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61_焼き鳥

 今朝の爺ちゃんの突きを琥太郎は、「気」で受け止めるように防御していた。その際に、突きの感触をしっかりと感じ取れるように、強度の調節も行った。その時の突きの感触は、「気」の防御を真っすぐに突き抜けて衝撃が直接刺さってくるような、そんな感覚だった。

 突きを放つ時の爺ちゃんをよく観察したところ、突きの初動の動き出しの瞬間、爺ちゃんの後ろ側に置いている足の裏と地面の間で、突然「気」の塊のようなものが小さく爆発するかのように発生していた。それは決して妖特有の妖気などではなく、むしろ人と同じ「気」のようなもので間違いなかった。そして、その「気」の塊のようなものは瞬時に爺ちゃんの足を通って、腰から肩に移動し、打ち出される爺ちゃんの拳と一緒に琥太郎の「気」の防御へとぶつけられていた。その爺ちゃんの足の裏で生まれた「気」の塊のようなものが、足、腰、肩、拳へと移動する動きの軌道は、不思議と綺麗な直線のように見えていた。


「「……う~ん、あれって間違いなく妖気ではなかったもんなぁ。やっぱりあれが徑ってやつなのかなぁ。…」


 琥太郎はしばらくの間、今朝の爺ちゃんの突きの事を思い出しながら、その理屈やメカニズムをあれこれ考えていたのが、しばらくすると琥太郎も眠りに落ちていた。


「お~い、お主らも寝ておったか。儂はちょいと小糸こいとの里まで出かけてくるぞ。」

「えっ、あっ、爺ちゃん。うん、いってらっしゃい。」


 お昼近くになって、美澪の部屋に顔を出した十兵衛爺ちゃんの声で、琥太郎達も目を覚ました。すぐ近くを流れる小糸川流域だけで生産されている在来種の大豆を使った豆腐や厚揚げを買ってきてくれるらしい。普段は東京に住んでいる琥太郎へのもてなしのようだ。大豆の名前は小糸在来こいとざいらいというベタな名前で、もともとこのあたりで昔から作られていた品種だそうだ。琥太郎が中学生位の頃から突然、君津市が地元の特産品扱いでプッシュし始めたので、琥太郎も何度か食べた事はある。正直、他の普通の大豆との味の違いはよくわからない。しかし、君津を離れて長い琥太郎には、これも嬉しい気遣いだ。


「琥太郎、お昼ご飯どうする?」

「う~ん、まだそんなにお腹すいてないかなぁ。」

「私も。」

「あっ、そうだ、この家って湿布薬とかあるの?」

「無いと思う。」

「じゃあ、爺ちゃんがちょっと腰痛そうだったし、買ってきてあげようか。」

「うん。」


 市街の薬局に向かうため外に出ると、外は晴天だった。既に秋に入ったとはいえ、9月の日差しはまだまだ強く、日中は今日も30度を超えていそうだ。


「うわっ、外は暑いな…」


 睡蓮堰の横を通ると、今日も清吉が反対岸に顔を出しており、向こうも琥太郎達に気づいたようだ。


「おーい琥太郎、美澪! また今夜なっ!」


 清吉はそれだけ言うと、こちらの返事は待たずにトポンッと水に潜ってしまった。


「えっ、また今夜って言ってたけど、今夜もまた来るって事かな?」

「そうだと思うよ。そういえば昨日の夜にも、そんな事言ってた。」


 どうやら今夜もまた宴会になるらしい。十兵衛爺ちゃんは知ってるのだろうか。


「それじゃあ、昨晩はみんなにご馳走になっちゃってるから、今日はちょっとツマミでも買って帰ろう。」

「そんなの気にしなくて平気だよ。」

「え~、ご馳走になってばかりじゃ、やっぱりちょっと気になるよ。」


 美澪は気にするなと言うが、やはり一方的にご馳走になりっぱなしというのでは、ちょっと心苦しい。湿布薬を購入するついでに、ツマミ類も調達して帰る事にした。

 ドラッグストアで湿布薬と軟膏を購入してから生鮮ストアに向かう。すると、生鮮ストアの入り口横ではキッチンカーで焼き鳥が売られていた。


「うわぁ、いい匂い。」

「琥太郎、お腹減った。」

「これは我慢出来ないね。」


 ちょうどいいので、夜用にお刺身の盛り合わせと、このキッチンカーの焼き鳥も買って帰る事にする。ついでに、自分達の分の焼き鳥も別で購入して、食べながら歩いて帰る事にした。

 市街地からは、小糸川を渡ってしまえばすぐに田んぼ道で人通りもほとんど無い。ここなら姿の見えない美澪と一緒に食べ歩きをしていても問題ないだろう。


「美味い!」

「やっぱり肉だね。」


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