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146_メトロポリタン美術館

 琥太郎達はカフェの奥で柱の陰になっている席へつくと、コーヒーとケーキを2つづつ注文した。店員さんはあとからもう1人来ると思っているようだ。


「今日行く中では、ここが一番琥太郎にはお勧めかな。」

「なんか1件目と違って美術館みたいな感じだね。」

「うん、ここは都内のアートギャラリーの中でもかなり大きなギャラリーなんだよね。これから行けばわかるけど、中は大部屋が2つと小さな部屋がいくつかにわかれてて、それぞれにいろんな作家さんが作品を展示してるの。だから、全く違った作風の作品が集まってるから、最初はこういうところで自分の好みを見つけるのがいいと思うよ。」

「だけど俺、どの絵が良くてどの絵が悪いとかよくわかんないんだよね。」

「ふふふ…、絵は食べ物と一緒で好みだから、良いとか悪いとかは気にしなくていいんだよ。何も気にしないで見て回りながら、「あっ、この絵は好きかも。」って思える作品があったら、そこで立ち止まってよく見てみればいいと思う。それを繰り返してると、自分はこういう感じの絵が好きなんだっていう自分の好みが判ってくるから、そうしたら自分の好みっぽい作品が集まってそうな美術館とか展示会に行けば、また更に楽しめるようになると思うよ。」

「う~ん、俺は今までの人生で絵を見て、この絵が好きなんて思った事ないんだけど、そういうのが見つかるのかなぁ。」

「ここは他のギャラリーよりも大きくて展示数も多いけど、本当はもっともっと大きなところに行ければいいんだけどね。例えばニューヨークのメトロポリタン美術館とか。私も1回だけ行った事があるんだけど、朝一番に行って夕方までいて、それでも半分位しかまともに見れないくらい大きかったな。」

「えっ、流伽ニューヨークなんか行った事あるんだ。なんか凄いね。」

「うん、勤めてた会社の研修旅行みたいなので行ったんだけどね。」


 研修旅行でニューヨークまで行くなんて、流伽はかなり立派な会社に勤めていたのだろうか。


「私も当時はそこまで絵が好きだったわけじゃなくて、観光地の一つって感じでメトロポリタン美術館に行ったのね。だけど、そこで絵が凄く好きになっちゃったんだ。メトロポリタン美術館って、とにかく展示数が膨大だから、1日行くくらいじゃ絵の展示だけでも、ひとつひとつ立ち止まって見てなんていられないんだよね。それで、とにかく散歩するみたいに歩いて見てまわりながら、なんとなくいいなって感じた絵の前でだけ立ち止まって見てたの。その時に、自分はこんな感じの絵が好きなんだなっていうのがなんとなく判ってきて、それから日本に帰ってきてからも、自分の好きそうな絵の展示会なんかを見つけて行くようになったんだよね。日本に帰ってきてからメトロポリタン美術館に行った事があるっていう人に会った事があるんだけど、その人はランニングが好きでいつもGPSがついた時計をしてるらしいのね。それでメトロポリタン美術館の入り口でGPSをオンにしてから全部の作品を見てまわったら、歩いた距離が20kmを超えてたって言ってたよ。」

「20km?! そんなに大きいの?!?!」


 琥太郎もメトロポリタン美術館という名前は聞いた事があったが、それがそこまで大きなものであるとまでは思っていなかった。日本でも上野にある美術館には行った事があるが、それとはどうも規模が違うようだ。


「うん、私も1日でヘトヘトになった。まあ、そこまで大きなところじゃなくても、このギャラリーだっていろんな作風が集まるから琥太郎が興味を持てそうな絵だってあるかもね。初台でも球体関節人形に興味を示してたでしょ。そんな風に、あまり構えないで気楽に見てまわってればそれでいいと思うよ。」


 カフェを出て建物の2階にあがると、防火扉のような厚手の扉の中がギャラリーになっていた。流伽が言っていたように、作品を出展している作家さんが展示スペースに一緒にいる事が多いようだ。


「「……なんかこのギャラリーにも妖気が溜まってる感じだよね。付喪神とは違うっぽいけど、何かいるのは間違いないかなぁ…」」


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