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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第六章:エルフの国・ミミア王国編

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第六十六話「ニーナとの思い出」

 俺は夜営をしながらデリアにニーナとの思い出を話し始める。

 話し出すと記憶が溢れ出てきて、気が付いたら俺はあの夏の雨の日の中に立っているのだった。



   ***



 それは夏の日のことだった。

 少女五人を連れてとある街を訪れていた。


「あっついですね……」


 パタパタと手で風を送りながら気怠そうにミアが言った。

 その言葉に同意するようにルルネも頷くと額の汗を拭う。


「そうね。せめてもの救いは海が近いってことくらいね」

「確かに海が近いおかげで若干涼しいのか」


 しかし、若干でしかない。

 カンカン照りの真夏の暑さは容赦なく俺たちに襲ってくる。


 そんな中でもアカネとニーナだけは暑さを感じてないみたいだった。


「そんなに暑いか? 私としてはもっと暑くても構わないんだが」

「それは貴方が脳筋だからよ。普通の人からすればメチャクチャ暑いの」


 不思議そうに首を傾げるアカネにルルネが毒を吐く。

 いつもより鋭い毒舌にアカネはムッとする。


「悪かったな、脳筋で。でもルルネは薄すぎてすぐに溶けちゃうんじゃないか?」

「なっ!? 何が薄いのか言ってみなさいよ!」


 すぐに喧嘩しだす二人に俺はいつものように仲介に入る。


「まあまあ二人とも、喧嘩は良くないぞ」

「「……はぁい」」


 おそらく二人は俺がすぐに仲介してくれるという安心感があるから、簡単に喧嘩するのだろう。

 構って欲しいからちょっかいかける男子と同じ感覚なのかもしれない。


 そんな会話をしながら俺たちは宿を探していたのだが。

 唐突にニーナが俺の二の腕をチョンチョンと突いてきた。


「どうした、ニーナ?」

「あれ」


 言葉少なに指さした先には本屋があった。

 ニーナは本が好きだからな、気になってしまったのだろう。


 一瞬、俺はどうするか考えたが、すぐに他の四人に声をかける。


「ちょっと俺はニーナと本屋寄っていくから、みんなは宿探しをしておいてくれないか?」


 そう言うと、四人は少し不服そうにしたがちゃんと頷いてくれた。

 出会って間もない頃だったら、もっとみんなも好き放題言っていたんだろうけど。

 最近はちゃんと分別が付くようになっていた。


「分かりました。それでは私が責任を持って宿探ししてきます」


 代表してアーシャが言う。

 特にこの頃のアーシャは責任感が先走っていて、自分がしっかりしないとと考えていた。

 それが重荷になって、色々と空回りしていた時期だな。


 まあともかく、アーシャが他三人を連れて宿探しに向かった。

 俺はニーナを連れて本屋に入るのだった。


「ねえ、これ」


 本屋に入り、しばらく見て回っていると、一つの本をこちらに差し出しながらニーナが言った。


「これが欲しいのか?」

「うん」


 小さく答えて頷くニーナ。

 本のタイトルを見てみると、どうやら魔法に関する学術書みたいだ。


「やっぱりニーナは魔法が好きなんだな」


 一人だけ優遇しすぎるのも良くないと思うが、勉強のための本を買わないってのも良くない。

 俺は他のみんなにも何か買ってあげる決意をして、その本を買うことにした。


 その本を買ってあげるとニーナはニコニコで本を抱えた。

 まあニコニコといっても満面の笑みって感じではなく、微妙な変化だったが。


「ありがとう、アリゼさん」

「いや、これくらいはどうってことないよ」


 俺は首を振ってそう言った。


 そもそもニーナが我儘を口にすることって意外と珍しい。

 気まぐれで甘えてくることはあるけど、それも基本何も言わずに甘えてくる。


 わざわざ我儘を口にしたってことは、何かあるのだろうけど……。


 しかしその意図まではよく分からない。

 それについて考えながら歩いていると、ポツリポツリと雨が降ってきた。


「おおっ、突然降ってくるな」


 俺たちは慌てて近くのカフェに入る。

 カフェが近くにあって助かった。


「って、結構降ってきたな。危なかった」

「ギリギリ」


 窓から外を眺めていると、ザアザアと強めの雨になっていった。

 ニーナもホッとため息をついて抱えている本を見下ろす。


「濡れなくて良かった」


 俺もつられてその本をもう一度見ると、意外にもその本のタイトルは『基礎魔法学』というニーナに必要とは思えない感じだった。


 ニーナは魔法については相当詳しい。

 今更基礎を学ぶ必要もないと思うんだが。


「お待たせしました。エスプレッソとカフェラテです」


 余計に疑問が増して考えていると、注文していた飲み物がやってきた。

 まあ一人であーだこーだ考えていても仕方がないだろう。


 そう思い直した俺は、ニーナに直接尋ねてみることにするのだった。

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