55_三大妖怪
直七の掛け声とともに、ふたたび3人の子供達が琥太郎に向かって突進してきた。同時に、先程同様に豆吉を先頭に小春、直七の順番に編隊する。直後に2列目の小春の髪の毛が琥太郎の顔に向かって伸びてくる。前回は髪の毛を10数束に纏めて槍のように突いてきたが、今回は髪の毛を束ねずに、バラバラのまま琥太郎の顔を包むように伸びてきた。先程の攻撃は琥太郎に弾かれてしまったため、今回は直接攻撃するというよりは、琥太郎の視界を塞ぐ事を優先するようだ。
次に先頭で向かってきていた豆吉が、琥太郎の足元に飛び込む直前に妖術を使い、琥太郎の足元の地面を粘着力のある床へと変化させてから足元へと入ってきた。粘着力のある床は、豆吉自身には影響しないようになっているらしい。先程は泥状に変化させたが琥太郎には効果が無かったため、豆吉も攻撃を変化させてきたようだ。
そこで視界を小春の髪の毛で塞がれた琥太郎が、最後尾で小春の背後から迫ってきている直七を「気」の感覚で捉えると、直七は先程同様に頭を上空に飛ばしつつも、胴体は琥太郎の3m程手前で立ち止まっていた。そして、琥太郎に向けて構えている両手には、妖気が圧縮されて溜められているようだ。こちらも先ほど直接の打撃を防がれたため、妖気による攻撃に変更してきたようだ。
「フフッ、考えてるね。」
子供達の攻撃を見て感じ取った琥太郎が一瞬微笑んだ。
琥太郎は足元に飛び込んできていた豆吉の肩に足をかけて豆吉を乗り越えた。これにより豆吉は前につんのめり膝をついてしまう。「気」による防御によって、琥太郎には粘着質の床も関係ない。
「僕を踏み台にしたぁ!?」
ここで、琥太郎は頭部を包むように伸びてきていた小春の髪の毛を「気」の操作によって全て掌握し、上空から琥太郎に向けて妖気弾を打ち出そうとしていた直七の頭をそのまま髪の毛で絡め取った。更にそのまま直七の頭を重りにして小春の髪の毛を使い大きく振り回すと、背後の足元で膝をついていた豆吉と、更には後方から琥太郎に向けて大きく溜めた妖気を打ち出そうとしていた直七の胴体までもを絡めとる。そしてそのまま小春の胴体ごと一纏めに巻き取って、全員を動けなくしてしまった。
「「「うわぁ~!!!」」」
「そこまで!」
道場の真ん中で身動きが取れなくなって叫んでいる3人の前で琥太郎が残心の構えを取ったところで、十兵衛爺ちゃんから勝負ありの声がかかった。
パチパチパチパチ…
後ろでは、観戦していた清吉、助松、分六、紬の幼馴染達が、何故だか笑いながら拍手している。
「おう、お前ら、すっげぇいい連携してんじゃねぇか。」
「うん、あの連携は良かったね。ちゃんと役割が考えられてたし、しっかり嚙み合ってた。」
「あんた達、普段から仲がいいもんね。息もぴったりだったよ。」
観戦していた琥太郎の幼馴染達が、子供達の連携をベタ褒めだ。確かに琥太郎も、先ほどの攻撃は1回目も2回目もよく考えられていた上にしっかりと連携も取れていたので、ちょっと驚かされていた。しかし、当の子供達は納得いってないようだ。
「だけど、琥太郎には全く通じなかったぞ。」
「僕達3人がかりなのに、まだまだ余裕そうだった。」
「琥太郎って全然強く見えないのに、なんか自信無くすよ。」
拗ねた様子で呟いている子供達に、河童の清吉が声をかけた。
「ははははは。お前らなぁ、琥太郎は正真正銘本物の化け物だって言ってんだろ。それこそ、人間が言ってる三大妖怪さんでも連れてこなきゃ勝負にならねぇんじゃないか?」
「はぁ?流石にそんなに強いわけないだろ。」
未だにちょっと納得がいっていない様子の直七が反論する。
人間が三大妖怪と呼んでいる、玉藻前、大嶽丸、酒吞童子の3名(?)は、妖界でも有名人(??)のようだ。
「琥太郎は酒呑童子にも模擬戦で勝ってたよ。」
「「「「「 ええぇっ!!!!! 」」」」」




