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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第七章:ドワーフの国・ガンジア王国編

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第七十八話「炭鉱街バックポット」

 北に向かって歩くこと一週間ほど、ようやく目的の街に辿り着いた。

 ガンジア王国随一の炭鉱街バックポットという街らしい。


 その街は大きな鉱山の谷間にあり、鉱石を運ぶためのトロッコ用のレールが街中に張り巡らされていた。

 街の至る所に坑口があり、そこから無数に古い坑道が伸びていると街のドワーフが教えてくれた。


「ここはもう古い炭鉱街だからな。坑道は掘られ尽くされ鉱石は殆ど残っていない。こんな街に居座っているのは老人か身寄りのない子供くらいなものさ」


 歩きながらそのドワーフは説明する。

 周りを見渡してみると確かに老人が殆どで、たまに幼い子供が道端で固いパンを食べてるくらいだ。


「まあこの子供たちももう少し歳をとったら街を出ていくだろう。この街はすでに死んでいるのだから」

「お爺さんたちも出て行こうとは思わないの?」


 ルインはそう尋ねる。

 その問いにドワーフの老人は淡々と、感情を込めずに言った。


「出ていけないのさ。若い連中は皆出て行ってしまったからね。儂らを栄えている街まで運んでくれるような体力ある人間はもういない。そもそも老人が多すぎて全員を移動させるなんて不可能なんだがな」


 彼は言い終わると無言で歩く。

 街全体が諦観の雰囲気を湛えていて、疲れ切った様子がヒシヒシと伝わってくる。

 しかし気を遣ってくれたのか、ドワーフの老人は再び口を開いた。


「十年前はまだ活発だった。よく王族たちも訪れるような資源に溢れる鉱山だったんだ」

「たった十年で……」

「まあ活気に溢れすぎたんだろう。人が集まりすぎて資源はすぐに枯渇した。自業自得だな」


 それに、と老人はさらに言葉を続ける。


「この街を中心に一つの伝説があってな。【聖鉱石ジニア】。そう呼ばれる鉱石がこの鉱山に埋まっているのだろうと、そんな噂話が人々を集めたっていうのもある」

「もしかして【聖剣ジジニシア】に関係することですか?」


 俺がそう尋ねると老人は目を見開きこちらを見た。


「まだその伝説を知っている人が街の人以外にいるとはな。ああ、そういえばあの爺さんの客人なんだってな。そりゃ知っていてもおかしくはないか。……古い寓話【英雄伝説】に出てくる聖剣だな。まあ結局、寓話は寓話でしかないのだが。聖剣なんてあるはずがないんだよ」


 老人は含みのある言い方をして押し黙った。

 何かしらあるのだろう。

 そしてまたしばらくして話し出した。


「聖鉱石ジニアは聖剣ジジニシアを作るための一番重要な鉱石だと言われている。しかしいくら掘っても、いくらダンジョンに潜っても出てこなかった。まあ偽物はごまんと見つかったがな」


 やはり見つからなかったのか。

 あの酔っ払いが言っていたことが正しいと直感的に俺も思っていた。


「と、着いたぞ。ここがお前たちが探しているアカネが暮らしている家だ。まあ……アカネはあの爺さんに好かれているみたいだが、お前たちはどうか知らん。せいぜい気をつけな」


 そう言って案内してくれた爺さんは去って行った。

 あんなことを言われたせいで少し緊張するが、俺は家の扉を叩いた。


「はい! 今行きます!」


 中から聞こえたのは女性の声だ。

 しかも聞き馴染みのある声だった。


「……って、アリゼさん!? ニーナたちも!」


 玄関から出てきたアカネは驚いたように目を見開いて声を上げた。


「やあ、久しぶり」

「アリゼさん、どうしてこんなところに……?」

「いや、探しにきたんだよ、海を渡ってね」


 そう言うとアカネは思い切り抱きついてくる。

 なまじ筋力があるから俺の骨がミシミシと音を立て始めた。


「痛い痛い!」

「ああ、すまん! つい感激してしまってな」


 そしてアカネは一歩引き家の中に入るよう案内する。


「……いいのか、入っても?」

「はい、もちろんですよ」

「一応、家主に許可を取った方がいいんじゃないか……?」


 俺が言いかけると二階に続く階段からドワーフの老人が降りてきた。

 いまだに筋肉があり、背筋もピンと伸びている。


「別に構わん。アカネの師匠と仲間なのだろう? なら遠慮するな」


 それだけ言ってその老人は再び二階に戻っていく。


「ね、言ったでしょう? それじゃあ上がってください」


 アカネはさも当然のようにそう言って俺たちをリビングまで案内してくれた。

 テーブルに座り、アカネはキッチンに立ってお茶を淹れ始める。


「……アカネが家事してる」


 その様子を驚いたようにニーナは見た。

 そんなニーナの様子に恥ずかしそうに頭をかきながらアカネは言った。


「ふふっ、最近家事が出来るようになってきたんですよ」

「旅をしていたときはあんなにやりたがらなかったのに……」


 やはりアカネは俺と別れた後も家事をしたがらなかったらしい。

 でもなんで今になって家事をし始めたんだろう?

 そう不思議に思っていると、アカネは優しげな視線でお茶を淹れながら言った。


「恩があるんです。だから家事くらいはしてあげようと思って」

「恩?」


 ニーナが尋ねるもアカネは頷くだけで説明はしなかった。

 それからお茶を淹れ終えると、俺たちの前に置いてこう言うのだった。


「アリゼさん。迎えにきてくれたのは嬉しかったしありがたいんだけど……私はまだここを離れるつもりはありません」

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