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51_爺ちゃんと子供達

「人間?」

「えっ、なんで人間がここに入ってきてるんだ。」

「美澪姉ちゃんが人間を連れてきたの?」


 稽古中の子供達が、人間である琥太郎が道場に入ってきた事に気が付いて驚いている。


「あんた達にも何度か話した事があるでしょ。私とか清吉が子供の時にここで一緒に稽古してた人間の琥太郎だよ。めちゃめちゃ強いんだからね。」

「なんかあんまり強そうに見えねぇぞ。」

「なんか俺でも勝てそう。」

「あっ、その人が美澪姉ちゃんが結婚するって言ってた人?」


 子供達が稽古を中断して、少し遠巻きに琥太郎達のまわりにやってくる。


「今の私だって琥太郎には全く敵わないよ。」

「えぇ~、嘘だぁ。」

「美澪姉ちゃんより強い人間なんているわけないだろ。」

「う~ん、私にも強そうに見えない。」


 どうやら、琥太郎の物腰柔らかそうな見た目は、妖の子供達には弱そうに映るようだ。反対に、美澪に関してはめちゃめちゃ強い妖であるという認識らしい。


「琥太郎、どうじゃ元気にしておったか。市街地の方に行った際に、何度かお主を見かけた事もあったのじゃが、お主には儂が全く見えていなかったようじゃからのう。」


 道場の奥で子供達の稽古を見守っていた十兵衛爺ちゃんも、琥太郎達の方へとやってきた。


「うん、小学校にあがる前から、十兵衛爺ちゃんだけじゃなく、妖の事は全部見えなくなっちゃってたからね。先月美澪がうちに来た時に、俺の中に張られていた結界が壊れたみたいで、また前みたいに見えるようになったんだ。この睡蓮堰の里のみんなにも心配かけちゃってたみたいでごめんなさい。妖のみんなの事は見えなくなっちゃってたけど、俺自身は元気でやってたよ。だけど、俺の結界のせいで、俺に近づくと不快な思いもさせちゃってたみたいだし、なんかいろいろごめんなさい。」

「それはお主のせいではなかろう。そんな事は気にせんでいい。それよりも、たしかに今はこんなにお主に近づいてもなんともなくなっておるな。」

「ほらね、爺ちゃん、私の言ったとおり琥太郎は元に戻ったでしょ。それに、今でも琥太郎は私よりもずっとずっと強かったよ。」

「ほう、今の美澪よりも強いか。」

「うん、ついこないだ琥太郎と模擬戦したんだけど、全く歯が立たなかった。私だって結構強くなったから、ちょっとは通用すると思ったのに…。琥太郎が相変わらず強いのは嬉しいんだけど、ちょっと悔しい。」


「まじかよ。美澪姉ちゃんより強いとか信じられねぇ…」


 十兵衛爺ちゃんと美澪の会話を聞いて、子供達が琥太郎を見ながらヒソヒソと話している。


「どうじゃ琥太郎、お主も久しぶりに軽く体を動かしていくか。」

「うん、なんかめちゃめちゃ懐かしいから、ちょっとだけ俺も稽古に参加させてもらいたくなっちゃった。あっ、だけど、社会人になってそんなに体を鍛えてるわけじゃないないから、本当に軽くにしとくね。」


 琥太郎がそう言うと、稽古再開前に十兵衛じいちゃんから軽く子供達の紹介があった。稽古に参加している子供達は、男の子が2人、女の子が1人だ。


犬神の直七なおしち

豆腐小僧の豆吉まめきち

針女の小春こはる


 一番快活で生意気そうなのが直七。なんだかちょっと昔の清吉のようだ。

 少し気弱そうな感じがするのが豆吉。

 小春は落ち着いていてマイペースなように見える。

 どの子も突然やってきた人間の琥太郎に興味深々のようで、紹介されている間もその純粋な瞳を見開いて琥太郎を見つめていた。

 その後あらためて稽古再開となり、子供達が型の続きを始めた。琥太郎もそれにならって、子供達の横で昔習った武道の型の動作の稽古を始める。美澪は横でそれを楽しそうに眺めていた。


「「……覚えてるかちょっと不安だったけど、結構体が覚えてるもんだなぁ…」」


 妖の武道では、打撃と投げが中心といった感じだ。寝技も少しはあるものの、昔聞いた十兵衛爺ちゃんの話では、実戦で投げられて転ばされると、その後は武器や妖気の攻撃に繋げる事が多いため、あまり寝技に進む事が無いからだと言っていた。

 型の練習の後は、巻藁への突きと蹴りの反復練習を行い、その後に組手となった。

 豆吉が小春と組む。そして、直七が琥太郎と組む事になった。


「よぉーし、琥太郎、人間になんか負けねえからな。」

「おう直七、よろしくな。」


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