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67_邪悪な霊気

 その後、いつものように施術用のベッドに横になって、滝井さんにマッサージしてもらう。全身筋肉痛がひどい琥太郎にはもちろんそれが気持ち良いのだが、どうもいつも程効いてる感じがしない。

 施術されながら滝井さんの様子を観察してみると、どうも滝井さんが疲れているように見える。目の下にも、明らかなクマが出来ている。


「滝井さんもちょっとお疲れじゃないですか。」

「そうなんですよ。ここ最近、なんか疲れちゃって。日中、仕事中はそれほどでもないんですけど、夜家に帰るとドッと疲れを感じちゃうんですよね。」


 そんな会話を交わしながら、更にじっくりと観察してみる。すると、滝井さんの手からうっすらと妖気が発せられているのが感じられた。それは本当に弱い上に、琥太郎が纏っている「気」によって琥太郎に直接届く事もなかったため、すぐには気づけなかった。しかし、その妖気からは、悪意や邪悪な感じは受けない。むしろ、たまに見かける神様の神気のような、ちょっと神聖な感じに近いようにさえ思える。

 琥太郎は、滝井さんの手から発せられている妖気に悪い感じがしなかったので、試しに自身の「気」を弱めてみた。それにより滝井さんの発する妖気がうっすらと琥太郎に届くと、それはとても暖かく心地良い感触だった。


「「……あっ、これだ。これ、滝井さんのいつもの心地良いマッサージの感触だ…」」


 滝井さんのマッサージが心地よくて効果的に感じられていたのは、手技が素晴らしいだけでなく、どうやらこの妖気の効果もあったようだ。琥太郎も、こんな妖気の使い方は始めて見た。

 それから更に観察を続けてみると、今度は室内にうっすらと邪悪な霊気が漂っている事に気がついた。邪悪な霊気が室内をゆっくり流れていて、部屋の隅にある小さな神棚のようなところに置かれている、ソフトボール程の大きさの石に吸い込まれている。しかしその霊気は僅かに滝井さんにも届いていて、滝井さんの中にも入っていっているようだ。


「「……う〜ん、絶対に良くない感じの霊気だけど、いったい何なんだろう…」」


その後も、状況が掴めずにモヤモヤとした気分でマッサージを受けていたら、時間になってしまった。


「琥太郎さん、今日はなんだかずっと難しい顔してましたけど、あんまり気持ちよくなかったですか?」

「えっ、いえ、そんな事ないです。マッサージは凄く気持ち良かったですよ。滝井さんのマッサージって、その場だけでなく終わってからも本当に疲れが取れた感じになるから大好きなんですよね。ただ、今日はちょっと気になる事があって考え事をしちゃってて、なんかかえってすみません。」


 そんな会話をしながら会計を済ませて、琥太郎がお店を出ると、滝井さんも外まで見送りに出てきてくれた。すると、お店の中で見た邪悪な霊気がお店の外のどこからか漂ってきていて、一気に滝井さんに集まり滝井さんの身体に入っていく。


「えっ?!」

「えっ、何?どうしました??」


 思わず声を出してしまった琥太郎に、滝井さんも驚いている。

 とにかく、今目の前で滝井さんに集まっていく霊気は絶対に良くないもののはずなので、その場しのぎではあるが、滝井さんに触れないように琥太郎が散らしていく。


「滝井さん、施術室に神棚みたいなのがあって、そこに石が置いてあったじゃないですか。あれって何ですか。」

「石?? あぁ、あれは…、う~ん、何っていうかお守りみたいな感じかなぁ。」

「ちょっと、あの石を外に持ってきてもらう事って出来ませんか?」

「えっ、大丈夫ですけど。ちょっと待っててくださいね。」


 滝井さんは施術室に戻ると、すぐに先ほどの石を持って戻ってきてくれた。すると、お店の外のどこからか漂ってくる邪悪な霊気は、滝井さんが持ってきてくれた石の方に集まって入っていった。


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