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【web版】拾った奴隷たちが旅立って早十年、なぜか俺が伝説になっていた。  作者: AteRa
第五章:闘技大会編

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第五十六話「絶体絶命に現れた救世主」

 それから俺たちは数時間にも及ぶ戦いを繰り広げていた。

 しかしミアとルルネの魔力は既に魔王に吸収されている。


 より強力になった魔王に、俺たちは防戦一方だった。


 魔王を倒すには《天空城》が必要だ。

 しかしそれはニーサリス共和国に置いてきてしまった。


 誰かが持ってくるにしろ、大量の魔力が必要だ。

 不可能に近い。


 他に魔王を倒す手段があればいいが……そんなものは思い浮かばない。


 そんなとき、ふとレアナさんからもらった英雄譚に書いてあった《宝剣エクスカリバー》のことを思い出す。


 おそらくあれも、天空城と同じような性能を持っているはず。

 でもあれがどこにあるかも知らないし、もしかしたらもう無くなっている可能性もある。


「ガハハッ! これで三人目だ!」


 魔王はそう言いながらアーシャの頭を掴んでいた。

 彼女も魔力を吸い取られていき、瞳のハイライトが消えていく。


「アリゼさん……これは、マズいかも」


 ニーナが近くでボソッとそう言った。

 間違いない。

 今の俺たちの力じゃ、魔王には勝てる気がしない。


 それからさらに数時間ほど戦闘し——残ったのは俺だけとなるのだった。



   ***



——ルイン視点——


 そのとき、ルインは鏡華大心国の王都の近くまで来ていた。

 要塞都市アルカナのレーア様、アルカイア帝国の帝都のハルカ様、ニーサリス共和国のクリス様と辿っていき、ようやくアリゼが鏡華大心国にいると聞きつけたのだ。


 ルインは歩きながら自分の腰にぶら下げた剣を握る。

 この剣は村から出てくるときに村長からもらったのだ。


 村に代々伝わるとても大切な剣だと言っていたから、無くさないようにしないといけない。


 そんなことを思っていると、王都付近の森の方で強大な魔力が生じるのを感じた。


「……何が起こっているの?」


 思わずそう呟くが、何か嫌な予感がする。

 ルインはその予感のまま、そちらの方に走って行った。



   ***



——アリゼ視点——


「ふふふ……はははっ! これで俺は最強だ! あとはお前を吸収すれば、俺も完全体になれる!」


 英雄たちは魔力を奪われ、もう動けない状況だ。

 残された俺までもが倒されれば、もう彼を止められる人間はいなくなる。


 手汗で剣が滑りそうになり、ぎゅっと握り直す。

 負けるわけにはいかない。


 おそらく、彼を倒せばルルネたちもまた元に戻れるはずだ。

 それに世界は平和になるだろうし、ここが正念場だった。


 魔王は恐怖を煽るようにゆっくりと近づいてくる。

 俺はジリっと後ろに下がりそうになるが、意思の力でなんとか堪えた。


「さあ——お前も俺の糧になれ!」


 瞬間、魔王が飛び出してきた。

 俺はそれをなんとか避けようとするが、ギリギリのところで掠ってしまう。

 それだけでものすごい衝撃を喰らい、吹き飛ばされる。


「がぁっ!」


 そのまま地面を何度かバウンドして、木の幹に叩きつけられた。

 たったの一撃で俺は戦闘不能になってしまう。

 今まではニーナのバフ魔法を貰っていたからなんとか堪えていたが、もう無理そうだ。


 諦めて目を閉じる。

 ごめん、みんな。

 俺はみんなを救うことはできなかった……。


 しかしふと、脳内に思い出が蘇ってくる。

 十五年前、みんなを拾った時の記憶だ。


『やあやあ、僕は悪い大人じゃないよ』


 そう声をかけた時の少女たちの怯えた表情。

 それから同じ時間を一緒に過ごし、楽しかった思い出を振り返っていく。


「……そうだな。諦めるわけにはいかないよな。ここで諦めてたまるものか」


 俺は目を開いた。

 すでに魔王は近くまで寄ってきている。


 俺は最後の力を振り絞って立ち上がった。

 そのことに魔王は目を見開いて感心の声を上げた。


「ほう……まだ戦う意志を見せるか」

「俺は負けない。負けるわけにはいかない」


 そして落ちていた折れている剣を拾うと、俺は構えた。


「ハッ! そんな折れた剣で何ができる!」


 鼻で笑われようとも、どんなに馬鹿にされようとも、俺は戦う。

 みんなのために。


 俺が剣を構えていると、苛立ったように魔王は言った。


「……そうか。貴様はそれでも逆らう気だな? じゃあ吸収は待ってやる。心が折れるまでな」


 そして魔王はジリジリと近づいてくると——。



   ***



 俺はこの数時間の記憶が朦朧としていた。

 ただ殴り蹴られ続けていたのだけは覚えている。


 それでも、俺はまだ立ち上がった。

 それに苛立ったように魔王は舌打ちする。


「ちぃっ! まだ心が折れないか。……もう吸収してしまうか、面倒くさい」


 マズい、とボンヤリする頭で思った。

 吸収されたら本当に終わりだ。

 それだけは避けなければならないが……。


 もう体は動かない。

 ピクリともしない。


 今度こそ俺は目を瞑った。

 諦めてしまったそのとき——。


「アリゼさぁああああああああああん!」


 そんな聞き馴染みのある叫び声が聞こえてきて、ザシュッという小気味良い音が聞こえてきた。


「ぎゃぁあああああああああああああ!」


 今度は魔王の叫び声が聞こえてくる。

 何が起こったのかと思って目を開くと、そこではルインが魔王の左腕を切り刻んでいたのだった。

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