121_結界の盾
あらためて琥太郎と美澪が25m程離れた位置で対峙する。今回も美澪のタイミングで攻めてきていいと伝えると、美澪が軽く深呼吸してから、再び琥太郎へと一直線に突っ込んできた。
今回も、美澪はダッシュと同時に琥太郎へと妖気弾を撃ってくる。琥太郎も、そんな美澪に対して、左手の指をピストルのように構えて美澪に「気」弾を高速で連射する。同時に、右手からは自動追尾型の「気」弾も6発撃ち出した。
琥太郎の「気」弾の連射によって直進を阻まれた美澪は、琥太郎の左側へと45度ターンして斜めに迫ってくる。逆に琥太郎は、美澪から撃ち出された妖気弾を全て「気」の防御で受け流し、その場から動かずに美澪に対処する。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ…
ダッダッダッダッダッダッダッダッダッ…
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
空中には美澪の放つ妖気弾と、琥太郎の放つ「気」弾が乱れ飛ぶ。
幸いにも、それらの放つ僅かな光は、煌々と光る目の前の港湾内の多数の照明のおかげで、それほど目立たずに済んでいる。
琥太郎の「気」弾の連射をフットワークで躱しながら琥太郎に迫ってきていた美澪だが、琥太郎の自動追尾型の「気」弾が前後左右、更に上からも美澪を狙ってきた事で前進を阻まれ、「気」弾の対処に集中せざるを得なくなっていた。
ザシュッ ザシュッ ザシュッ…
美澪が、飛んでくる自動追尾型の「気」弾を、爪の斬撃で迎撃する。
そのうち美澪の1発が、空振りして倉庫の方へと飛んでいった。すかさず琥太郎がその斬撃の妖気を操作して上空へと軌道を変えて倉庫や咲蔵の張った結界への直撃を回避させる。すると琥太郎の視界の端には、驚いた様子で目と口を見開いている咲蔵の様子が目に入った。
そうこうしながらも、なんとか琥太郎の自動追尾型の「気」弾を全て迎撃し、再び琥太郎の方へ近づこうとする美澪へ、琥太郎がすかさず追加の追尾型「気」弾を発射する。もちろん同時に、通常の「気」弾の連射も継続している。
ここで、追加で追尾型の「気」弾が発射されたのを見た美澪が、自身の前に結界を張った。普段美澪が空中を駆ける際に足場として張っている結界は30cm四方位だが、それよりも大きな結界だ。縦横それぞれ倍位はありそうだ。そして、その結界を盾のように肩の前に構えると、そのまま琥太郎へとまっすぐに向かってきた。
当然琥太郎は向かってくる美澪へと「気」の連弾を打ち込むが、この「気」の連弾はその盾によって防がれている。しかし、自動追尾型の「気」弾が盾へとヒットすると、盾は耐えられずに破壊され、その衝撃で美澪も後ろへ吹き飛ばされた。しかし、結界の盾で「気」弾の威力が弱められていたため、美澪に大きなダメージはなく、回転して受け身を取るとすぐに態勢を立て直した。そこへ残りの自動追尾型の「気」弾が押し寄せる。
ザシュッ ザシュッ…
ダンッ ダンッ
美澪は体制を崩しながらも、爪の斬撃を連続で放ち琥太郎の「気」弾を2発迎撃すると、残りはフットワークで一旦回避した。そしてすかさず、真っすぐ琥太郎に向かい攻めてくる。そんな美澪に背後から、回避した自動追尾型の「気」弾が迫る。そして美澪に着弾すると思われた瞬間、美澪が自身の背後に結界の防御を張った。
バーンッ!
美澪の結界に「気」弾が着弾し、先ほど同様に結界が破壊された。そして、その勢いで美澪が琥太郎の方へと吹き飛ばされる。しかし先ほどと違い、今度は美澪が体制を崩していない。美澪は吹き飛ばされた勢いを利用して更に加速すると、一瞬で琥太郎の立つ位置へと飛んできた。
「うわっ、早い!」