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161_手加減

「ふむ…、ムギ、ミック、このお嬢ちゃんもかなりやるようではあるが、それにしてもお主らは少々不甲斐ないのう。」

「お嬢ちゃんじゃない。美澪。」


 曖然親分の先ほどからのお嬢ちゃん呼びに、ここで美澪が抗議をした。


「ほほほ…、すまんすまん。では美澪、お主が今日の模擬戦を楽しみにしておったというのは聞いておる。それが今の戦いではさすがに物足りんじゃろう。そこでじゃ。酌威、せっかくじゃし美澪の相手をしてやってくれんか。美澪もそれでどうじゃ?」

「へい親分。承知しました。」

「ふふ…、望むところ。」


 曖然親分から美澪との模擬戦を指示された酌威が、美澪の立つ訓練場の真ん中付近へと歩みでていく。

 それと入れ替わるように、先ほど美澪に敗北したムギとミックが琥太郎達のもとへと歩いて戻ってきた。2人ともまだ顔を摩っている。よく見ると、2人とも額や頬にうっすらと血が滲んでいるようだ。


「ムギ、ミック、大丈夫?」


 琥太郎が戻ってきた2人に、曖然親分になるべく聞こえないように気を遣いつつ小声で声をかける。


「へい、この程度なら大丈夫っす。」

「それにしても兄さん、兄さんの連れだから強いんだろうとは思ってやしたけど、あの歳でとんでもなく強いっすね。」

「そうだよね…、俺も美澪が妖の中で実際にどの程度の強さなのか、はっきりとは把握してないんだけどさ、結構強い方なんだろうとは思うよ。だからさっきの模擬戦は美澪なりに手加減してくれてて良かったよ。」

「手加減っすか…、まあ手加減されてるのはわかってやしたけど、それであそこまで何も出来ねぇってのも流石に、ちとショックすね…」

「今から酌威の兄貴が美澪ちゃんとっすか。美澪ちゃんがめちゃくちゃ強いのは解ったっんすけど、いくらなんでも酌威の兄貴相手に大丈夫っすか?。」

「う~ん、こないだ酌威さんと模擬戦させてもらった感じだと、流石に勝たせてもらうのは難しいかもしれないけど…、とはいえそんなに簡単にやられもしないんじゃないかなぁ…。それに酌威さんも、美澪に本当の大怪我をさせるほどの事はしないでしょ。あっ、それから、美澪をちゃん付けで呼ぶと怒るから、何も付けずに、美澪って呼び捨ての方がいいよ。」


 琥太郎が、美澪のちゃん付けをやめるよう促しておく。

 ここで、小声とはいえ琥太郎達の会話が聞こえていた様子の曖然親分が口を開いた。


「こら、ムギ、ミック、お主らは明日から出勤前に朝稽古じゃ。後で酌威にも言うておくからの。酌威にしっかりと鍛えてもらうがよい。」

「くっ、組長、マジっすか…」

「うぅっ、しっ、承知しました。」


 酌威との朝稽古を指示されたムギとミックが大きくショックを受けている。


「まあ、頑張れよ…」


 落ち込む2人がちょっと気の毒に見えた琥太郎は、小声でそっと2人に声をかけておく。

 琥太郎達が訓練場の壁際でそんなやり取りをしている間に、酌威と美澪も位置についたようだ。

 酌威は、琥太郎達から見て訓練場の中央から右寄りの位置に立っている。

 対する美澪は、その酌威から20m程離れた位置に立った。背後の壁までは、おそらく5m程度しかないだろう。スペースの限られた地下訓練場なので、美澪にとっては外で行う模擬戦の時ほど距離を取る事は出来ていない。しかし、それでも一般的な模擬戦の距離感からするとかなり離れた位置取りだ。機動力を活かした戦いをする美澪ならではの距離感だろう。


「双方とも準備は良いな。」

「へい。」


 曖然親分の問いかけに、酌威が短い返事で返す。美澪も、先ほど同様に小さく頷いていた。


「よし。では、いくぞ。始め!」


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