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7_化け物

 琥太郎からあまりにも舐め切った事を言われた河童達は当然いきりたった。


「はあっ?」

「この野郎、馬鹿にしやがって!」


 一斉に2人が琥太郎に殴り掛かるが、もちろん琥太郎には届かない。琥太郎を覆っている「気」が彼らのパンチやキックを全て弾いている。琥太郎は遊歩道の真ん中に仁王立ちしたままだ。すると、1匹の河童が懐から鎖鎌を取り出した。もう1匹はどこに隠し持っていたのかもりを手にしている。そして2人同時に鎖鎌と銛で琥太郎を切りつけた。それでももちろん琥太郎には届かない。


「ちっきしょう!」


2匹は手に持っていた武器を近くに投げ捨てると、今度は琥太郎から少し距離をとり、琥太郎に両手の平を向けた。


「おりゃぁ!」

「どりゃぁ!」


ダッダッダッダッダッ…

ダッダッダッダッダッ…


今度は2人一緒に琥太郎に向けて水弾を連射するがやはり琥太郎には当たらない。先程飛んできた水弾は琥太郎を避けて上空で飛散したが、今回は飛散せずに琥太郎の両脇から上空に向けて、それぞれ1列に綺麗に整列して浮遊したまま静止していく。


「ハアハアハア…」

「ハアハアハア…」


ついに河童達の攻撃は止まり、彼らは膝に手をついて肩で息をしている。


「なんか美澪が俺に撃ってきた炎弾と比べると、彼らの水弾ってだいぶ弱いね。」

「はあ?こんなのと一緒にしないでくれる?何度も言うけど、私って結構強いんだよ。琥太郎が強すぎるだけなんだから。」


この河童達の攻撃が普通レベルなのだとしたら、美澪の言うとおり美澪ってかなり強いのかもしれない。まあ確かに、子供の頃から、既に他の妖の子供達と美澪ではあきらかにレベルが違っていた。


「この水弾お返ししとくね。」


そう言うと琥太郎は、両脇から上空に整列させた河童達の水弾を、彼らの足元に撃ち返す。


ズダダダダダダダダダダダッ!


しかし琥太郎が撃ち返すそれは、河童達よりも遥かに威力と連射速度が上だ。


うわぁっ!

ひゃぁっ!


河童達は驚いて後ろに1歩下がると、神田川の柵の手すりに背中を張りつけたまま動けない。

琥太郎は瞬く間に彼らの水弾を全て彼らの足元に撃ち返し終えた。


「おまえらくらいの攻撃なら俺には通じない事が判ってくれたかなぁ。それじゃ後は俺に攻撃してきた罰として、ちょっとお仕置きだよ。」


琥太郎がそう言うと2匹の河童が突然オレンジ色の炎に包まれた。


「熱ちちちち!」

「熱ちちちち!」


叫びながら両手で自分の体の炎をはたいて消そうとしていた河童達だが、すぐに動けなくなり地面に膝をついて、そのままへたり込んでしまった。そこで琥太郎は2匹の炎を消した。


「ちょっ、ちょっとお兄さん、その辺で勘弁してやってくれないかい。」


横で琥太郎達を見ていた妖のお姉さんが、慌てたように琥太郎に頼み込む。


「あっ、はい、大丈夫です。だいぶ手加減はしてるんで。こういうのはかなり久しぶりだから、もし火傷してたりしたらごめんだけど。まあ、だけどそれ位は自業自得だよね。」

「あれくらいなら全然大丈夫だよ。私なんて子供の頃に模擬戦で、何度ももっとこっぴどく琥太郎にやられたんだから。」


彼らの事を気に食わない美澪は、この程度のお仕置きでは物足りなく感じているようだ。

琥太郎はあらためて妖のお姉さんの方を見て、彼らの状態を説明した。


「今の彼らは炎の熱さで動けなくなってるんじゃないんです。俺に攻撃してきた事に対するお仕置きの意味で、炎もある程度熱くはしましたけど。さっきの炎は彼ら自身の妖気を燃やしました。急激に妖気を燃やされて体内の妖気が極端に減ったんで、今は体に力が入らずに動けなくなってる状態です。もちろんもっと炎の温度を上げて体ごと燃やしつくすとかも出来なくはないですけど、そこまでするつもりはないです。しばらく休んで妖気が回復してくれば動けるようになると思います。」

「へぇ、いやいや驚いたね。結界が無くなってただの人間になったかと思ったら、お兄さんはとんでもない化け物だったんだねぇ。」

「えっ、いや、そんな、化け物って…」


小学校入学時に能力を封印されてからは、琥太郎はいたって普通の生活を送ってきた。だから今になって突然化け物呼ばわりされるのには違和感を感じてしまう。しかもそれが妖に言われてしまったとなると、なんとも不本意である。とはいえ、実際に妖2匹を全く寄せ付けずに圧勝してしまう琥太郎の能力は、本物の妖からみても普通じゃないという事だろう。


「「……この能力って、よく考えて使わないと厄介事が増えるかもしれないな。」」


「彼らは大丈夫だと思うんで、俺たちはこれで失礼しますね。」

「ああ、私は関係ないとはいえ、なんだか知り合いが迷惑をかけちまって悪かったね。私は毛倡妓の綾乃あやのっていうんだ。歌舞伎町の外れで妖相手のバーをやってるからさ。機会があればお兄さん達も遊びに来なよ。その時は今日のお詫びをかねてサービスするよ。店の名前は打垂髪うたれがみね。」

「どうもありがとうございます。僕の名前は琥太郎です。それと彼女は美澪です。機会があれば是非伺います。」


美澪も綾乃を見てペコリと頭を下げると、琥太郎と美澪は綾乃達の元を離れて帰路についた。


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