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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第六章:エルフの国・ミミア王国編

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第五十九話「いざ、超大陸アベルへ」

「オロロロロロロ!」


 俺は船酔いにやられてグロッキーになっていた。

 そんな俺の背中を、ルインが優しくさすってくれている。


「大丈夫?」

「だ、大丈夫だ……オロロロロロ」


 やっぱり大丈夫じゃないかも。


 現在、俺たちは超大陸アベルに向かう船の上にいた。

 この船はアルカイア帝国とニーサリス共和国が共同で俺たちのために作ってくれたものだ。


 ナナとルインも一緒に乗っているのだが、二人とも船酔いは大丈夫そうだった。

 俺ってこんなに三半規管が弱かったのか……。


 ふとカミアの背中の上を思い出す。

 もしかしてあれで酔っていたのも、俺の三半規管が弱かったせい……?

 って、いや、みんな目をグルグルに回してたし、それはないだろう。


「しかしようやく超大陸アベルに行けるな」

「みんなが転移されてから一年だけど、特訓とかしてて結構早かったよね」


 確かに準備とか特訓とかしてたらいつの間にか一年が経っていた。

 みんな無事だといいけど……。


 まああの五人のことだ、好き勝手生きてることだろう。


「アリゼさぁん! ご飯ができたよ!」


 そんな会話をしていると、ナナがそう言いながら近づいてくるのだった。



   ***



 それから一週間ほど。

 俺たちの目の前に超大陸アベルが迫ってきていた。


「うぉお……でけぇ……」


 端から端まで見渡しても先が見えない。

 目の前の陸は断崖になっており、そこに小さな入江があるみたいだった。


「アリゼ様。とりあえずあそこの入江に入ろうと思います」


 俺が甲板から超大陸アベルを眺めていると、近づいてきた航海士がそう言った。

 数人の航海士や料理人など、たくさんのスタッフがこの船には乗っていた。

 まあ彼らは超大陸アベルに上陸せず、俺らを送ったらすぐに大陸アガトスに戻ってしまうが。


「ああ、それで頼む」


 航海士の言葉に頷いて返すと、彼はまた仕事をしに船の中に降りて行った。

 それと入れ違うようにルインとナナが上がってくる。


「アリゼさん。ようやくだね」


 ルインの言葉に俺は頷く。


「そうだなぁ。……すげぇ、緊張してきた」

「大丈夫だよ! 私たちも全力でサポートするから!」


 俺がぽつりとこぼすと、ナナが励ますように言った。

 確かにこの一年で二人は見違えるほど強くなった。

 立派に成長してきているし、とても心強いのは事実だった。


 そしてドンドンと入江に近づいてきて、船が錨を降ろす。


「アリゼ様。到着しました」


 航海士にそう言われ、俺たちは超大陸アベルに足を踏み入れる。


「これが超大陸アベルの海岸かぁ……」

「そんな感慨深い? 普通の海岸だけど」


 俺がしみじみと言うと、ルインが風情のないことを言う。


「でも俺たちが一年間、恋がれていた海岸だぜ? そりゃあ感慨深いだろ」


 そんな会話をしながら、慎重に大陸の奥へと進んでいく。

 入江を抜けるとすぐ先は森になっていて、鬱蒼と木々が生えていた。


「物音一つしないな……」

「確かに! なんか逆に不安になる!」


 俺の言葉に同意するようにナナが言った。

 それからしばらく歩いていると、何か視線を感じるようになった。


「……誰かにつけられてる」


 ルインが小さな声で耳打ちしてきた。

 俺は頷いて、こう返した。


「つけられてるな。とりあえず気づかないふりだ」


 それから何事もないように歩き続けるが、その視線はずっとつきまとう。

 流石に痺れを切らした俺たちは、そいつと顔を合わせることにした。


 俺はナナとルインと目を合わせ頷き合うと、思い切り走り出す。

 すると後ろの人影も慌てたように駆け出してきて。


 ずざぁぁあああああ!


 ——コケた。

 思い切りコケた音が聞こえた。


 振り返ると、緑色の衣装を身に纏った金髪の美少女が倒れていた。


「だ、大丈夫か……?」


 俺が思わずそう声をかけると、その子はバッと起き上がって拳を握った。


「むっ……! 私たちを攫いにきた人間族め! 里にたどり着く前に私が成敗してくれる!」


 ……ん?

 この子は何を言っているんだ?


 俺は思わずルインたちの方を見るが、彼女たちも不思議そうに首を傾げていた。


「ええと……攫う?」

「このっ! もう国の仲間は渡さないぞ!」


 なんか誤解されているような……。

 てか、この大陸は魔族の土地じゃないのか?

 彼女は魔族のような肌色をしていなかった。


 俺たちが彼女の様子に呆然としていると、ふわりと風が吹いた。

 その時、その美少女の髪の毛が靡き、耳があらわになる。


 その耳は——ルルネと同様に尖っていて。

 つまり彼女はエルフだということなのだった。

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