105_足の裏の回転
琥太郎の体に美澪の攻撃を受けた衝撃が走る。しかし、それはあくまでも琥太郎の想定通りの衝撃で、もちろん琥太郎にダメージなどは何もない。
「うん、やっぱり想定してたとおりの感触だね。なんていうか、単にさっきまでの突きと妖気弾を一緒に受けたっていう、それだけかな。もちろん、威力の上がった攻撃を同時に受けてるわけだから、今までの美澪の攻撃に比べたらかなり威力のある攻撃になってるのは間違いないよ。だけど、これだとやっぱり必殺技って感じまではいかないかなぁ…」
「混ぜ方がわからない。徑と妖気をどうやって混ぜたらいい?」
確かに美澪の言うとおり、混ぜ方がわからないのではどうしようもないだろう。今は美澪の発する徑の表面にうっすらと妖気がまとわりついているといった程度だ。おそらく、丹田で練られている妖気の中を徑が突き抜けて出てきた結果、単に表面に妖気が付着したといった感じなのだろう。
妖気を練る↓妖気を回転させている
回転している妖気の中を通過するのであれば、徑も回転していれば混ざりやすいのではないだろうか。
「もう一度、突きだけの練習をしてみよう。今度は、発生する徑を回転させたいんだ。それで、どうやって回転させるかなんだけど、今美澪が突きを打つ時って、後ろ側の足の裏が全部地面についたままだよね。ちょっと突きを打ってみて。」
ふんっ
美澪が1回だけ突きを打つ。
「うん、やっぱりそうだよね。つま先が少し外側を向いていて、足の裏は地面についたままになってるね。これをさ、突きを打つ瞬間に、踵を少し浮かせてつま先が真っすぐ前に向くようにしながら打てないかな。そうすると、突きを打つ瞬間に徑が発生する足の裏が回転するから、発生する徑も回転するんじゃないかと思うんだ。」
「わかった。やってみる。 ふぅ~…… ふんっ 」
美澪が突きを打つ瞬間に踵を少し浮かせて、つま先を前に向けた。それによって、足の裏が僅かに回転する。しかし、肝心の徑が発生していない。
「あれっ、ちょっと力んじゃったんじゃない?今のは何も出てなかった。」
「ん、失敗。」
美澪が脱力するかのように、深呼吸しながら上半身をグラグラ揺らしている。
そして、深く息を吐いてからもう一度構えた。
「ふぅ~…… ふんっ」
美澪がじっと集中しなおしてから再び突きを打つ。足は、先ほど同様に踵を浮かせて僅かに回転させた。すると、今度はしっかりと徑が発動した。しかも発動したその徑は、足の裏の回転に合わせて、徑自体も回転しながら発動していた。そして、先ほどまではモヤっとした徑の塊が体内を通って拳まで移動していたのだが、今回は徑が縦回転しながら細長く伸びて拳へと移動している。更に、先ほどまでは拳から1mほど飛び出したところで徑が全て消滅していたのだが、今回は3m以上前方まで飛び出した。
「よしっ! 美澪、今のは出来てたよ。しかも、さっきまでの突きよりも更に威力が上がってると思う。
琥太郎の言葉を聞いて、美澪がニヤリと笑みを浮かべた。
「せっかくだから、今の突きも受けてみようかな。」
「いいよ。 ふぅ~…… ふんっ」
ドスンッ
「うおっ!」
回転させた徑を発動させた美澪の突きは、先ほどまでよりも更に深く琥太郎の体へと浸透してきた。琥太郎も気を抜いていたらダメージを受けてしまいそうな威力だ。
「美澪、今の凄いよ。さっきまでの突きよりも更に威力が上がってた。これなら妖気無しでもそれなりの武器になるはずだよ。」
「へへへっ…」
琥太郎の反応を見て美澪がニコニコしている。
「それじゃあ、もう一度丹田で妖気を練りながら、今の踵を浮かせて足を回転させる突きと一緒に撃ち出してみようか。危ないからあっちの人がいない方に撃ってね。」
「うん。今度は成功させる。 ふぅ~…… ふんっ」
ブオォッ
「うわっ! えぇっ?!」