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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第八章:魔族の国・ネーシス王国編

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第九十八話「盛り上がる歓迎会」

 歓迎会が始まり、一時間ほどでみんな出来上がっていた。


「うぉおおおおぉお! 俺に勝てるやつはいえねぇのか!」


 丸太の上で腕相撲をして盛り上がる男たち。

 現在連勝を続けているのはビーガルだ。

 そんな絶好調の彼に、村に来たときに案内してくれたダラスクが挑みに行く。


「ふっ、次はダラスクか……!」

「今度こそ、完璧な圧勝で思い知らせてやる」


 挑むような視線をビーガルに向け、ダラスクは煽る。


「そうはいかねぇぜ! 幼馴染として一緒に育って早三十九年、俺の方が成長しているってことを分からせてやるよ!」


 その煽りにもビーガルは不敵な笑みで返し、いざ勝負が始まった。


「いけッ、ビーガルッ!」

「ビーガル、お前に賭けたんだからぜってぇに勝てよ!」

「負けるんじゃねぇ、ダラスク!」

「お前が負けたら俺は大損になっちまうからな! 絶対に負けるなよ、ダラスク!」


 どうやら賭けが行われていたらしい。

 野次馬たちがやいのやいのと騒ぎ立てて、盛り上がり具合がさらに高まっていく。

 みんな死ぬほどお酒を飲んでいるのもあり、熱気が凄かった。


「グヌヌヌヌヌヌッ!」

「うぉおおおおぉお!」


 互いの腕は一切動かない。

 まるで一緒くたに石にでもなったかのように、その勝負は拮抗していた。


 そのとき、ビーガルの背後から声が聞こえる。


「ビーガル、負けたら一週間夕飯抜きですからね」


 その声はビーガルの妻だった。

 大声ではなかったものの、その声はやけに響く。


 それを聞いた瞬間、ビーガルが一気に押し始めた。


「グッ……! グアァアァアアアアア!」


 そして、最終的にダラスクの手の甲が丸太につき、勝敗が喫した。


「はあ……はあ……。俺の負けか……」

「そうだな! お前の敗因は、結婚をしなかったことだな!」


 落ち込んだ様子のダラスクと、勝ち誇っているビーガル。

 ビーガルの勝因が結婚して尻に敷かれていたことだなんて、世の中なかなか不条理なものだと思った。


「だが! 俺には分かったぜ! ダラスク、お前、俺の夕飯を心配して、一瞬気を抜いただろ!」

「……ちっ、バレてたか」

「ふっ……。だがまあ、それはお前の気の緩みだ。勝利は譲らないぜ?」


 悔しそうにするダラスクに、ビーガルは容赦なくそう言った。

 しかもなぜかハードボイルドでニヒルな笑みを浮かべている。


「……ビーガル。それは漢としてどうなのでしょう? 正々堂々の勝負を放り出すなんて」


 だが、ビーガルの背後から冷たい声がかかる。

 また彼の妻だ。

 その言葉にビーガルの表情は一瞬にして凍り付いた。


「え、ええと……それでも勝ちは勝ちだし……」


 だんだん声が小さくなっていくビーガル。

 最終的には蚊の鳴くような声よりも、さらに小さくなっていた。


「はあ……。これで勝った気でいるのはダラスクに申し訳が立たないでしょう。やはり夕飯抜きです」

「なっ……!? そもそもと言えば、夕飯抜きだなんて声をかけられたのが原因——「何か?」


 空気が凍った。


「いえ、何でもありません」


 ビーガルは落ち込んだように肩を落とした。

 なんか、結構不憫なことになってないか……?

 そう思ったが、ここでビーガルに加勢する勇気なんてなく。


 しばらくの間、ビーガルの周囲だけドヨンとした空気が流れているのだった。

 これって……試合にはビーガルが勝ったけど勝負にはダラスクが勝った、ってやつなのだろうか……?

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