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153_命知らず

「こっ、琥太郎?!」

「流伽、大丈夫か?」

「うっ、うん…」


 流伽も、初めてみる琥太郎のその激怒した姿に戸惑っている。

 琥太郎が流伽から視線を外し、流伽の横で立ったまま固まっている2人の妖の方を見た。


ガタンッ!


 固まっていた2人の妖が、後ろの壁に投げ飛ばされるかのように吹き飛んだ。


「うぅっ、てめぇっ、何しやがった!」


 吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて床に転がると同時に琥太郎の拘束が解けた2人の妖が、起き上がりながら琥太郎を睨んでくる。


「いきなり人の連れに手を出しておいて、詫びも無いのかよ。」

「ふざけやがって…」

「人ごときが舐めてんじゃねぇぞ。」


 立ち上がった陰摩羅鬼おんもらきが軽く両腕を開く。すると、開いた両腕の脇から複数の羽根が琥太郎へ向けて鋭く打ち出された。


ボシュッ


 しかし、打ち出された羽根が琥太郎に届く事はなく、琥太郎が一瞬にして空中で燃やしつくしてしまった。それを見た狒々(ひひ)が、琥太郎に向けて突進してこようと足を踏み出した。


ゴロンッ


 しかしこちらも、琥太郎に近づく事すら出来ずに、その場で再び床に転がされてしまった。


「てめぇっ、うぐぅっ!」

「うううぅっ!」


 突然2人の妖が胸を押さえて苦しみだした。

 床に転がされた狒々は、体を横向きに丸めた状態で、胸を押さえて呻いている。

 その隣に立っていた陰摩羅鬼も今は床に膝をついて、胸を搔きむしるようにして苦しんでいた。


「生き物の生気せいきの源っていうのは心臓みたいなんだよね。だからさ、俺はお前らの心臓をこうして掴む事も出来ちゃうんだよ。本来ならこんな手加減なんかしないで、このまま心臓を握り潰して終わりにしちゃいたいんだけど、お店の中で妖を殺しちゃったら綾乃さんに迷惑をかけちゃうかもしれないからさ、せめて、いきなり流伽にふざけた真似をした罪業を、その苦しみと一緒に噛みしめながら、ちょっとは悔いてくれないかなぁ。」


 流伽と綾乃さんは、唖然とした顔で後ろから事の成り行きを見つめている。先程は臨戦態勢で逆立っていた綾乃さんの髪の毛も、今は元のとおり肩から胸元へと垂れ下がっていた。

 琥太郎が床でもがき苦しんでいる2人の妖を見降ろしていると、1階の入り口の扉が開き、誰かが階段を上ってくる気配がした。


「ちぃ~っす!」


 階段を上って入ってきたのは、花園組のムギとミックだった。


「おぉっ、琥太郎兄さん久しぶりっす! って、えっ?! 何っすか、どうしたんすか、この状況?!」

「えっ、ええっ、っていうかこいつら、暁次ぎょうじ猿次えんじじゃん?!」


 どうやら、ムギとミックも床でもがき苦しんでいる2人の妖達を知っているようだ。

 ここで、琥太郎が2人の心臓を掴むのを止めた。しかし、2人ともまだ胸を押さえたまま、肩で息をしている。


「ムギ、ミック、久しぶり。」


 先程まで、激怒して表情が抜け落ちていた琥太郎が、僅かに苦笑いしながら、ムギとミックに声をかけた。先程は側にいた綾乃さんと流伽の肌がひりつく程の怒気が溢れ出していた琥太郎だが、今はそれも収まっている。


「兄さん、これ、いったいどうしちゃったんですか?」

「そいつらがねぇ、お店に入ってくるなり、琥太郎君の連れの流伽ちゃんの胸を触ろうとしてきたのよ。そいつら以前にもうちに来た事があったのよね。その時も他のお客さんに迷惑かけまくってたから、出禁にしたんだけど、今日また勝手に入ってきたのよ。」


 琥太郎の代わりに、綾乃さんがカウンターの中からムギ達に答えてくれる。


「ちょうど俺達もこいつらの事を探してたんすよ。こいつら、陰摩羅鬼の暁次ぎょうじと狒々の猿次えんじって言うんっすけど、この辺の他の店でもあちこちで悪さしまくってるから、捕まえて組で絞めようって話になってたんすわ。」

「それにしても、琥太郎兄さんの連れに手を出すとは、命知らずもいいとこっすね。」


 ミックが、先日は自分達が琥太郎本人に絡んでいった事を棚に上げて何か言っている。


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