はい。依頼を引き受ける際の契約書にも、呪いが失敗する可能性というのは明記してますから、ご納得いただけるかどうかはともかく、契約上は問題ないです。どんなに念入りに準備を行っても、呪いを100%成功させるというのは簡単な事ではないですからね。ただ、こういう事が続いちゃうと、私の信用が無くなっちゃいますよ。」


 これで、取り合えずは滝井さんへの呪いが止まるのは間違いなさそうだ。とはいえ、依頼主の動向がわからないのでは、まだ安心できない。


「では後の2つ、依頼主が誰か、そして依頼してきた理由についても教えてもらえませんか。」

「その依頼主に関する件については、守秘義務の契約もありますし、本当に勘弁してもらえませんか。これを話しちゃうと本当に信用問題になっちゃいますから。」

「う~ん、それでは今後も安心できないじゃないですか。う~ん、仕方ありませんが、何かあるといけませんから、やはりあのキャビネットの中の素材は一応燃やしておく事にしますね。」


 琥太郎がそう言うと、再びキャビネットの右下から炎が上がった。


「うわぁっ、何してるんですか。降参したって言ってるじゃないですか!」


 ソファに座っていた祟さんが慌ててキャビネットに駆け寄り、来ていたジャケットを脱いで炎に被せた。しかし、その程度では琥太郎の炎が消える様子はない。


「あっ、それと、隣の部屋の金庫の中にも何か呪術的な物が入ってますよね。そちらも燃やしておいた方が良さそうな感じですね。」

「やめてください!やめてくださいってば!」


 祟さんが大慌てで部屋の中を駆けまわっている。


「いくらですか。いくら支払えば許してくれるんですか。」


 突然、祟さんがお金の話を始めた。和解金とか示談金といったところだろうか。

 ここでいったん琥太郎がキャビネットの炎を消した。


「お金は結構です。先程から言っているとおり、あとは依頼主と依頼理由の2点さえ教えてもらえれば結構です。」

「だからそれは、守秘義務の契約があるから出来ないんですってば。」

「俺達、ましてや呪いをかけられていた滝井さんには、祟さんの守秘義務契約なんて関係ないですよ。そもそも、祟さんに呪いをかけられて被害を被っていたのに、その呪いをやめるから許してくださいなんて、当然の事をするだけでお詫びにすらなってないじゃないですか。」

「もぉ~、え~っとですね、お客さんです。滝井さんのお客さんだった方です。理由は失恋です。これで勘弁してください。これだけヒントがあればおそらくわかりますよね。これ以上は本当に契約違反になってしまいますから許してください。」


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