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160_羽虫

「ムギ、ミック、まずはお主らからじゃな。しっかりお嬢ちゃんに相手をしてもらってこい。」

「「へい。」」


 曖然親分に指名されたムギとミックが訓練場の真ん中付近へと歩み出る。


「美澪、あいつらあんまり強くはないんだけど凄くいい奴等だからさ、なんていうか、あんまりやり過ぎない程度に相手をしてあげてね。」

「わかった。善処はする。」


 美澪も、訓練場の真ん中で立つムギとミックの向かいへと進み、彼らと対峙して立った。

 美澪が琥太郎と模擬戦をする際は、25m程と結構な間隔を開けて立つ。しかし今日は、せいぜい15m程度の距離だろうか。ムギとミックが放つ妖気や雰囲気から、美澪も彼らの実力をある程度感じ取れているのだろう。美澪としては、実力では完全に格下となるムギとミックの練習相手を務めてあげるような感じなのかもしれない。


「ふむ、双方準備はよいな。」

「「へい。」」


 ムギとミックが曖然親分の問いかけに、声を揃えて応えた。

 同時に、美澪も黙ったままではあるが、軽く頭で頷き応える。


「始め!」


ダッ!

バババババッ・・・


 曖然親分の始めの合図とともに、ムギが低い姿勢で美澪に突っ込んでいく。

 ミックは、ムギの斜め後ろを追走しながら、美澪に妖気弾を連射している。

 しかし美澪は、上半身を僅かに左右に振りながら飛んできた妖気弾を避ける。時折飛んでくる避けきれなそうな妖気弾も、羽虫を払うかのごとく、軽い爪の斬撃で弾いてしまっていた。そして、その場から全く動かずにムギとミックが突っ込んでくるのを待っている。

 低い姿勢で突っ込んできたムギは美澪まで残り2m程まで近づいたところで、グンッと更に低く沈み込みながら、美澪の足元へとタックルに入った。

 しかし美澪は、このタックルを軽いステップで横に1歩移動し躱した。すると、美澪が躱したのと同時に、ムギの斜め後ろに控えていたミックも美澪の足元へとタックルに行った。ムギのタックルを躱したところを狙う、仲の良い2人ならではの良い連携だ。

 しかし美澪は、続けざまに飛び込んできたミックのタックルを後方に宙返りして躱すと、ミックの背後の地面へ着地し,、そのままミックの背中を蹴り飛ばした。

 蹴り飛ばされたミックは、タックルを躱され前につんのめっていたムギへ衝突し、2人一緒に派手に吹き飛んで地面を転がる。


「うぅっ…」

「痛ってぇ…」


 吹き飛ばされたムギとミックが、呻きながら横目でチラリと曖然親分を見た。

 しかし、曖然親分は表情を変えず黙ったまま、ジッと模擬戦を行っている3人を見ている。


「くっそぉ、ミック、もう1回行くぞ。」

「おぅ…」


 まだ模擬戦を止めてもらえそうにないと悟ったムギとミックが、なんとか立ち上がり、再び美澪の方に向き直る。

 対する美澪は、足を軽く開き、手は腰に当てて仁王立ちの姿勢で2人を見ている。


「「うおぉ~!」」


 そんな美澪に向けて、ムギとミックが大きな雄たけびを上げながら再び突っ込んでいった。

 今度は2人とも妖気の連弾を美澪に向けて打ち出しながら、2人並んで美澪に向かう。

 

 そして、美澪まで2m程の距離まで突進した2人は、美澪を挟みこみながら、低い姿勢で同時にタックルに行った。

 すると、先ほどは後方宙返りでタックルを躱した美澪が、今度は2人以上に低い姿勢へと沈み込んだ。そして、そのまま地面を擦るように体を回転させながら、水面蹴りでタックルに来た2人の足を刈り取る。

 足を刈られ、美澪の後方の地面へ回転しながら仰向けに叩きつけられた2人の頭上へと、一瞬でジャンプして移動した美澪が、2人の顔面へ両手の平を向けた。その瞬間、美澪の両手の平から妖気弾が、ムギとミックの顔の真横の地面へとそれぞれ打ち出された。


バンッ!!


 顔面を避けて打ち出された妖気弾は、彼らに直撃はしなかったものの、地面の土が弾き飛び、ムギとミックの顔面を襲った。


「うぁっ!」

「ぎゃぁっ!」


 弾き飛んだ土や小石が至近距離で顔面に直撃したムギとミックが、地面を転がって呻いている。


「やめっ!」


 ここで曖然親分から模擬戦終了の合図が出た。

 美澪は、地面で呻いている2人を一瞥した後、曖然親分の方を見た。


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