70_呪い
美澪が一瞬呟いたが、滝井さんは蛟という妖のようだ。
「風音さんの家って、陰陽師なんですよ。風音さんは陰陽師ではないんですけど、陰陽師の修行をしていた事があるんです。というか、今も修行はしてるのか。だから俺よりもこういう事に関して詳しいだろうと思って、お願いして一緒に来てもらっちゃいました。だけど俺が突然陰陽師の関係者と現れたら滝井さんも不安に思うだろうと思って、一緒に住んでる美澪にもきてもらいました。風音さんは妖だからって害をなすような事はないんで、安心してください。」
「なんだか気を使ってくれて、ありがとうございます。風音さんと美澪さんも、わざわざ時間を取ってくれて、どうもありがとうございます。」
それから、少し歩いてファミリーレストランへと移動した。移動中、滝井さんは陰陽師と聞いて警戒しているのか、それとも単に緊張しているだけなのかはわからないが、いつもより若干口数が減っている感じではあった。まあ、突然このような状況になってしまえば、それもいた仕方ないだろう。
滝井さんはマッサージの施術室に置いてあった石を持参していたので、今は邪悪な霊気はほとんどそちらに流れている。それにしても、やはりこの霊気はかなり遠くから流れてきているようだが、いったいどこから来てるのだろう。
ファミレスの席に着いて、風音さんにも滝井さんが持参してきた石を見てもらった。
「滝井さんの状況を、風音さんとか、うちの同居人の幽霊さんにも伝えてみたんだけど、2人とも呪いなのではないかって事だったんです。」
「えっ、琥太郎先輩、美澪だけじゃなくて霊とも一緒に暮らしてるんですか?」
風音さんが、なかば呆れた感じで聞いてきた。
「あっ、そうか。風音さんにもその事って伝えてなかったか。うん、まあ、そんな感じかなあ。」
「なんていうか、琥太郎先輩って本当に無茶苦茶ですね。私、陰陽師の家で育って、割と普通じゃない人たちを結構見てきたつもりでいましたけど、琥太郎先輩ってやっぱり特別ですよ。」
「そんな事無いってば。本当に普通に生活してるだけだから。」
「それは普通って言わないです。そんな人、私聞いた事もないです。あっ、一人だけいるかも。平安時代の安倍晴明さんて、そんな感じだったのかも。」
「何を突然、そんな恐れ多い事言ってるの。本当にそんなたいそうな事してないんだってば。まあとにかく、それは今日は置いておいて、実際に滝井さんに会ってみて、滝井さんの状況ってどんな感じかわかる?」
風音さんは、それでもちょっと納得いってなさそうな感じだ。滝井さんは、この琥太郎と風音さんのやり取りを興味深そうに見ている。
「う~ん、確かに琥太郎先輩の言うとおり、すごく嫌な感じの「気」が流れてくる感じはします。見ただけだと、それがいわゆる呪いかどうか判別するのは難しいんですけど、状況を考えると、やっぱり呪いと考えるのが一番しっくりきますね。」
「なんか対処する方法ってあるの?」
「呪いに対する陰陽術というのはあります。陰陽術というのが、もともと暦作りと合わせて、占いとか呪いを請け負いながら発展してきたものなので、呪いに関していえば、陰陽師は専門家といって間違いないと思います。もちろん、私は陰陽師にはなれなかったので、呪いに対する陰陽術に関してもごく一部しか把握は出来ていないんですけど…。私が把握している中で、一般的な対応方法だと、まず呪いをかけられていそうな人の髪の毛とか爪といった体の一部を媒介にした形代を使って、その呪いの対象を形代に移してしまいます。その上で、形代を分析したり、形代を処分して呪いの対象が消滅した状態にしたり、呪いを返したりなど、様々な対応をしていく感じです。形代に対象を移す事で、何をするにしても、もともと呪われてた人の危険が減りますし、いろいろと操作もしやすくなるんですよね。」
「じゃあ、取り合えず滝井さんに流れてきている霊気も、今みたいな方法で形代に移してしまえばいいって事?」




