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154_ひと仕事終えた

「あれっ、じゃあムギとミックはこいつらを連れて、もう帰っちゃうの?」

「そうっすねぇ。せっかく来たんすけど、こいつらにまた逃げられちゃっても面倒臭いんで、このまま連れて行っちゃいますわ。」

「俺、ムギとミックにちょっと相談もあったんだけどなぁ。ねえ、俺がこいつらをもうちょっと弱らせて動けなくしちゃうからさ、1杯だけでも飲んでいかない? 事務所までならたいして遠くないし、こいつらを連れていくのも付き合うからさぁ。」


 せっかくムギとミックに会えたのに、ここで模擬戦の話を出来ないと、また次がいつになるかがわからない。それに琥太郎は、今回はちゃんと連絡先も確認しておきたいと思っていた。


「あぁ、確かに琥太郎兄さんがいるなら、万に一つも逃げられるなんて事はねぇっすね。」

「確かにな。それじゃあママ、俺達も1杯もらっていいっすか? っとその前に、こいつらを縛っちゃわねえと…」

「あっ、ムギ、ミック、ちょっと待って。何かしでかすといけないから、こいつらの妖気を少し奪っとくからさ。」


 琥太郎がそう言うと、床で胸を押さえたまま、まだ碌に動けずにいた暁次ぎょうじ猿次えんじからオレンジ色の炎が立ち上った。以前琥太郎が綾乃さんと神田川沿いですれ違った際に攻撃してきた河童達にしたのと同じように、琥太郎が妖達の妖気を奪い燃やしているのだ。炎はお店の天井まで立ち上っているが、温度は琥太郎が調節しているので、店内に火が燃え移るような事はないようだ。


「うぅっ…」

「ううぅっ…」


 暁次と猿次は最初だけ僅かに呻き声を漏らしたが、すぐにぐったりして動かなくなった。そこで琥太郎が二人から立ち上っていた妖気の炎を消失させた。


「兄さん、こいつら死んじゃってないっすよね?」


 ミックが動かなくなった2人を見て、慌てて琥太郎に声をかけた。


「うん、2人ともまだしっかり生気は感じるから大丈夫だよ。体の中の妖気の大半を燃やしといたから、しばらくは妖気を使って何かする事も出来ないと思うよ。」

「確かにまだちゃんと息はしてるっすね。じゃあ、一応手足を縛っちゃっときますわ。」


 そう言って、ムギとミックはポケットからナイロン製の結束バンド(タイラップ)を取り出すと、床に転がっている暁次と猿次を後ろ手に縛り、それぞれ足首も結束バンドで固定してしまった。


「いやぁ、こいつら、なかなか捕まえられずにちょっと困ってたんすわ。琥太郎兄さんのおかげで助かりました。」

「あんた達もビールでいいんでしょ。」

「へい。いやぁ、ひと仕事終えた後のビールは最高っすねぇ。」

「ひと仕事終えたって何言ってんのよ。あんた達は最後にちょっと手足を縛っただけじゃない。」

「いやいやママ、ここに来るまでも俺達ちゃんと働いてたんすっから。」


 ムギとミックは1杯などと言っていたが、あっという間にビールの入ったジョッキが空になりそうだ。


「あっ、流伽、紹介が遅くなってごめん。彼らはこの辺り一帯を取り仕切ってる花園組ってところのムギとミックね。こいつらは後ろに転がってる連中と違って凄くいいやつらだから安心して。」

「初めまして、流伽です。」

「おおっ、挨拶もしないまま飲み始めちゃってすんません。流伽姐さんっすか。俺がムギっす。」

「流伽姐さん、初めまして。俺がミックっす。」

「えっ、ねっ姐さんですか…?」

「流伽姐さんはいわゆる霊ってやつっすよね。」

「それも、えれぇべっぴんさんだし、琥太郎兄さんには本当毎回驚かされますわ。」


 流伽がムギとミックのいきなりの姐さん呼びに戸惑っている様子だ。


「ところであんた達はなんで琥太郎君とそんなに親しいのよ。」


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