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113_弱くて薄い妖気

「琥太郎さんってそんな事までわかるというか見えるんですね。今琥太郎さんが話してたのは、なんとなく私の頭の中でイメージしてた事と同じです。だけど私自身、実際に起きている事をそこまで細かく把握出来ていませんでした。琥太郎さんってやっぱり凄いです。」


 滝井さんは感心しながらそう言うと、あらためて自分自身の変化を確認するように可視化の動作を繰り返した。


「というわけで美澪、滝井さんの言ってた生き物の気配であったり、普段の生活の中でなんとなく感じる人々の様々な想いや感情といったものを取り込まなくてはいけないんだけど、美澪にはそういうのわかる?」

「う~ん、なんとなくそれは判る気がする。」

「じゃあ、それをしっかりと感じ取りながら、空気と一緒に体に取り込んでみようか。」

「うん。」


 美澪が目を閉じて静かに集中する。それを琥太郎と滝井さんもじっと見守った。

 静かに呼吸しながらじっと集中していた美澪が大きく息を吸い込んだ。すると、琥太郎には周囲に漂う希薄な「気」が空気と一緒に美澪に吸い込まれていくのが見えた。


「「……おぉっ、出来てる!…」」


 そして美澪が息を吸い終わりゆっくりと息を吐き始めると、今吸い込んだ希薄な「気」が美澪の身体全体に広がりながら、そのまま全身から外へと放出された。美澪の見え方は特に変わらず、可視化は出来ていない。


「美澪、今はまだ可視化までは出来なかったけど、滝井さんの言っていた生き物の気配とか、人々の様々な想いや感情といった凄く希薄な「気」はしっかりと取り込む事が出来てたよ。あとは少し妖気を纏って、体に吸収させながら馴染ませる感じだと思う。」


 美澪は琥太郎の説明を聞きながら、どうすればよいかをじっと考えている。

 すると美澪が、全身から妖気を発してその妖気を纏った。美澪が模擬戦などの戦闘で纏っている妖気と比べるとかなり弱いが、先ほど滝井さんが纏った妖気と比べると圧倒的に濃い妖気だ。

 そして、再び大きく息を吸って周囲にただよう希薄な「気」を取り込むと、それを息を吐きながら全身へと広げた。すると、全身に広がった希薄な「気」が美澪の纏う妖気に吸収されていった。


「おっ?!」


 それを見た琥太郎が、これはうまくいくかもしれないと思い身を乗り出した。

 しかし、その後纏っていた妖気を美澪が体内へと引っ込めるも、美澪の見た目に何も変化は起こらず、普通の人からは見えない状態のままだった。


「あれっ、駄目か…」


 美澪も、少し顔をしかめて考えこんでいる。


「今のはうまく「気」を取り込む事も出来てたし、取り込んだ「気」を全身に広げて、纏ってた妖気にもうまく吸収されたように見えたんだけどなぁ。」

「おそらくなんですけど、纏っている妖気が濃すぎるんだと思います。取り込んでいる「気」の濃さに比べて、美澪さんが纏った妖気は、私でもはっきりと感じ取れる位に強くて濃い妖気でした。私自身が可視化をしていて、なんとなく感じる事なんですけど、取り込んだ「気」を取り込ませる妖気も取り込む「気」と同じくらい希薄でなければ駄目な気がします。」


 美澪が滝井さんの言葉を聞いて、再び目を閉じて集中し始めた。

 琥太郎達がそれを見守っていると、しばらくして美澪が再び妖気を発して全身にその妖気を纏う。しかし纏った妖気は、先ほどと比べるといくらか弱まっているものの、滝井さんが纏っていた妖気と比べるとやはりかなり強いと感じる。

 美澪はそのまま、周囲の「気」を取り込んで再度可視化を試みたが、やはりそれは失敗した。


「まだ纏ってる妖気がだいぶ濃いね。もっと弱くて薄い妖気を纏うのって難しいの?」

「ちょっと難しいかも。強い妖気を発したり纏ったりする練習は何度もしたけど、薄い妖気を纏う練習なんてした事がない。」


 美澪の場合、美澪自体がかなり強い妖であるため、弱くて薄い妖気を扱うのは尚更難しいのだろう。


「美澪、ちょっとだけ妖気を発してもらっていい?」

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