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112_存在感

 琥太郎は、目の前の滝井さんを漠然と見ていたが、何がどうなって見えなくなったのかは琥太郎にも判らなかった。滝井さんが息を吐くと、スッと気配が希薄になるような感じがして、同時に通常の人には見えない状態へと一瞬で変化してしまった。


「はい、一度覚えてしまえば、たぶんそんなに難しくはないんじゃないかと思うんですよね。とはいいつつ、他の妖さん達がどんな感じかはよくわからないんですけどね。それじゃあ、また元のように普通に見える状態になってみますね。」


 滝井さんはそう言うと、一度大きく息を吸ってから、再び"ふぅ~"と長く息を吐いた。

 すると、今度は滝井さんが息を吐くのに合わせて、また普通に人からも見える状態へと変化した。


「凄い、またあっさりと普通に見える状態になった…」


 琥太郎は、先ほど滝井さんが見えない状態へと変化した際に何も判らなかったので、今回はしっかりと集中して滝井さんの変化を見守っていた。すると、今回は滝井さんが大きく息を吸って長く息を吐いている時に、滝井さんの体の周りで何かしらの「気」の動きを感じた。また、ほんの僅かではあるが、滝井さんの妖気もほんの一瞬、少しだけ濃くなったような感じがした。しかし、やはり具体的にどのような事が起きているのかは琥太郎にも判らなかった。


「どうやってる?」


 ジッと滝井さんを凝視していた美澪が滝井さんにたずねた。美澪にも、滝井さんが何をしているかは判らないようだ。


「琥太郎さんは「気」が見えて扱えると言っていたじゃないですか。私にはその「気」というのがどのようなものかがはっきり判りません。だけど、可視化の際には琥太郎さんが言う「気」のようなものを体に取り込んで変化しているんだと思います。具体的には、直接感じられる生き物の気配であったり、普段の生活の中でなんとなく感じる人々の様々な想いや感情などでしょうか。これらは人から認識されるための要素みたいなもので、これらが集まると人に対する存在感が高まって人の目からも見えるようになるんです。空気中に漂っているこうした要素を体で感じながら大きく息を吸って、空気と一緒に体の中に吸い込みます。そして息を吐く時が重要なんですけど、、鼻や口からだけ吐くのではなく、体全体から吐きだすようにするのが大事です。その時に、空気は外に吐き出していくんですけど、先ほど取り込んだ気配や想いや感情などはフィルターで濾すように、体の中に残していくんです。」


 滝井さんは可視化の方法についてそう説明すると、再度息を吐きながら見えない状態に変化した。


「では、もう一度やってみますね。ふぅ~…」


 滝井さんの説明を聞いた上で、あらためて琥太郎がジッと滝井さんの変化を観察してみると、少しだけ滝井さんの変化が見えてきた。

 滝井さんの言うとおり、最初に大きく息を吸い込む際に、空気中に漂っている様々な「気」が滝井さんの口や鼻から吸い込まれていく。それらは、人やその他の生物から無意識に放たれている非常に希薄な「気」だ。

 そして息を吸い終わると同時に、うっすらと滝井さんが全身に妖気を纏った。そこから息を吐きはじめると、先ほど空気と一緒に吸い込んだ非常に希薄な「気」が、滝井さんの全身に一気に広がった。そして全身に纏った妖気に濾し取られるかのように吸収されて混ざりあうと、そのまま纏っていた妖気ごと全身に溶け込んでいった。すると同時に、滝井さんが人からも見える状態へと変化した。


「なるほど…、人が認識出来る存在感みたいなものをを体に取り込んでるようなな感じかなぁ。美澪は今のわかった?」

「全然わからない。」

「そうだよね。かなり繊細なコントロールだったからね。」


 琥太郎はそう言うと、あらためて琥太郎の見た滝井さんの変化の詳細を美澪に説明した。


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