107_検証
「琥太郎、いくよ。ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
ズサッ
琥太郎のお腹に、再度美澪が新しい突きを打ちこんだ。しかし琥太郎は、今回は吹き飛ばされたりはせずにそれを受け止めた。
「ふぅ…、今度はなんとか受け止める事が出来たか…。はぁ~、だけどやっぱりこれはヤバいね。本気で「気」の防御を張ったつもりなのに、それでもお腹に美澪の突きの感触がしっかり伝わってきたよ。」
「うぅ~、なんか、結局琥太郎を倒せなかった…」
美澪は本気になった琥太郎に突きを受け止められてしまったのが悔しそうだ。
「ちょっとここじゃ出来ないけど、美澪が言うように今の突きの威力をちゃんと検証したいよね。だけど、美澪が今の突きで思いっきりぶん殴って、壊しちゃっても大丈夫な岩なんて、どこに行けばあるかわかんないや。」
「風音に頼む。ダディに受けてもらう。」
「あっ、そうか。ん? だけど、式神とはいえダディって、もしもキャパオーバーな攻撃を受けても大丈夫なのかなぁ。万が一ダディを倒しちゃって、またもう一度顕現させられなくなったりしないといいんだけど。あとは顕現させてる風音さん自身にダメージとかないのかな。」
「それは大丈夫なはず。ダディはまだ倒せてないけど、小さいベレーさん達はどんなに消滅させても、その後もたくさん顕現出来てる。」
「なるほど、たしかにそう言われてみればそうだね。まあ、風音さんに聞いてみて、大丈夫そうならお願いしてみようか。」
「うん。それまでに、もっと今の技を磨く。」
琥太郎も、自分自身の「気」の防御に対する攻撃力だけでなく、その他の対象に対しての威力もやはり確認しておきたいと思う。明日にでも会社に行ったら風音さんに相談してみよう。
「ねえ美澪、風音さんには明日にでも相談するとしてさ、今日ここでも、もうちょっと今の突きを確認してみたいな。」
「もちろんやる。何をすればいい?」
「うん、また俺に今の突きを打ってみてもらいたいんだけど、今度は直接じゃなくて、少し離れて受けてみるよ。さっき、俺が美澪の突きを受ける前に突きだけを放った時、絡み合った徑と美澪の妖気が30m位前に飛んでいってたんだ。だから、直接打ち込まれるのじゃなくて、離れたところに撃ち出された時の威力を確認しておきたいんだ。」
「わかった。やってみる。」
琥太郎が、美澪から20m位離れたところに立った。その琥太郎に向けて、美澪が再度先ほどの突きを撃つ。
「ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
美澪の周りに突風が吹くのと同時に、美澪の拳から放たれた徑と妖気のトルネード弾が琥太郎に撃ち込まれた。
ドスッ
しっかりと防御した琥太郎がそれを受け止める。
「あれっ、う~ん、思ったより威力が弱いなぁ。美澪ごめん、もう1発撃ってもらってもいい。」
「わかった。ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
ドスッ
琥太郎が、今度は少し「気」の防御を緩めてそれを受け止めた。
「う~ん、この位置だと、やっぱり思ったほど威力が無いね。美澪の普通の妖気弾とあんまり変わらない感じの威力だな。」
琥太郎の感想を聞いて、美澪が少し渋い顔をしている。
「今度はもうちょっと近づいてみるね。」
琥太郎はそう言うと、美澪から10m程の距離まで近づいて立った。ちょうど先ほどの半分位の距離だ。
「美澪、今度はここで受けてみるから、また撃ってもらっていい。」
「わかった。ふぅ~…」
琥太郎から、思った程威力が無いと言われて憤慨しているのか、美澪が先ほど以上に集中して深呼吸している。
「琥太郎、いくよ。ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
ドスッ
琥太郎の腹に美澪の新しい突きから出たトルネード弾が撃ち込まれる。
「う~ん、さっきよりはマシだけど、直接打ち込まれた時の衝撃に比べるとだいぶ弱いなぁ。」
美澪がやはり渋そうな顔をしている。
「せっかくだから、更に近づいて受けてみるね。」
琥太郎はそう言うと、今度は美澪から1m程度しか離れていない位置に立った。
「これだけ近くにくればどうだろう。美澪、また撃ってみてもらってもいい。」
「うん。ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
ドスッ