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53_クレープ

 清吉に続いて入ってきたのは、琥太郎が子供の頃に十兵衛爺ちゃんの道場で一緒に稽古をしていた幼馴染の妖達だった。

 河童の清吉の他は、

すねこすりの助松すけまつ

豆狸の分六ぶんろく

さら蛇のつむぎ

だ。


「うわっぁ~、助松、文六、紬、みんな元気にしてた?懐かしいなぁ。」

「おう琥太郎、俺達は変わらず元気に決まってるだろ。それよりも琥太郎は元に戻ったんだなぁ。」

「もう琥太郎とはこのまま話す事すら出来ないのかと思ってたぞ。」

「美澪が治して連れてきたの? さすが美澪ね。」


 皆、道場で一緒に稽古しただけでなく、琥太郎が幼稚園から帰った後や週末などに、頻繁に一緒に遊んでいた妖達だ。幼い頃は人間の友達がいなかった琥太郎にとって、数少ない幼馴染の友人達と呼べるだろう。


「美澪が治してくれたというか、俺に施されてた封印が既に弱ってきてたみたいなんだけど、最後に壊れるきっかけになってくれたって感じかなぁ。みんなには心配かけてごめんね。それに、その封印のせいで、俺に近づいたらめちゃめちゃ不快な思いをさせちゃってたみたいだし、本当になんだか申し訳ないよ。」

「一度だけ琥太郎を見かけて近づいた事があったんだけどよぉ、確かにあれはえげつなかったぜ。ちょっと近づいただけで頭痛はするは吐き気はするはで、とても近くに行ける感じじゃなかったからなぁ。」

「私も琥太郎に近づいてみた事があったけど、強烈な吐き気に襲われてすぐに逃げ出しちゃった。」

「俺はみんなからその話を聞いてたからさ、近づかないで遠くから叫んだり、琥太郎の足元に妖気を打ち込んでみたりしたんだよ。だけど琥太郎は全く気が付いてくれなかったんだよね。妖気弾なんて琥太郎に届く前に結界に弾かれちゃってたしね。」


 琥太郎のその能力を封印するために、両親と祖父の繁蔵に連れられて神主さんを訪れていた頃、琥太郎はまだ自分自身が何をされるのかよくわかっていなかった。そのため、睡蓮堰の里のみんなには挨拶や事情説明など何も出来ないままお別れとなってしまっていた。その事を琥太郎はこれまでずっととても残念に感じていた。今こうして里のみんなと再会する事が出来て、昔のようにまた普通に話す事が出来るようになった事が、琥太郎には本当に嬉しく感じられた。


「ところで琥太郎、こうしてまた普通に俺達の事が見えるようになって、子供の頃のように話も出来るようになったみたいだけど、あの頃の無茶苦茶な能力も元通り使えるようになってるのか?」


 助松が琥太郎の能力の事を聞いてきた。


「そうだね、その辺も昔のとおりだと思う。」

「琥太郎は変わらずめちゃめちゃ強かったよ。今の私が全力で挑んでも、全くかなわなかったもん。体が成長した分、昔以上に強くなってるんじゃない?」

「はあ?!今の美澪でもかなわねえのか。久しぶりに琥太郎の能力も見てみたいなんて思ってたけど、今の美澪が全くかなわないとなると、俺じゃ模擬戦なんて全く無理だなあ。」

「ちょうど今から琥太郎が子供達と何でもありで模擬戦するよ。」

「何?!、なんだお前ら、琥太郎に相手してもらうのか? わはははは、そりゃぁ面白そうだな。」


 琥太郎には今の美澪ですら全くかなわないというのを聞いて自身が模擬戦をする事には躊躇した様子の清吉だが、子供達が相手とはいえ琥太郎の模擬戦を見れるという事で嬉しそうだ。


「あんた達、良かったじゃない。琥太郎みたいな人間と模擬戦なんてそうそう出来るもんじゃないよ。」

「おうお前ら、遠慮して出し惜しみなんてすんじゃねえぞ。琥太郎は正真正銘の本物の化け物だからな。お前ら程度が何使ったって問題ねえから全力でいけよ。」


「「……なんか以前にもどこかで化け物呼ばわりされた事があったような気がするんだけど・・・。やっぱり妖から化け物って呼ばれるのって、なんだかなぁ…」」


 一応人間としての自覚がある琥太郎にとって、妖から化け物呼ばわりされてしまうのはちょっと心外だ。


「みんなああ言ってるから、最初から私達の必殺技を使っちゃっていいんじゃない?」

「ああ、俺達子供だからって、なんだか舐められてるよな。ちょっと位怪我させたって構わねえよ。おじさん達だってああ言ってんだから、気にせず使っちまおうぜ。」

「絶対クレープ食べたい。」

「まだおじさんじゃねえっつってんだろ!」


 おじさん呼ばわりされた清吉達が横で憤慨している。

 子供達は美澪が連れてきた人間の琥太郎に対して、自分達が必殺技を使い怪我をさせてしまう事を心配していたようだ。しかし、周りの大人達の言葉もあり、完全に遠慮は無くなった。


「よし、じゃあ始めるぞ。」


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