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79_居留守

「ダディ、彼女は滝井さん。私達の仲間だから、何かあったら守ってあげてね。優先順位は、滝井さんが1番で、私が2番目でいいよ。」

「いや、風音の安全が最優先だ。」

「う~ん、私は琥太郎先輩と一緒だから、たぶん大丈夫だと思うの。今日は滝井さんが危険にさらされそうだから、何かあったら滝井さんを守ってあげて。」


 風音さんがダディに滝井さんの警護を依頼しているが、ダディはちょっと納得がいかなそうな顔で滝井さんと琥太郎を交互に見ている。

 それにしても、美澪の影響なのか、風音さんからの琥太郎への信頼度が無駄に上がっている気がする。


 これでいよいよ呪いと思われる発信源のアパートに行ってみる事になった。

 ダディはまだ現場に行っておらず場所がわからないので、ダディには車の後部座席に乗ってもらう。代わりに、美澪は現場まで走ってきてもらう事になった。走ってくるとはいっても、コンビニから現場までは200mも離れていない。美澪にしてみれば、ひとっ飛びとは言わないまでも、せいぜい三つ飛び(?)位で到着してしまうだろう。


「美澪だけごめんね。」

「問題ない。車の中で狭い方が嫌。」


 車の中では、後部座席で滝井さんがダディの横に座っている。ダディがあまりにも大きいので、体がダディにひっつきそうになるのを、ドアの方に目一杯詰めて小さくなって避けている。さすがに陰陽術で顕現した式神であるダディに、初対面で体が触れてしまうのは抵抗があるようだ。既に滝井さんは困った顔を通りこして、怯えて少し泣きそうになっている。


「「……失敗したな。ダディに助手席に乗ってもらえばよかった…」」


 琥太郎は座席を代わらなかった事を反省した。しかし、まあ現場はすぐそこなので、滝井さんにはちょっとだけ我慢してもらう事にする。


 表の通りから少し細い通りに入り京王線の踏切を渡ると貸倉庫があった。その前が少し広くなっていたのでそこに車を停めて、すぐ近くにある発信源のアパートまで歩く事にする。車から降りる時点で、滝井さんには不可視の状態になってもらった。


「滝井さん、あのアパートの1Fのあっち側の部屋の窓から滝井さんに向けて霊気が発せられてるんですけど、あの部屋の玄関から相手が顔を出したら、それが誰かというのを確認は出来そうですか。」

「はい、ここからならしっかり見えるので大丈夫です。」

「じゃあ、滝井さんと美澪はここで待っててもらって、俺と風音さんで行ってくるね。美澪も滝井さんの事頼むね。」

「うん。」

「ダディは風音さんと一緒に来てもらおうか。」


 滝井さんがダディに怯えていてちょっと可哀そうなので、ダディは一緒に来てもらう事にする。

 風音さんが作った身代わりの形代は滝井さんに渡して、身に着けておいてもらう事にした。

 琥太郎と風音さんとダディの3人でアパートの玄関まで歩いて移動する。琥太郎が「気」を確認すると、部屋の中には間違いなく1人いるのがわかる。そこでインターホンを鳴らした。


ピンポーン…


 誰も出てこない。


ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン


 続けてインターホンを鳴らしてみるが、やはり誰も出てくる様子がない。部屋の中の気配は動きを止めてじっとしているので、どうやら居留守を使っているようだ。

 部屋の中からは、1人分の人の気配とともに、いくつかの邪悪な霊気が発生しているのを感じる。

 そのうちの1つは間違いなく滝井さんに向けられているものだ。その他には2つほど,、同じように邪悪な霊気を発している何かがあるようだ。


「留守ですかね。」


 小声でたずねてきた風音さんに、琥太郎は首を振りながら答えた。


「いる。」


 琥太郎が玄関の前の床を見つめて何かを考えている。

 風音さんとダディは、それをじっと見ながら、琥太郎が何か言うのを待つ。

 するとすぐに、琥太郎が顔を上げて玄関のドアの方をジッと見た。


「うわぁっ!」


 突然、部屋の中から小さな叫び声が聞こえ、ドタドタと部屋の中を走り回る音が聞こえた。


ドンドンドンッ

「すみませ~んっ」


 琥太郎が、今度はドアを拳骨でノックしながら中の人へと呼びかける。しかし、部屋の中は再び静かになってしまった。


ドンドンドンッ

「す、み、ま、せ~~~んっ」

「うわっ、うわっ、うわぁ~!」


 琥太郎が再度、ノックした後に、少し間延びした感じで中の人へと呼びかけると、先ほどよりも大きな悲鳴が部屋の中から聞こえてきた。しかも、なぜか琥太郎の声に合わせるかのように悲鳴を上げている。


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