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14_顕現

「ごっ、ゴメン風音さん! 今のは風音さんから放出された霊気を纏めて全部形代に集中させてみたんだけど、そうしたら形代が風音さんの霊気に耐えられなかったみたい。勝手な事してごめんなさい。」

「なっ、なんですかそれ。えっ、琥太郎先輩が言ってる事がよくわからないです。」

「え~っと、風音さんが祝詞を唱えると風音さんの体から霊気が噴き出すんだ。その霊気は前だけじゃなくて、横とか後ろとか上とか、風音さんを中心に全方向に噴出してるのね。今朝風音さんが会社の廊下で大量にベレーさんを顕現させようとした時にさ、俺は風音さんから出る霊気を操作して形代に届かないようにしたんだ。そしたらベレーさんが顕現しなかったでしょ。それで思ったんだけど、形代に向かわずに無駄に上とか横とか後ろに拡散しちゃってる霊気を全部まとめて形代に集中させちゃえば、逆に式神が強くなるんじゃないかなって。それでやってみたら形代が爆発しちゃった。」

「琥太郎先輩、 それ、凄く興味があります!もう1度やってみたいです!! もう1回お願いできませんか?」


風音さんが物凄い勢いで興味を示してきた。


「えっ、だけどまた爆発しちゃうよ。」


すると風音さんが肩から下げているポシェットに手を入れてガサゴソと数枚の紙を取り出した。


「普段使ってる形代は、ベレーさん達用に作っている普通よりも小さい形代なんです。本来はこれ位の大きさが一般的なんです。」


そう言って風音さんがポシェットから取り出して見せてくれたのは、はがきサイズよりもひと回り大きな形代だった。


「それと、形代の大きさでベレーさんに変化がないかを試したりしてたんで、一般的なサイズよりも更に大きな形代も持ってます。こっちの特大サイズの形代なら、さすがに爆発したりはしないと思うんですよね。あっ、だけどこのサイズの形代だと私の霊力が足りないみたいで、これまでベレーさんの顕現に成功した事は1度もないんですけど。」


そう言って取り出したのはA3サイズ程ある大きな形代だった。

風音さんの話だと、標準サイズの形代を使ってもベレーさんは顕現するらしい。しかし強さは3cm位の形代を使った時と変わらないらしく、普段は風音さんオリジナルの小型形代を使用しているとの事だった。


「だから琥太郎先輩、この1番大きなサイズの形代を使って、今のをもう1度お願いできませんか。」

「うん、わかった。じゃあそれでやってみようか。」


居酒屋の個室で爆発物の実験を行うようでちょっと気がひけるが、風音さんからこれまで見た事もないような熱意をぶつけられてしまっては断りにくい。それに、何より琥太郎自身も結果に興味がある。


「「……まあ、慎重に観察しながら、爆発しそうになったら「気」を散らすとかすればそこまで大きな被害にはならないか…」」


「風音さん、せっかくだからベレーさんが普通の人にも見える状態で顕現させてみて。」

「わかりました。やってみます。」


風音さんは目の前のテーブルの上を片づけて広くして、そこにA3サイズの形代を置いた。


「ふ~。 じゃあいきますね。 ฉันจะร่ายคาถา」


風音さんが1度大きく深呼吸をした後に、再び祝詞を唱えた。すると同時に風音さんの全身から勢いよく霊気が噴出する。琥太郎がその全ての霊気をテーブル上にある形代へと集中させる。すると形代が光輝きながら小さく震え出した。


ドーンッ!!!


今度は先ほどよりも更に大きな爆音を立てて形代が爆発したかに見えた。しかしテーブル上に立ち上った湯気のような薄煙の中には、めちゃめちゃ巨大な緑の影が立っている。その薄煙もすぐに晴れた。そして、テーブルの上に立っていたのは緑色の体育ジャージを着たスキンヘッドの大男だ。琥太郎の目の前にあるふくらはぎなど、確実に琥太郎の太ももよりも大きい。2m程はありそうな身長が天井につかえてしまうため、上半身は前かがみになっている。


「「……成功?! っていうか、今の爆発とかテーブルの上に大男がいるこの状況とか、なんかまずいんじゃない?」」


美澪は大男が顕現した瞬間に、一瞬で掘り炬燵から飛び上がり立ち上がっていた。強力な妖気を身に纏い既に臨戦態勢で身構えている。

大男はそんな美澪を一瞥したあと、ぐるりと周りを見まわす。そして風音さんと目が合うとサムズアップで親指を立てて、右眉毛をクイッと動かした。

風音さんは顕現した大男を見あげたまま完全に固まってしまっている。しかし、大きく見開いたままのその目からは涙がこぼれ落ちていた。

そこで、背後の個室の扉が突然開かれた。


「失礼します! どうかなされました?」


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