表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第六章:エルフの国・ミミア王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/183

第六十二話「ニーナの行方が分かりました」

 俺たちはバーン・ウルフの毛皮を剥ぎ取ると、残った肉は燃やして埋葬した。

 どうやらこいつの肉は固くて食べられたものではないらしい。


「てか、この毛皮は何に使われるんだ?」


 俺は街まで歩きながらデリアにそう尋ねた。

 彼女は迷いなく森の中を先導しながら言う。


「バーン・ウルフの毛皮は硬く火に強いんだ。だから鍛冶師の作業着や手袋なんかが多いな」

「なるほど……それだったら、これだけで本当に借金を返せるのか?」

「ああ。こいつは消耗品だがバーン・ウルフはすばしっこくてなかなか倒せない。需要に供給が追い付いてないのさ」


 そう言った後、デリアは呆れたようにこう付け加えた。


「まあ――君は本当に呆気なく倒してしまったがな」


 確かに……。

 そんな会話をしていると、すぐに街にたどり着いた。

 物凄い方向感覚だ。


「それで、君たちはこれからどうするんだ? 私はこれを鍛冶師ギルドで換金してドーイのところに戻るが」

「俺たちは、そうだな……ちょっと仲間たちの行方を聞き込みしてみるよ」


 俺が言うと、デリアは少し考えた後、こう言った。


「そうか……それなら私の御用達の情報屋を教えてあげよう」


 情報屋か。

 デリアは一体何者なんだろうな。

 普通の人間……いや、エルフじゃない気がする。


「あそこに大きな時計台があるだろ? あそこから北に十軒先に行ったオレンジ色のパン屋が情報屋だ」

「いいのか? そんなことを教えても?」

「ああ、問題ないさ。私が用になることはもうないんでね」


 よく分からないが、助かるのは事実だ。


「ああ、それと外套のフードは被っていたほうがいい」

「どうしてだ?」

「いや、エルフじゃないことがバレたら面倒だからな」


 確かにそうかもな。

 俺たちは頷くと素直にフードを被った。


 そしてデリアにお礼を言うと、その場で別れた。

 ルインとナナと時計台まで歩きながら話す。


「しかしバーン・ウルフを狩って最終的には良かったかもな」

「そうだね。情報屋なんて教えてくれるとは思わなかったよ」


 俺の言葉に同意するようにルインが言った。

 ナナはキョロキョロと街並みを眺めながらついてきていた。


 そして歩くこと十分。

 時計台の先のパン屋までたどり着いていた。


 俺たちが中に入ると、恰幅のいいおばさんが出てきて言った。


「ごめんなさいね。もう売り切れて店じまいするところなの」

「いや、そうじゃない。俺たちはデリアに紹介されてきたんだ」


 俺の言葉に一瞬で目の色を変えるおばさん。

 それから店の扉がしっかりと閉まってることを確認して、鍵を閉めると尋ねてきた。


「デリア様のお知り合いですか?」


 ……デリア様?

 俺は首を傾げる。

 彼女は地位の高い人なのだろうか?

 でもだとしたらなぜあんなところでドーイと研究しているのだろう?


 分からないことだらけだ。

 でもとりあえず俺は頷いて言った。


「ああ、彼女から紹介されたんだ」

「そうですか……分かりました。彼女からの紹介なら無償でお受けいたしましょう」


 無償……ますますデリアの謎が深まるばかりだ。


「それで、ご依頼は何ですか?」


 そう言われたので、俺はフードを取ってこう言った。


「この国で俺たちと同じような、人間を見なかったか?」


 俺たちの姿を見てハッとおばさんは息を呑んだ。

 しかし流石は情報屋のプロで、すぐに平静を取り戻すと言った。


「聞いたことがあります。どうやら王城に一人、魔女っぽい恰好をした人間が幽閉されていると」

「……ふむ、そうか」


 魔女っぽい恰好か。

 となると――。

 ルインとナナも同じことを思ったのか、こう耳元で言ってきた。


「それってニーナ様ですよね?」

「私もそう思う」


 俺は頷くと再びおばさんに尋ねる。


「それを解放してもらうにはどうすればいいかとか分かるか?」


 俺の言葉に何故かおばさんは不思議そうな表情をして首を傾げた。


「それならデリア様に頼めばいいのではないでしょうか?」

「……デリア様って」


 混乱している俺たちにおばさんはこんなことを告げるのだった。


「だって彼女、この国の第三王女でしょう? まあ……逃げ出した身だから協力しずらいのも分かりますけどね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ