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117_望むところなのです

 琥太郎がそう声をかけると、やはり妖気はすぐに止まってしまう。しかし、しばらくするとまた妖気がうっすらと滲みだしてきた。


「あっ、出た。」


 琥太郎が美澪に妖気が出た事を伝えるたびに美澪の妖気が滲み出るのが止まる。琥太郎の声や、妖気が出てきた事実に気を取られると、流伽の言うリラックスした意識の状態が途切れて、妖気が漏れ出るのも止まってしまうようだ。しかし、またしばらくすると妖気も再び滲み出てくる。しばらくはそのやりとりを繰り返した。


「う~ん、妖気が出てる事を感じとるのが難しい。なんとなく、体の表面に変な感触があるような気がしなくもないけど、難しい。はっきりとはわからない。」

「だけど、リラックスすれば確実に妖気が滲み出てはいるから、そのなんとなくの感じで可視化を試してみたら。」

「やってみる。」


 美澪がそう言って、軽く体をゆするようにゴロゴロしてから、しばらくジッとしていると再び妖気が体から滲みだした。さらにそのまましばらくしてから、ゆっくりと大きく息を吸って周囲にただよう希薄な「気」を取り込んだ。その間も先ほど体から漏れ出た僅かな妖気は、うっすらと全身を包むように、うまく纏われた状態になっている。そして息を吐きながら取り込んだ「気」を全身へと広げると、それは纏っていた美澪の妖気に吸収され、さらにその妖気が美澪の身体へと溶け込んでいった。その瞬間、美澪の身体が一瞬だけぼやけるように滲んでから見え方が変わった。


「やったぁ! 美澪、出来てるよ。普通に見える状態になれてるよ!」


 美澪が上体を起こして、自分の体をマジマジと見ている。


「へへへ、出来た。」


 それを横で見ていた流伽もニコニコしている。


「美澪が可視化出来てるのを見たら、君津の十兵衛爺ちゃんとか睡蓮堰のみんなも驚くんじゃない?」

「うん、早く見せたい。今度君津に帰ったら、みんなにもやり方を教えてあげる。」

「今度流伽と一緒に食事に行く時は、みんなで可視化した状態で行かない?」

「ふふふ、うん。たまにはそういうのもいいかなぁ。」


 流伽にたずねると、流伽も快くOKしてくれた。


 翌日、会社に出社すると、既に風音さんが出社して席に着いていた。そこで早速、美澪が新しい技を覚えたのでダディと模擬戦をさせてもらえないかお願いしてみた。


「えっ、美澪も新しい技を覚えたんですか?! ふふふ…、それは望むところです。是非やりましょう。模擬戦、やらせてください!」

「なんか風音さん、模擬戦にめちゃめちゃ乗り気じゃない? どうしちゃったの。」

「先日山中湖で美澪と模擬戦をした時に、ダディが全く決定打を出せなかった上に、私自身も無防備なままになっていたりと、いろいろと課題を痛感しましたからね。私だって修行して進化してるんですよ。だから模擬戦は望むところなのです。美澪にも、この前と同じだとは思わないように言っといてくださいね。」


 どうやら風音さんにも何か新たな技もしくは策があるようだ。

 風音さんと相談した上で、今回は金曜日の夜に品川埠頭で模擬戦をする事になった。


「「……いきなり金曜日に模擬戦を決めちゃったけど、あとは美澪が実戦の激しい動きの中で新しい突きを放てるかどうかが問題かなぁ…」」


 夜帰宅して、美澪に風音さんとダディとの模擬戦が金曜日の夜に決まった事を伝える。すると美澪も気合の入った顔ですっかりやる気になっていた。


「なんか風音さんも、前回の美澪との模擬戦でいろいろと思うところがあったみたいで、新しい技なのか策なのかを開発したみたいだよ。美澪にも、この前と同じだとは思わないようにだってさ。」

「大丈夫。金曜日までにもっとあの技を磨く。だから琥太郎も協力して。」

「えっ、うん。何か俺に出来る事ならもちろん協力するよ。」

「琥太郎とも模擬戦する。」

「えぇっ、俺もまたやるの?!」

「実戦で新しい突きを打てなきゃ意味がない。そのためには模擬戦が必要。琥太郎もさっき協力するって言った。」

「はい。言いました…。 えぇ~、だけど俺もまた模擬戦するの?!」


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