第九十話「果ての迷宮に到着」
「うう……寒かったぁ!」
なんとか雪原の途中にある休憩小屋に入る。
中に入ると、早速暖炉に薪をくべて火を起こした。
徐々に小屋の中が暖かくなっていく。
「ギリギリだったね。もう外は暗くなってきてるよ」
ルインが窓から外を眺めて言う。
もうほとんど日は落ちていて、かすかに山の縁が赤く染まっているくらいだ。
「ふう……疲れた」
「……ニーナ、上着を脱ぎ出すには、まだ暖まりきってないと思うんですけど」
「大丈夫。十分暖かい」
凍えるような寒さはなくなったが、まだかなり寒い。
だというのに、ニーナは上着を脱ぎだしてしまった。
それを見たアカネが呆れたように突っ込む。
流石というべきか、やり過ぎというべきか。
まあ寒さでニーナが風邪を引いたことはなかったからな。
問題はないだろう。
そして俺たちは、薪が切れないように、二人ずつ交代しながら火の番をすることになった。
最初は俺とアカネだ。
「それじゃあ、おやすみなさい!」
「おやすみ」
「寝ちゃって火が消えました、ってことにならないように気をつけてくださいね」
ナナ、ニーナ、ルインはそれぞれそう言って、眠りにつく。
俺はアカネと並んで小屋の壁に背を預けながら、ボンヤリと座っていた。
「……アリゼさん。わざわざこんなところまで来てくれて、わがままにも付き合ってくれて、本当にありがとうございます。すごく、嬉しかったです」
しばらくして、アカネがぽつりと呟くように言った。
なんだか俺は照れてしまって、頬をかくと答えた。
「いや、当然だろ。アカネたちは俺にとって、大切な家族みたいなものなんだから」
「ふふっ、そうですね。アリゼさんはいつだって、私たちのことを第一に考えてくれてましたもんね」
そういうことを面と向かってハッキリ言われるのは、かなり恥ずかしかった。
その反面、ちゃんと自分のことも見てくれていたのだと知り、嬉しくもあった。
「アカネ。この大陸でみんなを見つけてアガトスに戻れたら、アカネはどうしたい?」
「……どうしたいか、ですか」
俺の問いに、アカネは考えるように俯いた。
パチパチと飛び散る火花を眺める。
しばらくして、アカネはゆっくりと口を開いた。
「郊外に家を建てて、みんなでゆっくり暮らすのもいいですね。もしくは、まだ見たことない土地や街を見に、旅を続けるのもいいですね」
「そうだな。あっちに戻れるのは、まだ先になるかもしれないけど、俺は家を建ててみんなで暮らすのがいいと思うんだ」
俺が言うとアカネは小さく笑った。
「そうですね! 私も家事とか料理とかできるようになってきているので、楽しみにしててくださいね!」
そして俺たちはしばらく他愛もない会話をして、交代の時間まで火の番をするのだった。
***
「ううっ……やっぱり外は寒いよぉ……」
夜が明けて、朝。
俺たちは日が昇り、そこそこ暖かくなったのを見計らって小屋から出発した。
それでもまだ寒く、ナナは震えて身を抱くようにしながら呟いた。
「今日の午後には【果ての迷宮】に着くだろうから、それまでの辛抱だ」
「うむむ……。愚痴ってても仕方がないから、頑張る!」
そしてズンズンと先を進んでいくナナ。
そんな会話がありながらも、なんとか予定通り午後には【果ての迷宮】前にたどり着いた。
「ふう。ようやく着いたね。なかなか大変だったよ」
ルインが一息つき、そう呟いた。
【果ての迷宮】には、この地下に続いている階段を下っていくらしい。
ニーナの魔法で光源を確保し、ゆっくりと階段を降りていく。
しばらくして視界が開け、石畳の大きめの通路が現れた。
壁には松明が掛けられ、チラチラと通路を照らしている。
「ここの奥に聖鉱石ジニアがあるのか……。もう少し炭鉱っぽいところかと思ってたけど」
「そうですね。思ったよりちゃんと迷宮って感じがしますね」
俺の言葉に同意するようにアカネが頷く。
そして俺たちは、聖鉱石ジニアを探しに、迷宮の奥へと進み始めるのだった。




