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104_混ぜる

「ふぅぅ…、琥太郎、ありがとう。」


 おそらく30発位続けて琥太郎に突きを打ったあたりで、美澪が突きを止めた。


「完全にコツを覚えたみたいだね。俺に向けて突きを繰り返してる間にも、どんどん突きの威力とかキレが増していってるのを感じたよ。」

「へへッ、今度君津に帰るのが楽しみ。十兵衛爺ちゃんにも、この突きを見せたい。琥太郎に教わったって自慢する。」


 十兵衛爺ちゃんなら、今の美澪の突きが以前と変わっている事にはすぐ気づくだろう。しかし、琥太郎に教わったって自慢すると言っているが、琥太郎自身はまだこの突きを打つ事が出来ない。それにも関わらず、教わったと自慢されるのはなんとも気まずい。なんとしても君津に帰る前に、琥太郎も同じ突きを打てるようになりたいと思う。


「ねえ美澪、ちょっとさ、昨日練習した、丹田で妖気を練ってから撃ち出すやつ。あれをちょっとまた俺に向けて撃ってもらってもいい?」

「えっ、うん、いいよ。 ふんんんっ、ん!」


ドンッ!


 美澪の強烈に圧縮されたバスケットボール程の大きさの妖気弾が琥太郎の体に炸裂した。

 もちろん琥太郎は無傷で、何事も無いかのように下を向いて地面を見ている。そして、頷くようにゆっくりと頭を縦に動かしながら何かを考えている。


「昨日の夜もいろいろと考えてたんだけどさ、今の丹田で練った妖気弾と、さっきの突きを一緒に撃てないかな。突きの時の「気」みたいなエネルギー、たぶん徑だろうと思うから徑って事にしとくね。この徑に、丹田で練った妖気を纏わすのか、丹田で練った妖気に徑を纏わすのかはわからないけど、とにかく一緒に混ぜて撃ち出す感じかな。今、あらためて美澪の丹田で練った妖気弾を受けてみたけどさ、やっぱり徑を発する突きとは威力の質が違うんだ。妖気弾の方は威力は確かに凄いんだけど、なんていうか俺が纏ってる「気」の表面でバンッって炸裂する感じで、衝撃も「気」の表面でほとんど完結するんだよね。それに対して突きの方は、ピンポイントで中に入ってくる感じかな。トータルの威力は、もちろん妖気弾の方が数段上だと思う。だけど突きの方は、ピンポイントで「気」の防御に突き刺さって、防御を抜けて浸透してくるみたいな感じなんだよね。だから、この2つを一緒に出来れば、妖気弾の強烈な威力を相手の中に浸透させる事が出来ないかなって思ったんだ。」

「琥太郎が言うなら出来るはず。やってみる。」

「いや、今回は本当に机上の空論ってやつで、上手くいくかなんてわからないよ。ただ、試してみる価値はあると思う。」


 美澪が再び突きの練習を始めた。今度は、丹田で霊気を練った状態で、先ほどの突きを打っている。突きを打つ瞬間に丹田で練った妖気も一緒に撃ち出しているようだ。


「うわぁ、美澪、危ないから妖気弾を打ち出す方向には気を付けてね。」


 琥太郎も美澪の状況が気になるので、今回は琥太郎自身は突きの練習はせずに、集中して美澪を見ている。

 琥太郎が見ていると、妖気弾は綺麗に突きの動作に合わせて美澪の拳から撃ち出されているようだ。しかし、突きで発している徑とうまく混ざっているようには見えない。

 美澪が徑を発動させた突きを打つ際、発生した徑はほとんど前に飛んでいく事なく、拳から放たれるとすぐに消滅する。多少は突きの勢いで拳から先に延びているが、それはせいぜい1mほどだろうか。それに対して丹田で練られた妖気弾は100m以上の距離を霧散せずに飛んでいく。

 今突きと一緒に妖気弾を打ち出している美澪をよく見ると、拳から離れて僅かに前に延びる徑のまわりにうっすらと妖気が纏われているようにも見える。しかし、丹田で練られた妖気のほとんど全てが、単独で撃ち出されるときと変わらずに妖気だけで前方に撃ち出されていく。


「う~ん、難しいね…。美澪が今やってるのだと、徑と妖気が一緒に拳から放出されてはいるんだけど、ほとんど混ざってはいないんだよね。ほぼ全て、それぞれ単独で撃たれてるって感じかな。徑と妖気が一緒にならないと意味がないと思うから、これをなんとかしたいんだけどなぁ。試しに、一応今のを俺に打ってみてもらってもいい?」


「うん、わかった。いくよ。 ふんんんっ、ん!」

ドスンッ!


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