65_ネーミングセンス
流伽のお土産ではあるが、一応みんなで食べられるように、少し多めに買う事にする。
ビワ味の田舎ママビスケット
あさりバター味のポテトチップス
バカ最中
3つ目のバカ最中は、舌を出した2枚貝の形をしている最中だった。
余談だが、バカ貝という貝を知っているだろうか。東京では青柳という名前で流通している。しかし、琥太郎の地元ではバカ貝と呼ばれている貝で、スーパーでもパックのシールにはバカ貝と記載されて売られている。いつもデロンっと舌を出していて、見た目がバカっぽいからバカ貝という名前なんだと、子供の頃に琥太郎の父親も言っていた。琥太郎もバカ貝の剥き身の刺身などは好きなのだが、東京ではバカ貝という名を目にする事がない。そのため、バカ貝の最中を見たら、なんだか懐かしくなって購入してしまった。
更に余談なのだが、隣街の木更津駅から、君津の城下町である久留里を経由して山奥の上総亀山駅というところまで走っている久留里線というローカル線がある。正式名称は久留里線なのだが、地元では久留里線と呼ぶ人はほとんどいない。老若男女すべて、本当におじいちゃんおばあちゃんに至るまで皆パー線と呼んでいる。琥太郎の両親が子供だった頃から既に、皆パー線と呼んでいたらしい。琥太郎の高校の同級生にも、このパー線を使って通学している生徒が結構いた。君津に住んでいた頃は当然のように皆がパー線と呼んでいたので、特にその名前に疑問を持つ事も無かったのだが、琥太郎は東京に出てきた後に、このパー線の名前の由来を知った。その名前の由来だが、
◇久留里線
久留里
↓
くるくるパー
↓
パー線
ということらしい。久留里がくるくるパーとなるのは単なる語感とか語呂。
あまりにも酷い…
バカ貝のネーミングもそうだが、このあたりの昔の人のネーミングセンスは、ちょっと歪んでいたのかもしれない。
帰りの高速バスの車中で流伽にメールを送ったところ、夕飯の希望を聞いてきた。美澪と相談してカレーをリクエストしたところ、すぐに材料の購入リストが送られてきた。
肉300g位(鶏、豚、牛なんでもいいよ。)
じゃがいも
サラダ用の野菜を適当に
自宅の最寄りの初台駅を降りて、途中にあるスーパーのボンガボンガで指定された食材を購入して帰る。時間が経つごとに筋肉痛は酷くなるようで、駅から自宅へと向かう琥太郎の歩き方は既にヨタヨタだ。
「琥太郎、情けない。」
ちなみにボンガボンガでは、以前乏神に取り憑かれていた五岡さんは今日は休みのようだった。
帰宅すると、流伽がすぐに夕飯の用意に取り掛かってくれた。
待っている間に美澪にマッサージをお願いしたのだが、10分位ですぐに飽きてしまったようで、その後はPCを立ち上げ格闘ゲームを始めてしまった。仕方なく、琥太郎はストレッチしながら待っていた。
しかし、流伽は料理の手際が本当に良い。流伽から頼まれた食材は少ししか無かったが、家に残っていたカレールーと、ニンジンや玉ねぎを使ってどんどん料理を作っていく。結局40分ほどで、食卓にはカレーとサラダだけでなく結構な品数の料理が並んでいた。
豚肉のカレー
サラダ
玉ねぎとカリカリ豚肉のマリネ
ザーサイ風のブロッコリーの芯
味噌汁
残った食材は綺麗にラップして冷蔵庫に整理して入れられているし、ブロッコリーは芯まで美味しく料理されている。めちゃめちゃいい奥さんになりそうなのに、いかんせん、既にお亡くなりになっているというところが惜しまれる。美澪も素直に美味しいといいながら流伽の料理を食べていた。
「流伽ありがとう。めちゃめちゃ美味しいよ。俺、特にこのカリカリの豚肉のマリネみたいなの超好き。」
「ありがとう。喜んでもらえて私も嬉しいよ。結構長い事、誰かに料理を作ってあげるなんて出来なかったからね。」
夕飯を終えて片づけた後、お土産で買ってきたお菓子を開けたのだが、流伽はバカ最中を見て爆笑していた。絶妙な塩梅でリアルな感じがツボだったようだ。
その後、琥太郎が筋肉痛で苦しんでいるのを見て、流伽がお土産のお菓子を食べながらマッサージしてくれた。琥太郎は、夕飯の片づけも筋肉痛を理由に「座ってていいよ」と言われて、ほとんどしなかったのだが、上げ膳据え膳の上に、食後のマッサージまでしてもらって、なんだか流石に恐縮してしまう。
「「はぁ…、明日久しぶりにマッサージにでも行ってこようかなぁ。」」




