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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第六章:エルフの国・ミミア王国編

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第七十四話「デリアの誕生日会準備」

「おっ、あったな冷夏花」


 しばらく迷宮を歩いていたらあっさりその群生地を見つけた。

 ダラスク国王は無数に咲いている冷夏花から数本摘むと、水の入った皮袋に挿して鞄にしまった。


「よし、帰ろう」


 もう少し苦労するものかと思っていたが、案外そんなことはなかったみたいだ。

 まあ予定も二日しか取ってなかったし、そんなものか。

 ダイダス騎士団長が液体の入ったビンを取り出し魔力を込めた。

 すると道標を示すように点々と液体が魔力に反応していく。


 俺たちはその魔力を辿るように迷宮を抜けると早馬で王都に戻るのだった。



   ***



 ダラスク国王は王都に帰る途中、早馬を休ませながらこんなことを言っていた。


「デリアの誕生日は三日後だ。彼女の誕生日パーティーは大々的に行われるが、その後、俺と妻とデリア、それに君たちを加えた小規模の誕生日会を開こうと思っている」


 その言葉に俺は首を傾げて尋ねた。


「俺たちも加わっていいのですか?」

「ああ、逆に加わってくれたほうが助かる。おそらく俺と妻だけではデリアとまともに会話できないからな」


 不器用なのか、はたまた立場のせいなのか。

 ともかく俺たちは三人の会話を潤滑に回す役割を担うらしい。


 とまあ、そんなわけで、国王たちは大々的に行われる予定のパーティーの準備を進め、俺たちは密かに開かれる小規模の誕生日会の準備を別々に進め始めた。


「アリゼさん、これなんてどう?」


 ルインがレシピ本の一ページを指差してそう言ってくる。

 俺はそのページを読みながら頷いた。


「ああ、これなら簡単そうだし問題ないだろうな」


 現在、俺とルインは一緒に誕生日会で出す料理を決めていて、ニーナとナナは俺たちからのプレゼントを探しに行ってもらっている。


 ちなみにルインが指さした料理は普通のフレンチトーストだ。

 あまり難しいものでもなく、誰でもできるだろう。

 それこそ、料理をしたことのないような国王の正妻でも。


 ダラスク国王は父として冷夏花を採ってきたのに対して、正妻の方は母としての役割を果たせていない。

 まあ無理に果たす必要もないと思うのだが、少なくとも彼女自身がどうしたいかは聞いておきたかった。


 彼女がデリアに対して何か思うところがあるのであれば、俺たちはそれに協力したい。


「よし、それじゃあ材料を買ってくるか」


 俺たちはそう決めると立ち上がり、それぞれ準備に翻弄し始めるのだった。



   ***



 そうしてやってきた誕生日当日。

 俺たちは大々的に行われているパーティーの方には参加していなかった。


 第三王女のパーティーだからな。

 一緒に旅をしていたとは言え、俺たちは全く外の人間だ。

 参加しない方が波風を立たせずに済むし、得策だろう。


 その代わり、その後に行われる誕生日会の準備をこなしていた。

 王城の片隅にある小さな空き部屋でそれは行われる予定だった。

 現在、俺たちはその部屋の飾り付けに頭を悩ませていた。


「ナナ。それはもう少し右の方がいいんじゃないかな?」

「えー! ルインはやっぱり芸術的センスがないと思う!」

「ム……。それは聞き捨てならない言葉だよ」

「ナナちゃん。私も右の方がいい」

「えっ!? ニーナ様まで!? くっ……ニーナ様に言われたら仕方がない……」


 そんな風にやいのやいのと飾り付けを行なっていく。

 そして小一時間ほど経った頃——。


「うん、いい感じじゃないか?」


 俺はその部屋の様子を眺めながら腕を組んで頷いていた。

 完璧だと思う。

 飾りは全部手作りだから不恰好なものも沢山あるし、今行われているパーティーに対して豪華さが欠けているとは思うけど。

 でも温かさというか、ちゃんと気持ちが込められている感じがしていい。

 自分で言うのもなんだが。


「完璧」

「ニーナ様のおかげでいい感じにできたね! ありがとう!」

「ナナ、私も結構貢献してると思うんだけど……」


 三者三様、その部屋の様子を眺めながら満足げに頷いていた。

 ……いや、一人だけ不服そうにナナのほうを見つめていたが。


「後は主役たちの登場を待つだけだな」


 そう言ってからすぐ、事情を知っている数少ない一人、メイド長の女性が部屋に来て言うのだった。


「そろそろパーティーが終わります。準備は大丈夫ですか?」

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