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54_連携

 3人横並びに立った子供達と向かい合う琥太郎との間に、十兵衛爺ちゃんが立った。


「武術、妖気を使った攻撃や防御など、基本的には何を使ってもよいが、武器の使用希望はあるか?」

「俺はこのまま何も無しでいいからさ。みんなは何か使いたかったら何を使ってもいいからね。」

「はぁ? くっそぉ~、本当に俺達の事舐めてんな。俺達だってこのままでいいよな?」

「うん、僕はこのままでいいよ。」

「私も武器はいらない。武器の練習なんてしてないし、3人で連携するなら無い方がいい。」


 道場の端で琥太郎と子供達とのやり取りを見ている清吉達は、それを見ながら楽しそうにニコニコしている。


「なんか昔を思い出すよなぁ。」

「ああ、俺達で必死に作戦立てて、いろんな搦め手とか、完全に卑怯な手段とかまで使って挑んだけど、何をしたって琥太郎には全く歯が立たなかったもんな。」、

「未だに琥太郎ほどの化け物なんて、人間はもちろん妖でも出会った事ないよ。」


 琥太郎と子供達、どちらもルールに異論が無いという事で、十兵衛爺ちゃんが数歩後ろに下がった。


「では、よいな。 始め!」


 十兵衛爺ちゃんの掛け声とともに、子供達が一斉に琥太郎へと向かって突進してきた。

 開始時には3人横並びだったが、突進しながら縦1列へと並びを変えてくる。

 先頭に豆腐小僧の豆吉。

 2番目に針女の小春。

 その後ろに犬神の直七がいる。

 すると、2番目についている小春が自身の髪の毛を複数に束ねて、琥太郎の顔面へ向けて鞭のように鋭く伸ばしてきた。髪の毛とはいっても、束ねられた髪の毛の先端は鋭利な槍のように尖っており、返しまでついている。もしも生身の人間がこれを食らえば確実に死んでしまうだろう。琥太郎はこれをボクシングで言うダッキングやウィービングの動きで躱していく。しかし、全部で10本以上ある小春の束ねられた髪の毛の槍は、琥太郎に躱されても、またすぐに琥太郎の顔面へ向かってくる。これらは全て琥太郎の目を狙っているようだ。

 琥太郎が上半身の動きで小春の攻撃を躱していると、豆吉が足元へと入ってきた。武道の組手の練習でも見せていたとおり、抜群のバランス感覚と重心移動で、琥太郎の足を掬いにくる。更に、豆吉が妖術を使い、足元の砂を柔らかくて深い泥のように変質させた。地面に踏ん張っていた琥太郎の足が、その泥に埋まり足を取られそうになる。その直後、今度は右拳を思いっきり後ろに振りかぶった直七の身体が突っ込んできた。しかも、突っ込んできたのは胴体だけで、頭は胴体から切り離れ、琥太郎の頭上へと飛んできている。直七の胴体が走りこんでくる勢いそのままに振りかぶった右拳でパンチを放ってくるのと同時に、上空の頭は琥太郎へと口から妖気弾を放ってきた。


「おぉ、うまいな…」


 それを見て感じ取った琥太郎が、一瞬笑みを浮かべながら呟いた。

 小春が視界を塞ぎ、豆吉が足元を掬う。そこへ直七が正面と頭上から同時に攻撃する。よく考えられた攻撃であり、その連携も見事だ。

 しかし、琥太郎は仮に目を塞がれたとしても「気」を感じ取る事で他の攻撃や動きは全て把握出来てしまう。いくら豆吉の足技が上手かろうと、「気」を通して動きが伝わってきていれば、それに対応するのも容易だ。更に突然足場がぬかるんだところで、「気」の操作で地面を固める事も出来れば、「気」の上に立つ事だって可能だ。同様に直七の動きも常に感じ取れているので問題無い。仮に動きが見えていなかったとしても、「気」による防御によってどんな攻撃も琥太郎には当たらないだろう。

 琥太郎は足元に入ってきていた豆吉を逆に足払いで泥の中に顔から倒してしまう。

 次に、顔面に向けて攻撃してきていた小春の髪の毛を左手で掴みつつ、頭上に迫ってきていた直七の頭も右手で捉えた。そして、掴まれた髪の毛を引き戻そうと踏ん張っていた小春めがけて直七の頭をぶん投げる。

 鳩尾のあたりに直七の頭が飛んできた小春は、受け止めきれずに後ろに吹っ飛ばされて転がってしまった。

 小春に投げつけられた直七の頭も、砂の地面を転がっていく。

 そして琥太郎は、前に立っていた直七の身体の足を払い、既に倒れている豆吉の上に倒してしまった。


「ははははは、こうなるんだよなぁ。」

「うん、なんか懐かしくなるね。昔の私達もこんな感じでいつもやられてたもんね。。」

「だけど、あいつらもなかなか頑張ったんじゃないか。今のはいい連携に見えたぞ。」


 幼馴染の助松、分六、紬は倒された子供達を見て感慨深そうだ。


「くっそぉ。まだだ、まだやれるぞ。豆吉、小春、まだいけるよな。」

「うん。」

「私もまだやれる。」


 すぐに立ち上がった3人の子供達が、最初の位置にもう一度並んで立った。


「よし、いくぞ!」


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