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72_言霊と穴二つ

 風音さんが、急に我に返ったかのような感じでオロオロしていた。

 確かに説明は判りやすかったのだが、なんというか生々しくて、ちょっと怖い感じもする。


「それで、重要なのはここからなんですけど、絶対に実践しないでくださいというのには2つ理由があります。一つはもちろん、他人を呪って害を与える事自体がよくない事だからですね。それと、もう一つの理由というのは、さっき話したように、呪いって返りやすいんです。今説明した悪意のある念を込めて言葉に発するという方法ですが、それによって相手には言霊による霊力的なものが届く事になります。もちろん、込める念の強さによって、相手に届く霊力の強さも変わってきます。だけど、普通はこうした言霊に乗せた一般の人の霊力程度では、なかなか成功はしないんです。相手の方の気力や活力によって、悪意のある霊気が少々飛んできたところで、自然と跳ね返されちゃうんです。すると、跳ね返された呪いというのは、呪いを発した本人に返ってきちゃうんですよね。それによって、発した言葉どおり死んじゃったりはしないまでも、怪我をしたり体調を崩したりといった事に繋がります。もちろん、跳ね返って戻ってきた呪い自体が大して強くなくて、大した影響も出ないまま呪い自体が消滅しちゃう事もあったりはします。それでも基本的には、呪いを発した本人は、返ってきた呪いの影響を受けやすいって言われてます。更に、仮に呪いが相手に届いて、相手に何かしらかの呪いの効果が出た場合でも、その呪いが更に跳ね返ってきてしまうという事も頻繁にあります。「人を呪わば穴二つ」って言葉もありますよね。あれは、呪った相手が死んでしまった時用の墓穴と、更にその呪いが跳ね返ってきて自分自身も死んでしまった時用の2つの穴を掘る必要があるという意味なのですが、昔からこうした呪いの作用と反作用は広く知られている事がわかりますよね。」


「なるほど。諺にもある位だし、実際そういうものなんだね。まあ確かに、そんなに簡単に呪いが成立しちゃったら、世の中呪いだらけになっていそうだもんなぁ…」


 滝井さんと美澪も、風音さんの話を真剣な顔で聞いていた。


「呪いを簡単に説明するとこんな感じなんですけど、もう一つ違うパターンというか、呪いの種別みたいなもので、既に死んでしまった霊が呪っているという事もありますね。これは、生前に強い恨みを残して亡くなった方が成仏出来ずに現生に残って、恨んでいる相手や、八つ当たりで特定の条件にある誰か、もしくは手当たり次第いに誰でもといった感じで呪うというものです。成仏できない程に強い怨念を残して亡くなっているので、そこから発せられる呪いもかなり強いものになる場合が多いです。呪いの元が霊の場合であっても、呪いが返りやすいという事には変わりはないのですが、強い怨念なので一般の人では返しきれずに影響が出ちゃう場合が多いです。こうした霊の除霊の依頼なんかも、陰陽師のお仕事をしていると結構あるみたいですね。」

「妖による呪いってないの?」


 ここで、ちょっと疑問に思ったので美澪に聞いてみた。


「今風音が説明したような、特定の人を対象にした呪いというのは、私は聞いた事がない。不特定多数を相手に、似たような事をする話は聞いた事があるけど、そういうのは呪いというよりも祟りって呼ばれてると思う。」

「そうですね。私も祟りの話は秋田にいた頃に何度か聞いた事があります。」


 美澪の回答に、滝井さんも同意していた。


「なるほど祟りか。なんか呪いとの違いが微妙で難しいね。ところで、滝井さんの場合は人と霊のどっちが呪ってそうなの?」

「まだわからないです。ただ、結構以前から呪いの影響が滝井さんに現れているようななので、ある程度強い呪いであるのは間違いないと思います。」

「じゃあ、もしも存命中の人からの呪いだったとしたら、その呪ってる人にも影響が出てるって事?」


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