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137_勝負あり

 背後から追ってきていたドローン型式神は、美澪と風音さんがちょうど射線上に重なったため、一時的に砲撃を中断していた。

 風音さんの上空でホバリングしている方のドローン型式神からは、引き続き美澪に向けて砲撃が放たれている。しかし、その砲撃は美澪の作り出した半球状の結界の盾により、美澪には当たらずに左右に逸らされた。


ドドドドドッ


 風音さんの頭上に飛び上がった美澪が、風音さんの上空でホバリングするドローン型式神へと妖気の連弾を放つ。

 ドローン型式神はこれを機敏な動きで躱したが、ドローン型式神に肉薄した美澪の蹴りがドローン型式神へと決まった。


バーンッ!


 美澪に蹴り飛ばされたドローン型式神は爆音とともに、うっすらと白煙をあげて消失した。機敏な動きを見せていたドローン型式神だが、単体でのスピード勝負であれば美澪に分があるようだ。

 ドローン型式神へと蹴りを放った美澪は、更に上空に結界の足場を作りだし、体を斜めに縦回転させるように方向転換をして、背後から追ってきたドローン型式神へと迫る。そして、1機目同様に妖気の連弾から直接蹴りを放ち2機目も消失させてしまった。上空からは、ドローン型式神であった破れた形代がヒラヒラと地面に落ちてくる。


「うわっ、2機瞬殺だ…」


 美澪が空中から着地するのに合わせて、後ろから追ってきたダディの蹴りが迫る。美澪は着地と同時に横へ飛びのきながらこれを躱すが、更にダディから追撃の拳が振り下ろされた。すると、美澪は後ろや横へは躱さずに、ダディの足元へと飛び込みながらダディの顔面へと爪の斬撃を放つ。ギリギリでダディの拳を掻い潜るように躱した美澪は、ダディの足元をすり抜けて、ダディの背後へ移動した。

 顔面へ美澪の斬撃をくらったダディはちょっとだけ顔を歪めながら、背後に移動した美澪の方へ体を向けようとする。その瞬間、ダディの背後に立つ美澪の足元がうっすらと光った。


「あっ、徑!」


 美澪の足の裏で発動した徑が、回転しながら美澪の丹田を通過する。すると、そこで回転しながら強烈に圧縮されていた妖気と、足の裏から流れてきた徑が螺旋状に絡み合い、そのまま右腕へと流れた。そして、正拳突きの構えで最大限後ろへ引き絞られていた美澪の右拳が、丹田を通過して流れてきた妖気を纏う徑と一緒に、振り返ったダディの臍のあたりへと突き出された。


ドゴォッ!


 爆音とともに、美澪の妖気と徑の螺旋が、ダディの腹を突き抜けて、腰のあたりから背後に噴出した。

 道路脇に植えられた街路樹の枝が、美澪の突きによる突風で大きく揺れる。

 直後、美澪の前に立っていたダディの姿が白い煙となり消失した。

 倉庫前に立つ琥太郎と咲蔵の近くの地面には、ダディであったであろう破れた形代が突風に飛ばされて、ヒラヒラと落ちてきた。

 ダディを打ち破った美澪は、それでも止まらずに近くで結界を張っている風音さんの正面に移動していた。そこで再び正拳突きの構えをとった。


「スト~ップ! 勝負あり! 美澪、ストップストップ!」


 それを見た琥太郎が、慌てて飛び出して美澪を止めた。

 琥太郎の勝負ありの声を聞いた美澪が、その場で残心の構えを取ってから両腕を下におろすと、深く息を吐いた。


「ふぅ~。へへへ。」


 そして、琥太郎を見て笑顔を見せる。


「美澪がドローンとダディにまとめて勝っちゃった。それにしても、やっぱりあの最後の突きは凄いな…。風音さん、大丈夫?」


 琥太郎が風音さんを心配して声をかけると、風音さんを覆っていた霊気の結界が消失した。


「は、はい。私は大丈夫です…、だけど負けちゃいました…」


 風音さんは、琥太郎の問いかけに大丈夫と答えたものの、すぐにうつむいてしまった。新しい式神まで顕現させて模擬戦に臨んだにも関わらず、美澪に負けてしまった事がショックなのだろう。

 倉庫の前では、咲蔵が両目を見開いて、口を開けたまま美澪を見ていた。こちらも美澪の最後の突きにびっくりしてしまっているようだ。


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